リリー・フランキーが主演映画で問いかける“障がい者の恋と性”「障がい者の恋や性欲を否定しないでほしい」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
closeup_171005_top.jpg
『クローズアップ現代+』(NHK)ホームページより


 幼少期に脳性麻痺を患い車椅子生活を送る主人公クマをリリー・フランキーが演じた映画『パーフェクト・レボリューション』が話題だ。この作品は、リリー演じるクマが、清野菜名演じるミツと恋に落ちるも、結婚、出産、病気、介護といった問題に悩み苦しみ、その課題を周囲の手助けも借りながら乗り越えていく──という物語だ。

 この映画を通じて観客が感じることは、障がいをもっている人も恋をしたいし、好きな人ができたらその人と触れ合いたいし、キスもしたいし、セックスもしたいという、至極当たり前の事実だろう。作中では主人公カップルの濡れ場が幾度も描かれ、リリー・フランキー演じるクマは「騎乗位という体位を開発した人は障がい者だったんじゃないか?」や「俺、立ちバックするのが夢だったんだよね」といったジョークを何度も飛ばす。

 よくよく考えれば障がい者だってそのような欲求をもつことは何もおかしくないが、この社会は障がい者たちが抱く「恋をしたい」という気持ちや性的な欲求から目を背けてきた。しかし、障がい者は「天使」でもなければ「聖人君子」でもない、人間なのだ。なのに、障がい者の恋愛や性欲を存在しないものとして見なすのは、健常者たちの心に「差別意識」があるからにほかならない。

 9月25日放送『クローズアップ現代+』(NHK)では、「障害者と恋とセックスと」と題して「障がい者の性」問題を特集。スタジオには、リリー・フランキーと、『パーフェクト・レボリューション』の企画・原案を担当したNPO法人ノアール理事長・熊篠慶彦氏が出演した。熊篠氏は自身も脳性麻痺を患い車椅子で生活しており、NPO法人の活動を通じて「障がい者と性」にまつわる偏見と誤解を解く活動を続けている人物。ちなみに、この『パーフェクト・レボリューション』という物語は、熊篠氏が実際に経験した恋愛をベースに編まれている。そんな熊篠氏は『クローズアップ現代+』のなかで「障がい者と性」の問題について、このように語った。

「話ができない現状なので、まだ、タブーにすらなっていないと思いますね」

 タブーにすらなっていない──それほどまでにこの問題についてはこれまで語られることがなかった。故に、熊篠氏の運営するホームページには、誰にも相談できず助けを求める障がい者の人たちからこんな書き込みが寄せられているという。

〈「男性」として見られることのないことが当然のことで「性」について向き合うことから遠ざけてきました〉
〈自分の中の女性の部分を時には感じてみたいのがホンネです。ただ世間的に障害者だからといって性のことを封印していたかも知れません〉

リリー・フランキー「恋やセックスへの気持ちを否定しないで欲しい」

 番組では、実際の体験談として、脳性麻痺で手足に障がいがあるまゆみさんという30代の女性が登場。彼女は、健常者たちから、自分は恋愛感情をもたない人間として見なされてきたことに対し疑問を投げかける。

「彼氏がどうのとかですね、恋愛の話を始めた時点で、『えっ?』みたいな空気が流れてるんです」
「身体がちゃんと動かない見かけだったり、そこから抱くイメージで(恋愛感情が)ないんじゃないのかなって(思われる)」

 まゆみさんの話からは、いかに健常者たちが無意識のうちに障がい者たちの気持ちを無きものとして扱ってきたのかということがうかがえる。

 とはいえ、ただ闇雲にその問題に踏み込めばいいかというと、それはそれで難しい。『クローズアップ現代+』では、自立支援センターの理事長が自慰行為の補助器具の導入を検討し(その場面ではオナホールのTENGAが映し出される)、それについて施設の職員に意見を求めたところ、会議の場で女性職員から「性の話をされたときに私が対処するかといったら、たぶん私はしないです」と断言される一幕が放送されていた。

 熊篠氏たちが主張しているのは、そういうことではない。福祉の現場で射精介助をしてくれと頼んでいるわけではないのだ。もちろん福祉の現場における性の介護の問題についても議論は必要だろう。しかしそれ以前に、彼らが求めているのは、障がい者だって恋をしたいし、その結果としてセックスへの欲求をもつこともあり、その人間として当たり前の気持ちを、汚いものとして扱ったり、なかったことにしたりしないでほしい、ということなのだ。

“障がい者の性”は存在しないものとして見向きもされず、いまだ「タブーにすらなっていない」状況で、障がい者の性に関する問題がほとんど話し合われることすらなかった。リリー・フランキーは『クローズアップ現代+』のなかでこのように語っている。

「日本のメンタリティのなかで、援助を受けているという立場のなかで、それ以上のことを求めず慎ましく生きなさいみたいなことがあるのかもしれないけど、たとえば、マスターベーションやセックスに対して手伝ってくれって言っているわけではなくて。その気持ちをもっていることを否定しないで欲しいっていうことなんです」

『パーフェクト・レボリューション』は社会がもつ差別と偏見に光を当てた

『パーフェクト・レボリューション』の映画パンフレットに掲載されているリリー・フランキーとの対談で熊篠氏はこのように語っている。

「夏の黄色いTシャツの番組みたいに、障害者と向き合う時はどうしてもかしこまらないといけないような風潮がありますけど、そんな必要はないんだよって」

 健常者の社会は、障がい者もほかの人たちと同じように誰かを好きになることもあるし性欲もあるという当たり前の事実から、知らず知らずのうちに目をそらしてきた。それは「差別」に他ならない。「夏の黄色いTシャツの番組」だって、障がい者が何かに打ち込む姿は映しても、その人が誰かに恋焦がれたりする姿を映したり、ましてや、障がい者が下ネタを含む下世話なジョークを飛ばしたりする姿を放送したことがあっただろうか。

『パーフェクト・レボリューション』の主人公クマは、下品な冗談は飛ばすし、「手も足も出ない」といった笑っていいのかどうか迷うブラックユーモアも言うし、恋に落ちた相手と向き合いながら笑ったり悩んだりするし、もちろんセックスだってする。こうした主人公のキャラクターは実際の熊篠氏のキャラクターそのもので、作品のなかでは「そんな障がい者いないよ」と観客に思われないように、むしろオブラートに包んですらいるらしい。

『パーフェクト・レボリューション』という映画、そして、リリー・フランキーと熊篠氏の言葉は、いまだ「タブーにすらなっていない」障がい者の性という問題に光を当てるものだ。これから、この問題について議論が始まっていくことが求められている。

最終更新:2017.10.05 09:39

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

関連記事

    新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

    リリー・フランキーが主演映画で問いかける“障がい者の恋と性”「障がい者の恋や性欲を否定しないでほしい」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。編集部の記事ならリテラへ。

    人気記事ランキング

    1 村上春樹が貫く歴史修正主義批判「書いておかないとまずい」
    2 水木しげるが描いた慰安婦「兵隊以上に地獄」
    3 葵つかさが「松潤とは終わった」と
    4 今秋発足「防災庁」の職員は「国家情報局」の半分しかいなかった!
    5 阿川佐和子結婚手記に不倫略奪婚は?
    6 香取慎吾隠し子報道はジャニーズのせい
    7 市川沙耶と熱愛・野島アナに二股の過去
    8 吉高由里子が元カレに言った一言
    9 村上春樹が『騎士団長殺し』『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義批判
    10 りえママ、娘にたけしとの不倫を強要!?
    11 田崎史郎が『モーニングショー』から消えた! 原因は玉川徹?
    12 結婚した綿矢りさの大失恋体験
    13 三笠宮家に夫妻、母娘の断絶が!
    14 五輪マラソン開催で宮根誠司、小倉智昭が札幌を理不尽ディス「なんにもない」
    15 高須院長が村上春樹に「日本人ですか」と差別丸出し攻撃を仕掛け批判殺到!
    16 維新応援団・野村弁護士が懲戒、橋下徹にも請求が
    17 高市首相の熊本地震視察は北朝鮮並みのプロパガンダ!
    18 安倍が原爆被爆者訪問をやめて散髪に
    19 小倉優香の番組中「辞めさせてください」の本当の理由は番組のセクハラ
    20 〈#ミサイルよりクーラーを〉は正しい 自民党が避難所へのエアコン設置を遅らせてきた
    マガジン9

    人気連載

    アベを倒したい!

    アベを倒したい!

    室井佑月

    ブラ弁は見た!

    ブラ弁は見た!

    ブラック企業被害対策弁護団

    ニッポン抑圧と腐敗の現場

    ニッポン抑圧と腐敗の現場

    横田 一

    メディア定点観測

    メディア定点観測

    編集部

    ネット右翼の15年

    ネット右翼の15年

    野間易通

    左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

    左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

    赤井 歪

    政治からテレビを守れ!

    政治からテレビを守れ!

    水島宏明

    「売れてる本」の取扱説明書

    「売れてる本」の取扱説明書

    武田砂鉄