アパグループ代表がユダヤ団体から抗議受け「ユダヤ陰謀論」 撤回!「南京虐殺なかった」は開き直ったのに

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アパグループHPより


 あの“トンデモ歴史修正ホテル”ことアパホテルがまた炎上している。アパグループといえば、先月、元谷外志雄代表が著した“日本軍による南京事件は中国のでっちあげだ”と主張する歴史修正本をホテルの客室に置いていたことが大批判されたばかり。それから1カ月も経たないうちに、今度はカナダで国際的な大問題に発展しているのだ。

 今回、新たに国際問題となったきっかけも、やっぱり元谷氏のトンデモ言説だった。昨年、アパホテルはカナダのホテルチェーン「コーストホテル」を買収したのだが、その客室にも機関誌「Apple Town」を設置しており、いま、雑誌に収録されていた元谷氏の言説がユダヤ系コミュニティから猛批判されているのである。

 英字新聞ジャパン・タイムズが2月14日付で「アパがまた炎上、今度は反ユダヤ主義」(Apa under fire again, this time for anti-Semitic remark)と題して報じている。記事によれば、「Apple Town」2月号に収録された、元谷代表が自民党の片山さつき参院議員との対談での発言が、グレーターバンクーバー・ユダヤ人連盟などから強く抗議を受け、アパは釈明に追われた。

 対談は「トランプ大統領誕生を機会に憲法改正へ」と意気込む内容だが、問題になっているのは「ユダヤのグローバリズムにアメリカ国民が反撃」なる小見出しのもと、元谷代表の口からこんな発言が飛びだしたことだ。

「ベトナム戦争にせよイラク戦争にせよ、アメリカの戦争の背景には常に軍需産業や国際金融資本の存在があります。国際金融資本とはつまりユダヤ資本です。アメリカの情報と金融と法律はユダヤに握られており、グローバリズムは彼らにとって大きなメリットがあります。莫大な利益をタックスヘイブンの国に移動して、税金を払わなくて済むのですから。そしてユダヤの多くが民主党支持です」

 事実誤認だらけの典型的なユダヤ陰謀論だ。たしかにユダヤ資本のなかにはロビー活動に熱心で強い影響力を行使している企業もあるが、それがすべてではないし世界の仕組みは一つの動力源に収斂するほど単純ではない。アメリカの戦争はすべてユダヤ人のせいなどというのは言いがかりもいいところだろう。

 しかも、ユダヤ人をひとくくりにして、タックスヘイブンで不当に租税回避を行っているなどというのも、「金に汚い」「ずる賢い」といった典型的なユダヤ人差別にほかならない。実際、租税回避を暴露したパナマ文書には、キャメロン英首相の父やアイスランド首相などの名前もあったし、日本人や日本の企業も名を連ねていた。

 ユダヤの多くが民主党支持というのも疑問だ。元谷氏いわくベトナム戦争もイラク戦争もユダヤ人の陰謀で始まったというが、イラク戦争を始めたブッシュもベトナム戦争に本格介入したアイゼンハワーも共和党の大統領だ。だいたい、元谷氏が「ちゃんとした考えを持った人」「勝って良かった」と持ち上げるトランプだって共和党だが、トランプ政権のキーマンといわれる娘婿クシュナー氏がユダヤ系で娘イヴァンカもユダヤ教に改宗している。トランプはクシュナー氏の影響で、在イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移そうとしているとさえいわれている。

 とにかく言ってることが支離滅裂で、そうした浅薄な偏見に基づいて「ユダヤは〜」などと、人種をひとくくりにした差別発言をしているのだ。

 なお、「Apple Town」には日本語と同時に英訳版も収録されている。問題の元谷氏の発言は“Jewish people control American information, finance, and lows, and they benefit greatly from globalization because they move their massive profits to tax heaven so they don’t have to pay any taxes.”(ユダヤ人はアメリカの情報、金融、法律を支配しており、税金を一切払わなくてもよいように膨大な利益をタックスヘイブンに移しているから、グローバリゼーションから多大な利益を得ている)と訳されており、さらにユダヤ人に対して攻撃的な印象だ。ユダヤ系団体から大きな反発をくらうのは当然だろう。

 アパグループはこうした批判を受けて、国内向けには謝罪ではないとしつつ、問題個所も速攻で削除修正。元谷氏による「私が記したことが反ユダヤ主義的思想という誤った印象を与えしまったことは残念」という釈明コメントを発表した。

 だが、これは決して本音ではないだろう。というのも、これまでも元谷氏はさんざんユダヤ陰謀論的な言説を、確信犯的に振りまいてきたからだ。たとえばこんな感じだ。

〈先の大戦の遠因は、メディアのせいで、ユダヤ人を敵に回してしまったことだ〉
〈国を失い二千年に亘って流浪の民となり、辛酸をなめ尽くしたユダヤ人だが、その間にユダヤのネットワークを作り、世界中で金融・メディア・法曹界を牛耳り、自分達を守る手段として、情報謀略戦を展開してきた〉
〈アメリカのマーケティング会社は大統領選の時には膨大な予算を使って依頼候補を応援したり、敵対候補を非難するネガティブキャンペーンを実施して効果をあげている。ユダヤの情報ネットワークを使い事実に反する記事や報道を改めさせる〉(「アップルタウン」15年11月号)

 こうした言説は、特定の人種に対するやみくもな脅威論を助長し、差別と偏見を扇動するものに他ならない。

 さらにもうひとつ、アパグループと元谷氏の対応を見て欺瞞だと感じるのは、例の「南京大虐殺はなかった」問題との対応のちがいだろう。南京問題で炎上した際は、「言論の自由」だと強弁し問題書籍の撤去や修正などの対応は一切しなかった。ところが今回は前述したように、問題個所も速攻で削除したのだ。

 中国からはどんなに批判をされても「言論の自由」と強弁し、ユダヤ(欧米)に抗議されると即座にへこへこ撤回するというダブルスタンダード。ようするに、ユダヤ資本を敵にまわすと欧米でビジネスを展開するのに不利になるから媚びて釈明しているに過ぎないのだ。

 これは誰かさんとよく似ていないか。そう、アメリカに対しては先の大戦が侵略戦争であったことや慰安婦の強制連行を認めたふりをし、国内では侵略の事実も慰安婦もごまかし否定し続けるという、安倍首相の二枚舌とまったく同じ構図だ。

 もちろんこれは、偶然などではない。本サイトが繰り返し指摘しているように、アパホテルの元谷代表はこの国の政界に食い込み、日本の最高権力者である安倍首相ときわめて親密な関係にある。元谷代表は安倍氏の秘密後援会「安晋会」の副会長を務め、安倍の首相再登板を後押ししてきた。思想的にも安倍首相やその周りにいる自民党のタカ派政治家とほとんど一体と言っていい。

 実際、今回問題になった対談でも、対談相手である片山さつきは、元谷氏を「日本の旗を背負った大使の様なホテル王」「海外でもアパホテルは日本のランドマーク」「代表は日本の保守のオピニオンリーダーのお一人であり、安倍首相のビッグサポーター」などと猛烈にヨイショ。ご丁寧に、この差別主義者が安倍首相のビッグサポーターであることを、世界に向けて堂々と発信しているのだ。しかも、対談にはこんなやりとりもあった。

片山「北米の(アパの)ホテルですが、全部ではなくていいので、目抜き通りで日本国旗を掲揚していただきたいですね」
元谷「その辺りもいろいろ考えて進めようと。カナダは意外と反日の人が多いのです」

 まさに侵略戦争を引き起こした戦前の発想丸出し。政権の中枢に近い政治家がこんなセリフを口にするとは信じられないが、これがいまの日本の状況なのだ。

 今回の問題で、ジャパン・タイムズの取材に応じたユダヤ系団体の関係者のひとりは元谷氏とアパグループの思想を「元谷氏は日本の擁護者で、日本や日本人が他の世界の国々やその人々よりもすぐれていると考えているように思えます」(「The Jewish Federation of Edmonton」のCEO)と分析していたが、こうした人物に支えられた安倍政権も最近は、たんなるタカ派というレベルにはとどまらず、ナチズム的本質をどんどんあらわにしてきている。日本はいったいどこまでいってしまうのだろう。
(編集部)

最終更新:2017.11.20 04:05

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