自民党から出馬、SPEED今井絵理子の会見にはため息しかでなかった…安保法制批判は撤回、基地問題はごまかし

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今井絵理子オフィシャルブログより


 なんだ、このがっかり感は……。本サイトが先日報じたとおり、元SPEEDの今井絵理子が夏の参院選に自民党から出馬することを発表、本日、会見を開いた。

 それにしても自民党はとんだ浮かれっぷりだった。会見に同席した茂木敏充・選挙対策委員長は初っ端から「きょうは(今井が)白い服で、“White Love”の通りではないかと」などと過去のヒット曲になぞらえるという虫酸が走る紹介でスタート。当の今井も、出馬を決心した理由を「障碍をもっている子どもたちが、より明るい希望をもてる社会づくりをしたい」「政治は希望」などと語ったが、どうやら本人は自民党が弱者見殺しの政策を推進していることに気付いていないようだ。

 だが、本日の会見では“例の問題”にも質問がおよんだ。それは前回の記事で紹介した、今井の“安保反対”ツイートの件だ。

 あらためて説明すると、今井は昨年の終戦記念日である8月15日に〈戦争は何があってもダメ〉と投稿。さらにこう畳みかけたのだ。

〈戦争を経験した方で戦争賛成派の方いますか?もしそういう方がいらしたら、どうして賛成なのかを聞きたい。戦争を経験していない人が賛成!というのは、どこか説得力がないでしょ。今の日本の流れを拝見すると、どこかプチ戦争なら賛成!みたいに見えるのはわたしだけでしょうか?〉

 当時はちょうど安保法制の問題が大きく取り沙汰されており、この今井のツイートはいわば“安保法制=プチ戦争の容認”と指摘したもの。つまり“プチ戦争だって戦争は戦争。何があってもダメ”と果敢にも訴えていたのだ。

 きょう、このツイートの真意について記者から問われた今井は、「もう二度と戦争はしちゃいけない。平和を守らなくてはいけない」と発言。ここまではいいのだが、しかし、つづけてこんなことを言いはじめたのだ。

「平和を願うだけでは、守れないっていうのも現実です。一昨日、北朝鮮のミサイルが飛んで、沖縄の上空を通過したときに、緊張が高まりました。万が一のための備えは必要だと思います。ですが、それは戦争をするためではなくて、平和を守る、みなさんの生活や命を守るために必要なことだと思います」

 いや、あなたはそれを「プチ戦争」って呼んでたんじゃ……。結局、今井は昨年夏に抱いた平和への願いを打ち捨て、安倍首相の詭弁である「積極的平和主義」をすっかり身につけたらしい。やれやれ、である。

 それだけではない。会見で安倍首相の印象を訊かれ、今井はこう語った。

「私はものすごく、このいまの日本に感謝しています。それはなぜかと言いますと、こんなにも安全な国ってほかにないと思っています。それを守り抜いている政治家の皆さんはすごく尊敬しています」

 だから、危険に脅かされる国にしようとしているのが安倍首相はじめ現政権なんですけど……。しかも、基地問題について考えを質問された今井の回答はこうだ。

「基地問題に関しては、基地の負担を軽減したいということはみなさん同じ、共通の思いだと思っています。私は自分の目で見て、沖縄の方々の声をきちんと直接聞いて、そこで真剣に取り組めたらなと思います」

 基地の負担を軽くしたいと考えているのなら、沖縄にすべてを押しつけようと強権的に“沖縄いじめ”を実行している自民党から出馬するなど、絶対にあり得ない。もうひとつ言っておくと、今井はシングルマザーだが、安倍首相は自著『美しい国へ』(文藝春秋)のなかでシングルマザーを異端視し、父・母・子が揃った家族こそ〈しっかりした家族のモデル〉として子どもに教育すべきだと書き綴っている。

 今井のことも、家庭のことも、否定するような総裁なんだよ?といまからでも教えてあげたいが、過去のツイートを否定した問題からもあきらかになったように、そんな事実を今井はもう受け付けないはずだ。ようするに今井は、自身が理想とする社会のあり方と自民党の政策が乖離していることに気付いていない、あるいは目をつむっているのだろう。

 見事な“転向”劇としか言いようがないが、どうして今井は信念をねじ曲げてしまったのか。これもまた前回の記事でお伝えしたが、今井の出馬の裏には“政界と芸能界”の癒着問題が絡んでいる。

 今井は会見で「山東(昭子・参議院議員)先生からのお誘いを受けて、山東先生の人柄や思いに共感して(出馬を)決めました」と話したが、これはあくまで表向きの話であろう。というのも、今井の所属事務所・ライジングプロダクションはバーニング傘下のプロダクションのなかでも政界との関係が根強く噂されてきた事務所。実際、同じライジング所属の安室奈美恵が沖縄サミットのイメージソングの歌手に選ばれて各国首脳の前で披露した際も、小渕恵三元首相との癒着が指摘され、2001年に創設者の平哲夫氏が脱税で逮捕されたときも暴力団とともに、政界への資金流入が取り沙汰された。

 そんなライジングの政界人脈のなかでももっとも深い関係が囁かれていたのが、加藤紘一氏。前回お伝えしたように、今回の今井の出馬には加藤氏のかつての子分である谷垣禎一幹事長が加藤氏時代からのライジングとのパイプを利用し、今井獲得のために事務所へ圧力をかけたと見るのが妥当だ。谷垣幹事長は今井の出馬が一部メディアで取り上げられた際に「SPEEDって何?(と家族に話して非難された)」ととぼけてみせたが、そんなことはないはずだ。

 それに、SPEED解散以降、仕事が激減してしまった今井にとっては、政治家への転身は願ってもない話。信条に反してしまったとしても、背に腹は変えられないのだ。

 だが、節操がないのは無論、自民党のほうだ。安保法案に反対の立場をとった芸能人を“あえて”取り込み、基地問題で反対の声が高まっている沖縄に狙いを定め、辺野古への基地移転を強行するべく知名度の高い芸能人を利用しようとする……。ほとほとうんざりさせられる話である。
(水井多賀子)

最終更新:2016.02.11 05:09

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