ビートたけしと瀬古利彦が「玉川徹待望」発言もテレ朝は玉川を政治に触らせない方針! 安保3文書改定の日に三國シェフインタビュー

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不定期出演の玉川氏(番組HPより)


  安倍晋三・元首相の国葬での菅義偉・前首相の弔辞が電通の演出だったとする事実誤認発言により、昨年10月に『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)のレギュラーコメンテーターを降板し、不定期出演となっている玉川徹氏。だが、ここにきて、玉川氏の完全復帰を望む声が一段と高まっている。

 たとえば、1月4日放送回では、番組恒例となっている箱根駅伝の生解説をおこなった元マラソン日本代表の瀬古利彦氏が「きょう、箱根駅伝ど素人おじさんがいないじゃない」と玉川氏がいないことを指摘。MCの羽鳥が「ちょっと今年はいないんです」と答えると、瀬古氏は「なんで?」と畳み掛け、「これが楽しみで来てるのに」と玉川氏の不在に不満を漏らした。

 また、「週刊ポスト」(小学館)1月1日・6日号に掲載されたビートたけしの連載では、玉川氏の番組レギュラー降板について「「事実確認を怠った」という意味でちょっと迂闊だったけど、それでも可哀想なところはあるよな」と言及。こうつづけている。

「権力や大企業に忖度するコメンテーターなんてつまんないし、そういうのばかりだからドンドンテレビがダメになっていく。そういう意味じゃ、こういう暴れん坊にはもっと頑張ってほしいんだけどさ」

 こうした「玉川徹復帰待望論」はネット上でも大きくなっている。というのも、岸田文雄首相は昨年末、「敵基地攻撃能力の保有」や防衛費増額の方針を明記した安保3関連文書の改定を閣議決定。さらに原発の新増設や運転期間の延長を認める方針を打ち出した。ところがテレビのニュース番組やワイドショーは、安保政策の大転換を防衛費増額の財源問題にスライドさせ、原発政策の大転換についてもエネルギー価格の高騰を強調して問題を矮小化。かたや、原発や安保問題は玉川氏が繰り返し『モーニングショー』で取り上げてきたテーマであり、「いまこそ玉川氏に鋭く切り込んでほしい」という声が大きくなっているのだ。

 だが、このような視聴者の声とは裏腹に、『モーニングショー』に不定期出演する際、玉川氏は政治的なテーマを不自然なほどにやらせてもらえていない状況にある。

 あらためて振り返ると、玉川氏が番組内で謝罪をおこない、レギュラーを降板したのは昨年10月19日。その翌日の10月20日には統一教会問題を扱ったコーナーに出演し、解散命令請求についてスタジオでレポートをおこなった。

 しかし、その後に玉川氏が番組出演したのは21日後となる11月10日。久々の登場にTwitterでは「玉川さん」「モーニングショー」がトレンド入りするなど大いに沸いたのだが、肝心の玉川氏による取材報告のテーマは「インバウンドの現状」。訪日外国人に成田空港で日本に来た目的を尋ねるという、さながら『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京)のような拍子抜けする特集だったのだ。

 だが、もっとも拍子抜けしたのは、12月16日放送回だろう。

安保3文書改定の日に出演した玉川徹がなぜか三國シェフのインタビュー まるで幻冬舎本のパブ

 11月10日の出演以後、11月17日放送回にも玉川氏は出演予定だったが、新型コロナ感染で欠席。12月1日に元気な姿を見せてくれたが、この日のテーマは緊急承認されたコロナ治療薬「ゾコーバ」について。コロナの問題は玉川氏が追いかけてきたテーマであるため、まだ理解できるものではあったが、つづく12月16日の出演回のテーマは、なんと12月28日をもって閉店したフレンチレストラン「オテル・ドゥ・ミクニ」の三國清三シェフのインタビューだったのだ。

 言っておくが、三國シェフのインタビューが放送された12月16日は、岸田政権が安保3文書改定を閣議決定し、戦後安保の大転換を図った日だ。そのような歴史的な政策転換がおこなわれるという日に、玉川氏がやる必要などない三國シェフのインタビューを特集するとは──。

 しかも、三國シェフといえば、幻冬舎の見城徹社長と昵懇の仲であることは有名な話で、12月14日に発売となった三國シェフの自伝『三流シェフ』の版元も幻冬舎だ。見城氏はテレ朝の放送番組審議会の委員長を務めており、テレ朝のさまざまな報道・情報番組で安倍政権に批判的な出演者が降板させられ、政権批判報道が減った背景にも、見城氏の影響があると言われてきた。当然、安倍政権批判を繰り返してきた玉川氏に対しても、睨みを利かせてきたと思われる。ところが、“見城案件”としか思えない三國シェフのインタビューを、よりにもよって玉川氏がおこなったのである。

「玉川氏の『電通』発言問題が議題となった審議会でも、見城氏は強行姿勢をとったと囁かれています。なのに、幻冬舎から出たばかりの本の宣伝ともいえる三國シェフのインタビューを玉川氏に担当させたのは、見城氏へのご機嫌取りの意味合いがあったとしか考えられません。玉川氏は無理矢理やらされたんでしょう」(テレ朝関係者)

 当然、この12月16日の放送回で、玉川氏が安保3文書改定の閣議決定や防衛費増額について発言する場面はなし。その後、玉川氏は12月28日放送回にも出演したが、この日のテーマはコロナ後遺症だった。

玉川徹の完全復帰を阻むテレ朝上層部 スタジオ出演が急遽キャンセルになったことも…

 あきらかに、政治的テーマを取り上げること、政治的テーマにかんする発言を封じ込められているようにしか見えない状況に追い込まれている玉川氏。その背景には、やはりテレ朝上層部による圧力があるらしい。

 その筆頭が、テレ朝の篠塚浩社長だ。篠塚社長は、報道局長時代から“テレ朝のドン”である早河洋会長の腰巾着的存在で、安倍官邸の意を受け、報道現場に露骨な圧力をかけてきた。その忖度ぶりは早河会長よりも露骨で、玉川氏についても、早河会長が視聴率の取れる玉川氏の起用をある程度まで許容する姿勢であるのに対して、篠塚社長はストレートに降板させることを虎視眈々と狙っていると言われてきた。

 そして、「電通」発言の際も、篠塚社長はそのまま玉川氏を退社に追い込もうとしていたと見られている。

 だが、本サイトでもお伝えしたように、玉川氏の謹慎処分後、テレ朝には「玉川さんを降板させるな」という抗議電話が殺到。さらに玉川氏がテレ朝を退社するような事態となれば、これまでの圧力を暴露されるというリスクもあるため、完全降板ではなく出演回数を減らすというかたちで落ち着いたのだという。

「しかも、自民党に忖度した上層部は、復帰に際して、“玉川には政治に関わる問題でコメントさせるな”と条件を突きつけたらしい」(前出・テレ朝関係者)

 玉川氏は生謝罪をおこなった翌日の10月20日に出演、統一教会問題について解説したが、翌10月21日にも出演して、同じく統一教会問題を取り上げる予定だったという。ところが、急遽それがなくなり次に出演したのは21日後の11月10日だった。これも「篠塚社長が20日にスタジオ出演して統一教会問題で解説しているのを見て激怒し、現場に出演そのもののストップをかけたのではないか」という見方が局内で流れたという。

  しかも、玉川復帰の障害は上層部だけではない。本来なら、こうした圧力に声をあげるべき報道局の政治部がむしろこうした圧力を後押ししている。

「報道局はもともと、記者経験のない玉川さんが脚光を浴びているのが面白くない。しかも、政治部は自民党の政治家からしょっちゅう、『玉川をどうにかしろ』と文句を言われていますからね。政治部のボスである篠塚社長に『○○先生が玉川に怒っている』『○○先生が玉川を許さないと言っている』といった政治家の声をあげて、圧力をかけさせている節もある」(前出・テレ朝関係者)

玉川徹不在の『モーニングショー』が政権擁護垂れ流し状態に 原発も防衛費増額も…

 不定期出演というかたちに追い込まれたばかりか、いまなお玉川氏の報道活動には厳しい制限をかけられている──。それでなくても、玉川氏がいなくなった『モーニングショー』では、ほとんど政権批判がおこなわれていない状態だ。たとえば、防衛費にかんする問題についても、12月15日放送回では田崎史郎氏が「『エイヤ!』と決めないと決まらない」などと岸田政権を露骨に擁護。12月12日放送回にいたっては、石原良純氏と山口真由氏が“防衛費増額は当然”“増税やむなし”と喧伝する始末だった。

 無論、玉川氏がレギュラー出演していれば、こんな政権擁護が垂れ流しにはなっていなかっただろう。いや、むしろ玉川氏がいれば、岸田政権の決定を徹底批判したはずだ。

 現に、岸田政権が次世代型原発の建設を検討する方針を公表した昨年8月には、当時、レギュラーコメンテーターだった玉川氏は「いまの電力不足の問題と新増設の問題って全然関係ないですからね」とズバリ指摘した上で、地震が来て壊れないっていう原発は日本に一個もありませんから」「電気代が高くなっているという機に乗じてこんな話を持ち出したとしたら、僕は不誠実だと思うしセコイと思います、やり方が」と批判していた。

 また、防衛費GDP比2%の増額目標についても、玉川氏は「教育に予算を増やすべき」と繰り返し主張。昨年5月の「そもそも総研」では「そもそも『GDP比1%=約5兆円』という予算で何ができるのだろうか?」と題して取材をおこない、「(5兆円があれば)暮らしやすくするという意味では、病院の窓口負担がゼロになり、住宅の補助もできる、教育への投資で出生率も上がる。日本の大きな問題が解決できるかもしれない」と提案していた。

 しかも、安保3文書改定の閣議決定がおこなわれた12月16日、じつは玉川氏は東京新聞にコラムを寄稿していた。

 コラムで玉川氏は、防衛費増額にかんする議論について〈突っ込みどころが多すぎて、頭がクラクラします〉といい、国債の発行で賄おうという案を〈無謀な戦争に国民を道連れにした元凶である戦時国債と一緒。日本は過ちから学んだはずです。許せません〉と猛批判。さらに、日本以外の先進国がこの30年でGDPを1.5〜2倍に増やした一方、日本はほとんど変わっていないことを指摘し、〈もし日本がGDPを二倍にしていれば防衛費はGDPの1%のままでも額は今、目指している二倍です。経済政策に失敗しています〉と喝破。敵基地攻撃能力についても〈さらなる軍拡を誘発するだけ。議論をやり直すべき〉と直言している。

 テレビのコメンテーターとして、本当ならばこうした政策批判を、きっと玉川氏は番組でおこないたかったはずだ。だが、肝心の玉川氏の発言は封じ込められ、テレビは政権が敷いたレールを走るだけの報道やコメントばかり。「ここに玉川さんがいれば」「玉川さんには政治のテーマをやってほしい」と視聴者が考えるのは当然だ。

 今年で玉川氏は定年を迎えるが、退職後もテレ朝と嘱託契約を結ぶのではという噂も飛び交っている。しかし、自由な報道活動を制限し、口を封じるような、どうしようもないテレビ局に残って何になるのか。いっそのこと、玉川氏はフリーとなったほうがいいのではないだろうか。

最終更新:2023.01.09 09:46

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