“こじらせ女子”はやっぱりつらい! 自分の性に悩み「女性AVライター」になった雨宮まみを襲ったさらなる苦悩とは…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
amamiyamami_150818.jpg
左『東京を生きる』(大和書房)/右「モチイエ女子web」連載コラムのプロフィールより


 いま、世間では空前の“こじらせ”ブームである。能町みね子、久保ミツロウ、峰なゆか、犬山紙子、ジェーン・スー……、“こじらせ女子”とカテゴライズされる文化人が次々とブレイクし、それぞれ著作はヒットを連発。また、彼女らの勢いは活字メディアにとどまらず、能町・久保の『久保みねヒャダこじらせナイト』(フジテレビ系)、ジェーン・スーの『ジェーン・スー相談は踊る』(TBSラジオ)など、テレビやラジオの世界へも続々と進出している。メディアでも“こじらせ女子”を特集した企画が急増するなど、“こじらせ”が何かオシャレにさえ感じてしまうようになった昨今だ。

 しかし、“こじらせ”はけっしてファッションではない。具体的に彼女たちの人生を見聞きすると、よるべなき存在の不安や身を引き裂かれるような苦悩の末にいきついた言葉だということがよくわかる。

 たとえば、その“こじらせ女子”なる言葉をつくったオリジネイターでもある、AVライター・雨宮まみが今年、新著『東京を生きる』(大和書房)を上梓したが、そこにはこんな一節がある。

〈東京に出てきて、私はいつも、セックスに飢えている気がする。してもしても、まだ足りない気がする。過激なことを望んでは、ほんとうに満たされることを、もしかしたら自分は知らないのかもしれない、知らないからこんなに求めてしまうのかもしれない、と不安になる。
それで満たされることを知ることが、この世でほんとうの贅沢を知ることのように思えてくる。それを知っている人間だけが、貴族のような階級にいて、自分はそこには行けないのではないかと思う。それについて語る資格など、ないような気がする。私のそれなど、ひどく浅瀬にあるものなのではないかと思えるのだ〉

『東京を生きる』では、故郷を離れて“東京”に暮らし、“AVライター”という女性としてはかなり珍しい仕事のなかで、自らの“女性性”と格闘することになった日々の思いが生々しく綴られている。

 そもそも彼女がエロ業界に飛び込んだのも、自分の“性”との折り合いがつかなくなったからだった。そのことは、4 年前に雨宮が出版した自伝的エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)に書かれている。

〈じゃあなんで、仕事にするほどAVに深入りしてしまったのか。
 それはひとえに私が、「女をこじらせ」ていたから、と言えるでしょう。AVに興味を持ったとき、私は自分が「女である」ことに自信がなかったので、AVに出ている女の人たちがまぶしくてまぶしくてたまらなかった。「同じ女」でありながら、かたや世間の男たちに欲情されるアイコンのような存在であるAV女優。かたや処女で、ときたま男に間違われるような見た目の自分。そのへだたりは堪え難いほどつらいものでした〉

 そんなにも自分に自信をもてなくなった理由、それは雨宮の青春時代にあった。中学・高校時代を、いわゆるスクールカーストの最底辺で過ごし、容姿のコンプレックスに押しつぶされそうな彼女は、イケているクラスメイトのように“モテ”を追求することができなかった。

 “自分はかわいくない”“女として価値がない”、その確信が興味関心を“サブカル”に向かわせることになる。岡崎京子を読みあさり、雑誌「CUTiE」(宝島社)を読みふけり、団鬼六でリビドーを昂ぶらせ、ますます“モテ”からは遠ざかっていく。そんな毎日が彼女の青春であった。

 そして、そんな日々のなか培われた思いは、福岡から単身上京した後、“田舎者”という劣等感が加わることで、ますます“こじれて”いく。

〈「男にモテたい」なんて、思う余裕もなかった。それ以前に服すら似合わない。オシャレにすらなれない。恋愛や男のことなんて、そういうことをクリアしたあとで考える、雲の上の出来事に思えました。
 一日8回オナニーしては、虚しさに泣きました。自分はこのまま誰にも触られずに死んでいくんだと思うと、悲しかった。けど勇気を出すことなんてできなかった。自分には恋愛とか、そういうことは許されていない。そういうことを話題にすることすら気持ち悪い人間なんだと思っていました。そんなに性欲が強かったのに、セックスするなんて考えられなかった〉

 そんな鬱屈とした日々を過ごしていたある日、彼女の人生に転機を与えてくれる存在が現れる。

 平野勝之監督の『わくわく不倫講座』、そして、カンパニー松尾監督の『私を女優にしてください』。一般的なAVとは一味違う、生々しくむきだしの“性”を描いた、今でも語り継がれるアダルトビデオの名作たちである。

〈松尾監督のAVに出ている女の人は、自分にとって、理想の女の姿に見えました。エロくて、性欲に素直で、撮られても堂々としている。私は自分の欲情している姿が男の人にとって見苦しいみにくいものだと思い込んでいたので、この「堂々としている」というところがもっともすごいと思ったし、憧れました。憧れたけど、AVは現実をしっかり映すものでもあります。自分が堂々としたところで絶対にこんなふうにエロくも、キレイにもなれない。そう思いました。
ものすごい絶望感でした。畳をかきむしる思いでオナニーしてました。フローリングだったけど。でも、ここに何か、今までずっと苦しんでどうしようもなかったことに対する答えがあるのだという気持ちがありました。ここで逃げたら一生このまま卑屈な気持ちで、自意識をもて余したまんま、キレイにも、堂々とした女にもなれず、びくびくした一生を送るしかないんだと、なぜか強烈にそう思いました〉

 彼らの作品に刺激を受けた雨宮は、エロ本編集者を経て、AVライターへの道を歩みだすことになる。しかし、ここからがさらに“女をこじらせる”地獄の日々の始まりだった。

 いくら真剣に仕事をしても、編集部が彼女に文章を発注する理由は「女がAV観てるって思うだけで興奮する読者もいるから」という甘い発想ばかり。たまに仕事をほめられたとしても、それは「女の視点が面白い」という評価。真面目にAVのことを書いて「女でもこいつは違う、わかってる」「女だけど、AVのことよくわかってる」と認められたいと強く願っても、それは叶えられない。

 挙句の果てには、“美人ライター”と呼ぶ人も出てきて、「寝て仕事取ってる」「ヤッたからほめられてる」とすら言われる始末。

 これまでの人生ずっと“ブス”と呼ばれていたのに、手の平を返したように“美人”と言われる矛盾と、そこから感じる絶望。今まで“女”であることにさんざん苦しめられたのにも関わらず、どこまでも自分が“女”であることから逃げられない。

〈ライターとしての自分に価値があると思っていたわけではありません。でも、求められた価値がよりによって「女」だとは。自分は、女なのにちっとも女らしくなく、女の服やおしゃれや髪型が似合わない、女失格な女だと思っていた。「女」としての自分は、私の中では何の価値もないどころか自分を果てしない劣等感で苦しめるものでした。なのに求められるのは「貧乳だろうが顔がまずかろうが色気がなかろうが、とりあえず20代でAVとか出てない素人女」としての価値だけだった〉

 だが、雨宮のこの苦しみは、“AV業界”という、圧倒的に女性がマイノリティになる特殊な環境だから起こるものではなく、実は、社会に出て働く女性にとって普遍的な悩みであり、苦しみなのではないだろうか?

 男社会のなか、どんなに努力しても、成果を出しても、評価のなかに“女性”という観点が入ってくる。それは、女性がいまの社会で働こうとする限り必ずついてまわる問題だ。

 AV業界という特殊な社会のなかで、普通の女性よりも強く、その“社会で働く女性”としての悩みに直面した雨宮。そして、彼女はのたうち回るような苦しみに耐えた末、ゆっくりとその矛盾に対する答えを見つけていく。

〈いろんな出来事に揉まれてるうちに、自分の価値を他人の価値観に委ねてたら、これはもう、簡単に死ぬな、と思ったんですよね。〉
〈自分の価値を決めるのは自分自身で、決してそれを他人の手に委ねてはいけない。〉
〈自分自身を自分の手に取り戻す、というのは、他人の介入を許さない、ということではありませんでした。それは、どう見られてもいいや、と解き放っていくことでもあるし、どう見られてもいいやと思うためには、意志や安心感が必要でもありました。〉

 彼女が苦悩の末に見つけ出したのは、「自分の価値を決めるのは自分自身」という考えだった。

 男であろうが、女であろうが、イケメンであろうが、美人であろうが、ブスであろうが、関係ない。“自分の価値”を決めるのは、他人ではなく“自分自身”――。この発想を見つけてから、雨宮は少しずつ楽になっていったという。

 社会のシステムが男に都合の良いようにつくられている限り、抜本的に変わることは難しいかもしれない。しかし、自分の気持ちならゆっくりと変えることができる。「自分の価値を決めるのは自分自身」と心に刻むことで楽にもなれるし、自分に自信をもつこともできる。

 みんながみんな、雨宮のような過激な生き方ができるわけではないが、しかし、そこには“男だから”“女だから”といった価値判断から私たちを自由にしてくれるヒントが詰まっている。そう考えると、“こじらせ女子”の人気を支えているのは、この社会で生きづらさを感じている人たちの救いを求める声なのかもしれない。
(新田 樹)

最終更新:2015.08.18 12:14

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

東京を生きる

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

“こじらせ女子”はやっぱりつらい! 自分の性に悩み「女性AVライター」になった雨宮まみを襲ったさらなる苦悩とは…のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。○○女子新田 樹の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
2 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
3 『なつぞら』が宮崎駿・高畑勲も闘った「東映動画・労使紛争」を矮小化
4 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
5 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
6 田崎とケントに自民党からカネが!
7 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
8 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
9 Nスペ731部隊検証にネトウヨ錯乱!
10 安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
11 葵つかさが「松潤とは終わった」と
12 久米宏、さんま、村本も東京五輪批判
13 陸上・朝原宣治がスポーツの政治利用に危機感
14 嫌韓批判で炎上も…石田純一はブレない
15 ウーマン村本がよしもと社長からの圧力を激白!
16 「あおり運転」警察の過剰捜査とワイドショーの異常報道
17 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
18 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
19 秋篠宮家の料理番がブラック告発
20 日韓対立で『ワシントンポスト』が日本の歴史修正主義が原因と指摘!
1 安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
2 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
3 金融庁報告書で厚労省年金局課長の驚愕無責任発言
4 産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
5 安倍首相が「老後2000万円」追及に逆ギレ!
6 菅官房長官が望月衣塑子記者への“質問妨害”を復活
7 金融庁「年金下がるから資産運用」報告書で麻生太郎が開き直り!
8 F35捜索打ち切りと大量購入続行でNHKが「背景に政治性」と報道
9 金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金」の“不都合な事実”を隠蔽!
10 防衛省イージス・アショア失態 、玉川徹が原因を喝破!
11 長谷川豊が部落差別発言「謝罪文は馬場幹事長が作った」
12 講談社「ViVi」の自民党広告は公選法違反か!
13 映画『主戦場』上映中止要求の右派論客に監督が徹底反論!
14 渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争
15 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
16 田崎史郎「65歳から年金もらってます」
17 川崎殺傷事件「不良品」発言こそ松本人志の本質だ!
18 香港市民はデモの力示したが、日本は…
19 松本人志が「不良品」発言問題で謝罪も説明もなし!
20 農水元次官子ども殺害正当化は、橋下徹、竹田恒泰、坂上忍も

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄