経営陣は責任とらず社員を大量リストラ…SONYにもあった「追い出し部屋」の全容

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
kirisutesony_01_150514.jpg
『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』(講談社)

「ア―――ッ!」、時折部屋中に響く奇声。しかし、周囲のスーツ姿の男性たちは、何事もないかのように無視し続ける。すぐさま、同僚との会話もなければ、電話もかかってこない……まるで図書館のような静けさに戻る。

 ここはソニーの「キャリア開発室」。いわゆる追い出し部屋の一種で、人事部はここにリストラ対象者を集め、社内失業状態にさせ、退職加算金や転職支援会社の紹介を組み合わせた優遇案を提示することで、退職に追い込む。ソニー社内の通称は「リストラ部屋」。元の職場には生きて帰れないことから「ガス室」と呼ぶ社員もいる。

 このリストラ部屋の全容に迫った『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』(清武英利/講談社)によれば、リストラ部屋に送り込まれた人数は3000~4000人ではないかという。

 リストラ部屋への異動を命じられると、午前9時前に出勤し、自身に割り当てられた席に着かねばならないものの、仕事の中身は決まっていない。そこに送り込まれた社員は自らのコネで社内の受け入れ先を探すか、早期退職して転職先を見つけるか、あるいは何と言われても居座り続けるかの3つの道しかない。

 居座り続けても、会社から与えられた仕事はなく、やることを自分で決めなければならない。対外的には「社員がスキルアップや求職活動のために通う部署」であり、スキルアップにつながるものであれば、何をやってもよく、多くの社員は市販のCD-ROMの教材を用いての英会話学習やパソコンソフトの習熟、ビジネス書などの読書に取り組んでいる。

“リストラ部屋”は、1996年12月に「セカンドキャリア支援」事業が始まり、2001年に「キャリアデザイン推進部」とその下の「キャリア開発室」が設置された。上司の感覚で組織名は何度も変わり、こうしたリストラ部屋は厚木(神奈川県厚木市)、仙台(宮城県多賀城市)にも置かれることになった。

 そもそもソニーには「We are family」の言葉に象徴される家族主義と、創業者たちが唱えた「リストラ不要論」があった。たとえば、創業者・盛田昭夫は「なんで労働者だけが、不景気の被害を受けなければならんのだ。むしろ経営者がその責任を負うべきであって労働者をクビにして損害を回避しようとするのは勝手すぎるように思える(略)経営者も社員も一体となって、不景気を乗り切ろうと努力する。これが日本の精神なのだ」と彼の著書『21世紀へ』(ワック)で語っているほどだ。

 しかし、90年代には価格競争でエレクトロニクス事業の業績が悪化。03年3月期の営業利益が従来予想を1000億円も下回る1854億円に終わるなど「ソニー神話」が崩壊し始めると、本格的にリストラせざるをえなくなる。

 前掲の『切り捨てSONY』によれば、そのリストラの規模はすさまじいものだ。

「ソニーの早期退職者募集は2008年以降を見ても10回近くに上る。▽2008年(全社員対象)▽2010年(部門限定募集)▽2011年(キャリア開発室対象)と続き、『ストリンガーチルドレン』と呼ばれた平井一夫氏が社長として登場した2012年に入ると、間接部門(総務や人事部門など)を含め、1年間に3度も実施されている。その後も2014年(本社間接部門対象)、今年もまた2月から始まっている」(同書より)

 さらに、自発的に辞めたケースもあり、リストラされた従業員数は14年度末で7万8000人に上る計算だ。コストのかかる正社員から、安い非正規従業員に切り替えるリストラの結果か、最近のニュースによれば、16年3月期の連結営業利益は約3000億円と前期の4倍強に増える見通しだという。これは08年3月期(4752億円)以来の水準で、パソコン事業売却、スマートフォン(スマホ)事業の減損損失などリストラ費用の計上が一巡したことが大きいという。

「リストラ部屋」であるソニーキャリア開発室の最近の在籍者数(15年1月)は4人と減りつつある。しかし、今もリストラ部屋は形を変えて存続しているという。

「ソニーの内部文書にはこんな趣旨の記載があった。
〈2010年から、キャリア室の長期滞留者(6カ月経過時)にPDF業務をさせる〉〈2012年からSTC(ソニーテクノクリエイト)業務サービス部に出向業務を移管し、2年経過した長期滞留者はSTCに出向させる〉
 STCは業務支援サービスを行うソニーの子会社で、旧本社隣のソニー3号館にある。(略)『リストラ部屋』に対する批判が強まったためであろう、肩たたきを拒んだ社員たちをリストラ部屋からこんな子会社に次々と送り込み、単純作業をさせているわけだ。『他にも隠れリストラ部屋と言われる部署があります』と社員たちは証言する」(同書より)

 リストラは2015年以降も続く。一方で、新商品開発に関しては経営陣はリスクをとることに二の足を踏み、アップルなどのライバルに先を越されてしまう。

 創業者・盛田昭夫の「むしろ経営者がその責任を負うべきであって労働者をクビにして損害を回避しようとするのは勝手すぎる」という批判は皮肉なことに、そのままハワード・ストリンガー前会長兼CEO、平井一夫現社長兼CEOにあてはまる。経営陣は何の責任もとらないままだ。

「やらないとソニーはダメになる。まだまだ絞り足りない。不採算事業をどんどん切りなさい。濡れぞうきんを絞れば出てくるでしょう」と強くリストラを推し進めたストリンガーは「凋落を続けるソニーから総額8億8200万円(2011年3月期)の高額報酬を受けとっていた」うえに「米国在住のストリンガーが、東京・恵比寿ガーデンプレイスにあるウェスティンホテルのスイートルーム(1泊50万円以上)を常時貸し切り契約して、いつでも宿泊できるようにしてい」たという。

 続く平井社長も14年3月期の年収は3億5920万円だったことが明らかになっている。

「『会社の危機』を叫びながら、凋落の責任者であるストリンガーに巨額の退職金や報酬が支払われ、その全容はいまだに明らかにされていない。後継の平井一夫もドル建てで報酬を受け取り、本宅を米国に置いているため、日本の居住費などは会社負担と言われているが、会社は公表を避けている」(同書より)

 過去の遺産を食いつぶし、リストラをすることで人件費を減らし、利益を上げるソニー。本業はリストラ業に堕ちてしまったのだろうか。
(小石川シンイチ)

最終更新:2015.05.14 11:31

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

経営陣は責任とらず社員を大量リストラ…SONYにもあった「追い出し部屋」の全容のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。リストラ小石川シンイチの記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
2 久米宏、さんま、村本も東京五輪批判
3 田崎とケントに自民党からカネが!
4 Nスペ731部隊検証にネトウヨ錯乱!
5 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
6 陸上・朝原宣治がスポーツの政治利用に危機感
7 岸田『ひるおび!』出演にネトウヨが
8 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
9 テレ朝が萩生田に全面謝罪した背景
10 久米宏が電通タブーに踏み込む激烈な五輪批判
11 葵つかさが「松潤とは終わった」と
12 「あおり運転」警察の過剰捜査とワイドショーの異常報道
13 ウーマン村本がよしもと社長からの圧力を激白!
14 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
15 吉本興業の改革委員会に、自民党御用学者、裏金隠蔽の元検察・警察
16 『なつぞら』が宮崎駿・高畑勲も闘った「東映動画・労使紛争」を矮小化
17 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
18 白鵬・モンゴル力士バッシングとヘイト
19 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
20 日韓対立で『ワシントンポスト』が日本の歴史修正主義が原因と指摘!
1 安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
2 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
3 金融庁報告書で厚労省年金局課長の驚愕無責任発言
4 産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
5 安倍首相が「老後2000万円」追及に逆ギレ!
6 菅官房長官が望月衣塑子記者への“質問妨害”を復活
7 金融庁「年金下がるから資産運用」報告書で麻生太郎が開き直り!
8 F35捜索打ち切りと大量購入続行でNHKが「背景に政治性」と報道
9 金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金」の“不都合な事実”を隠蔽!
10 防衛省イージス・アショア失態 、玉川徹が原因を喝破!
11 長谷川豊が部落差別発言「謝罪文は馬場幹事長が作った」
12 講談社「ViVi」の自民党広告は公選法違反か!
13 映画『主戦場』上映中止要求の右派論客に監督が徹底反論!
14 渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争
15 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
16 田崎史郎「65歳から年金もらってます」
17 川崎殺傷事件「不良品」発言こそ松本人志の本質だ!
18 香港市民はデモの力示したが、日本は…
19 松本人志が「不良品」発言問題で謝罪も説明もなし!
20 農水元次官子ども殺害正当化は、橋下徹、竹田恒泰、坂上忍も

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄