新型コロナで高須院長やネトウヨが北朝鮮の「全員隔離」を絶賛! 一方、元厚労省検疫官は海上隔離を「効果なし」「パニック生むだけ」

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新型コロナで高須院長やネトウヨが北朝鮮の「全員隔離」を絶賛! 一方、元厚労省検疫官は海上隔離を「効果なし」「パニック生むだけ」の画像1
“北朝鮮絶賛”を連投している高須院長Twitter


 新型コロナウイルスをめぐる「海外渡航者を日本に入れるな」「徹底的に隔離しろ」というヒステリックな声が止まらない。横浜港では、7日の時点で乗客のうち61人に新型コロナウイルスの陽性反応が確認されているクルーズ船で、約3500人の乗客乗員が船内に長時間閉じ込められるという事態が起きているが、Twitter上では「拘束は当然」「離島に隔離しろ」なる投稿が多数みられるのだ。

 とりわけ狂っているのはネトウヨたちで、「あやしい人は全員保菌者とみなし拘禁」「感染者は駆除するしかない」などと喚き立てているのだが、なかには北朝鮮を絶賛する者まで現れている。

〈今回は北朝鮮の方が日本政府より優れてる。北朝鮮の勝ち〉
〈この件に関しては北の対応は正しいですね。〉
〈独裁政治の良いところですね。民主主義は緊急時の意思決定が遅い。〉
〈これが普通の国家としての対応です〉

 コレ、いったいどういうことかというと、どうも、新型コロナウイルスをめぐって北朝鮮が「中国人と接触した者は全員隔離」「中国からの入国者は1カ月隔離」という強硬策をとっていることを称賛しているらしいのだ。

 たとえば高須クリニックの高須克弥院長は、北朝鮮の対応を伝えるニュースをリツイートしながら、こんな“北朝鮮絶賛”ツイートを連投している。

〈大したものだと思います。北朝鮮の我が国に対する姿勢は嫌いですが一人も感染者を出さない強い決意と指導力は凄いと思います。悔しいです〉
〈いくら貧しくても、いくら国民が無知であっても、指導者が賢明で決断力があれば新型コロナ肺炎ウイルスを安全に抑えこめることが証明された。〉(1月30日)

〈1人も感染者がいなくても、国境線を封鎖しても。新型コロナ肺炎との戦いの姿勢を解かない北朝鮮って凄い国なのかもしれない。いや、指導者の資質かもしれない。うらやましがる自分が嫌になった。なう。〉
〈北朝鮮みたいに中国人の侵入を遮断すれば完璧に防げた危機なのに・・・あ。これ日本にも当てはまる!!口が滑った。ごめんなさい。なう。〉(1月31日)

 いやはや、情報統制されている北朝鮮で「国内感染者は発生していない」なる官製発表を鵜呑みにするなんて、それこそ「頭がお花畑」だろう。だいたい、いつもは北朝鮮へのヘイトを散々ぶちまけている人たちが、「北朝鮮の強い決意と指導力は凄い」「金正恩は賢明で決断料のある指導者」と絶賛するとは、なんとも倒錯しているとしか言いようがない。結局、ふだん北朝鮮や中国を批判しているネトウヨ連中こそ、人権を顧みずに強権を発動する独裁国家、全体主義に憧れているってことか。

 いや、これは笑い話ではない。実際、現在の新型コロナウイルスをめぐる騒動では、安倍政権による強引な入国拒否や、横浜港でのクルーズ船の件のような無茶苦茶な“隔離”が、ほとんど無批判に受け入れられてしまっている。巷でも、人々がマスクを買い求めて品薄になり、医療機関で不足するという事態が起きている。マスコミは中国人観光客による“マスク爆買い”ばかりをクローズアップするが、実際には転売目的で買い占めをしている日本人もいる。この状況は、完全にパニックと言っていい。

 歴史が証明するように、独裁的な指向性を持つ為政者は、疫病に限らず、大災害や戦争の危機などで“緊急事態”を強調し、人々の不安を煽ることで、全体主義的な政治体制を強化しようとする。その視点が、現在の“新型コロナパニック”では完全に抜け落ちているのが極めて危険だ。

元厚労相検疫官がクルーズ船海上隔離を「効果なし」「パニック生むだけ」と批判

 そもそも、新型コロナウイルスは大々的に入国拒否したり、感染の可能性がある人たちを強制隔離するほどのものなのか。

 こう言うと、「現に人が死んでる」「中国では患者の数が3万人に迫ろうとしている」などという思考停止の批判が噴出するだろうが、現段階では、SARSやMERSよりも致死率は低く、死亡者や患者数もインフルエンザのほうがよっぽど多い。少なくとも、新型コロナウイルスに対する「国境を封鎖しろ」「感染者は離島に隔離しろ」というような反応は過剰だろう。

 5日放送の『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)でも、ゲスト出演した元厚労省検疫官の木村もりよ医師が、強制隔離のような横浜港でのクルーズ船乗客の留め置き措置について「科学的根拠がない」と強く批判していた。

「船の留め置きをしたというのは、基本的には科学的根拠に基づいていないと思っています。すでに水際で留め置くということの限界というのは、かつて14世紀から15世紀にペストが流行った時代に、40日間イタリアの海岸線に留め置いたわけです。そこで汚染国から来た人はいれるんじゃない、すべてを遮断しましょう(とした)。でも、結局のところペストから逃れた国はなかった」

 さらに木村氏は、入国拒否や強制隔離の施策がもたらす弊害について強く批判していた。

「科学的にいわゆる水際作戦で感染症を食い止めたというような歴史的な科学的根拠、エビデンスというのはございません。むしろ、それから得られる“負の遺産”というのが非常に大きい問題となっております。それは必要以上にですね、現在のこの新型コロナウイルスというものに関して過剰な反応を起こしてしまう、すなわち、もう罹ったら死んでしまうんじゃないか、それはマスクが飛ぶように売れている現象からもそうですし、それからもう一つは差別ですね」
「こういうこと(クルーズ船の留め置き)がやられるだけで、水際で防がなきゃならないものなのか、防げるものなのか、っていう幻影のもとに検疫活動が行われると、結局、14日も停められちゃうくらい怖いウイルスなんだというイメージが出てきて、自分たちが罪人ではないか、みたいな思いまで出てきてしまう。これは明らかにおかしいと思います」

 木村氏は番組のなかで、入国拒否や海上隔離のような政府の対策を「はっきり言って時代錯誤なやり方」と明言し、「情報公開の徹底化を厚生労働省はもっとやるべきだ」と力を込めていたが、実際、日本で起きている“新型コロナパニック”は、テレビマスコミが必要以上に不安を煽り、中国人や感染者への偏見や差別を助長するような特集を繰り返していることが原因だ。こういうときこそ、政府は情報公開を徹底し、暴走するマスコミや大衆を冷静にさせる必要がある。にもかかわらず、安倍首相は国会でも「入国拒否措置の地域拡大」の可能性を述べるなど、“ウイルス対策やっている感”をアピールすることしか頭にない。これでは、パニックはおさまるどころか、ますます混迷を極めていくのは目に見えているだろう。

2009新型インフルエンザの時にWHOが過剰対応を批判したのも中国と日本

 木村氏は、新たに国内で3人の感染者が確認されたことをめぐって、「感染者を追跡すべき」という風潮があることについても、こう苦言を呈していた。

「中国でパニックが起こっていますけども、日本も同様のパニックが起こっているわけで、それはきちんとした情報が掴めていない(から)。現在、国内発生が起こっていて、ヒトからヒト感染も報告されているなかで、ある程度日本国に広まっていると考えるのが常識的。当然、最悪の事態に備えるが危機管理の鉄則ですから、この3人の追跡調査をしたところであまり意味はないと思います。それよりは、どういう場合にどういうふうにしたらいいのか、具体的な情報ももっともっと国民に流すべきであって、いらぬ不安や疎外感、そうしたものは何の得にもならないですから、そうしたことを払拭すべく国は全力をあげるべきだと思います」

 ところが、『グッディ』MCの安藤優子は「それでも追跡せずにはおられない」と述べ、番組コメンテーターのカンニング竹山は「それだったら一旦、出入国を禁止するぐらいの、差別とかじゃなくて一回止めて、日本独自の治療のやり方とプロセスをつくらないと」とコメント。だが、木村氏はこうした意見についても、冷静にこう返したのだ。

「かつて、2009年のいわゆる新型インフルエンザ流行の際、WHOは2カ国を名指しで非難しました。それは何かというと、効果のない、非常に少ない水際作戦をやりすぎることによって、いろんな“負の遺産”が生まれてしまう。物流の移動を制限する、人の移動を制限することによって感染症を防げたエビデンスはございません。それゆえに、2カ国を名指ししたんですけども、その2カ国とは、まさに中国と日本です。同じことを繰り返している」

 中国、北朝鮮の全体主義的な感染者隔離や封鎖を絶賛するネトウヨたちに、「感染者は隔離されて当然」「疑いのある者は追跡せよ」と煽りまくるマスコミ。いずれにせよ、はっきりしたのは、戦後75年が経ったこの国で、“人権を顧みない政府”“有無を言わせない指導者”が求められているという事実だ。何度でも繰り返すが、独裁者は不安と恐怖を操ることで人々を支配する。本当に恐ろしいのは、そちらのほうだと思うのだが……。

最終更新:2020.02.07 01:04

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