「朝食シリアスにする?」おかんの打ち間違いメールに奇跡を見た!

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『おかんメール』(『おかんメール』制作委員会/扶桑社)

 かあちゃん……その大きな愛とやさしさで我が子を包む、まさに女神と呼ぶにふさわしい存在。しかしときには「定職につかないの? いつまで家にいるの?」なんて厳しい言葉を投げかけ、我が子に死への渇望を呼び起こす悪魔のような存在でもある。

 そんな神と悪魔が同居した唯一無二かつ絶対無敵で攻めどころも見当たらないかあちゃんにも、弱点はある。それが複雑な操作を要求する機械である。なかでももっとも身近で代表的なものが“携帯電話”だ。とくに複数回のボタンのプッシュやタップが求められる“メール”なんてものは、かあちゃんの天敵と言っていい。しかし、世のかあちゃんは、果敢にもその天敵に挑み、我が子へ愛あふれるメッセージを届けようとする。すると、その壮絶なバトルの果てに、けっこうな確率で奇跡が生まれるらしい。どう頭をひねっても生み出すことができない、奇想天外、奇妙奇天烈なメールという名の奇跡が。先日、そんな奇跡をこれでもかと集めた本が発売された。その名もステキ『おかんメール』(『おかんメール』制作委員会/扶桑社)である。試しにひとつ紹介してみよう。

「あと五分位どつくよ」

 いつのまに逆鱗に触れたのだろう、としばし頭を悩ませること確定のメールである。真相は、「で」を「ど」と打ってしまった単純なタイプミス。モバイルになれていない感がヒシヒシと伝わるが、たった一文字違うだけで、ここまでのインパクトが生まれるものなのか。そんな発見をさせてくれるとは、さすがかあちゃんである。同じ一文字違いシリーズではこんなものもある。

「朝食シリアスにする?」

 張りつめた空気のなか、かあちゃん手づくりの味噌汁にも手をつけず、父がぽつり「会社に……行ってくる……」。その言葉に続くかのように「僕も……」と席を立つ子どもたち。彼らを見送りもせず、ぼんやりと虚空を見つめるかあちゃん。その瞳にはうっすらと涙が……ヘビーである。おそらくは、“シリアル”と言いたかったのだろうが、痛恨のタイプミスで、何気ない朝食の風景が弩級のヘビーさに様変わりである。母の力、おそるべし……。

 表紙にも踊っているメールを紹介しよう。

「件名:ニュース(^o^)/」
「内容:お父さんがリストラだよ(^o^)/」

 うん。なんだろう、ぬか喜びという言葉が具現化したようなメールだ。顔文字を使えるまでにメールが上達したことはわかる。しかし、その用途が決定的に間違っている。まさに奇跡的な間違え方と言っていいだろう。

 ほかにはこんなものもある。我が子宛に、はじめて携帯を手にしたかあちゃんからのはじめてのメールである。

「オマエノトコロヘイクカラナ←」

 怖い。稲川淳二が喜々として語ってもおかしくないほどの怖さだ。ちなみに、このメールが届いたのは夜中だったという。しかも、かあちゃんがはじめてもった携帯であるが故に、知らないアドレスからである。下手すればトラウマになってもおかしくない。

 さて、本書には携帯になれていないゆえに発生するメールのほかにも、かあちゃんのすごさ、突き抜けたセンスをこれでもかと感じさせるようなメールも数々掲載されている。たとえばこちら。地震があった日、我が子から「地震、大丈夫?」という安否を気にするメールが届く。それに対してかあちゃんが返したメールが……。

「私が鎮めた」

 お前のかあちゃん、いったい何者?と、思わず聞いてしまうような内容である。

「ドラえもんの鈴って鳴ってるとこ見た事ある? あれ、フェイクでしょ。」

 フェイクて……かあちゃん、フェイクて……。ほかに言い方はなかったのだろうか。いやむしろ、このメールを見た今となっては、フェイクという言い方がベストなのではないかと思えてくる。

 かあちゃんが父と喧嘩。家を出ていってしまったという。すわ一大事。家庭におこる最大級の事件である。焦る我が子のもとへ一通のメールが届いた。なんと、かあちゃんから。そこに書かれていたのは……。

「突然いなくなってごめんね。母さん頭を冷やそうと思います。しばらくフランスのロンドンへ渡米します。」

 どこへ行ったんだ! いや、どこへ行くんだ! もうまったくわからない。

 子を思う母の愛。それは何ものにも代え難く、美しいものである。家を出て自立した我が子が風邪をひいた。いてもたってもいられなくなったのだろう。かあちゃんはこんなメールをよこしたという……。

「かぜ大丈夫?お母さん心配して、8時間くらいしか寝れなかったよ。」

 かあちゃん、理想的な睡眠時間だよ……すごくぐっすり寝られたようで、こっちは安心したよ……ただ、もし、我が子がブラックな職場で働いている身分であったのなら、悔しさと怒りのあまり、風邪が全快してしまうかも……。

 というふうに、本書に載せられた、かあちゃんから我が子へのメッセージの数々は爆笑必至。と同時に、見れば張りつめていた心をほぐしてくれる効果もある。そうなのだ、かあちゃんはいつもこうやって自然に、朗らかに、子どもの心をほぐし、ポッとやさしい明かりを点けてくれるのだ。

 本書を読み進めるうち、むしょうにかあちゃんに連絡をとりたくなっている自分に気づく。そこで久しぶりに連絡をしてみることにした。

 この原稿を書いている現在、メールを送ってから1 週間が経っている。かあちゃんからの返信はない。いっこうにない。
(オンダヒロ)

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