山本太郎は「バカ」じゃない! 確信犯のパフォーマンスに安倍の急所を突く質問…ここまでの覚悟をもった政治家がいたか!

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参議院議員 山本太郎 オフィシャルサイトより


 案の定、山本太郎が盛大にバカにされている。

 山本は19日の参議院本会議で牛歩戦術を行い、採決の引き伸ばしを狙ったのだが、そのときの格好といえば喪服姿で左手には数珠。さらに壇上に登ると、焼香をあげるしぐさを行い、合掌さえして見せた。

 山本によると、それは「自民党は死んだ」というメッセージであり、強行採決が行われた特別委員会がその「通夜」で、翌日の本会議は「告別式」だったという。

 しかし、メディアの反応は冷ややかだった。各テレビ局こぞって山本議員の牛歩を取り上げ、TBSは「謎のパフォーマンス」、フジテレビは「葬儀パフォーマンス」などとして「こいつピエロだ」と言わんばかりに映像を繰り返し流している。当然、ネットの反応はよりストレートな誹謗中傷に溢れた。

〈キチガイ乙、こいつはもう早く死ねばいいのに〉〈山本テロ太郎は一人牛歩して何の意味があるのだろうか…〉〈完全に頭狂ってるとしか思えん〉〈国会はあんたのつまらない寸劇を披露する場じゃない〉

 ……もういいだろう。とにかく、山本議員はマスコミからは冷笑され、ネットでも血祭りにあげられているわけである。

 だが、山本はほんとうにただの「ピエロ」「目立ちたがりのバカ」なのだろうか。実を言うと筆者も、少し前まで山本太郎のことをそういうふうにとらえている部分があった。だが、この間の安保法制論議での言動を見ているうちに、考えは180度変わった。

 いまの野党にここまでの覚悟と訴求力をもった政治家がいるか、と。

 たとえば、くだんの牛歩。採決直前のメディアの論調を見ていると、牛歩や議事妨害パフォーマンスをやれば、批判を受けるというのは明らかで、山本自身も絶対にそれはわかっていたはずだ。だからこそ、他の野党議員は批判を恐れて日和って、牛歩戦術を放棄した。

 だが、そんななかで山本太郎ただ一人、それを敢行した。しかも、山崎正昭参議院議長が投票の時間制限を求めたことで未遂となったが、それがなければ日付を越えて牛歩を続行するつもりだったという。

 これは相当の覚悟がなければできないことだし、ただの目立ちたがり屋と決定的にちがうのは、そこに明らかに「審議を遅らせてやろう」という意思があることだ。

 考えてみれば、例の天皇に手紙をわたそうとした事件をはじめ、山本太郎のパフォーマンスにはいつも目的があった。目的のために、ひんしゅくや批判をおそれず、もっとも訴求力のある方法を選ぶ。そういう意味では、明らかな確信犯なのだ。

 そうした確信犯ぶりは国会での質問にもよく表れている。持ち時間が短いにもかかわらず、他の議員とは切り口の異なる質問で、安倍首相や中谷元防衛相のもっとも嫌がりそうなところを突いていく。それはまさに独壇場と言っていいものだった。

 たとえば、7月30日には、安倍首相に対して、これまで誰も言及してこなかった“原発にミサイル攻撃を受けた場合の想定”を質問。田中俊一・原子力規制委員長の「弾道ミサイルによって放射能が放出されるという事態は想定していない」、安倍首相の「一概にお答えすることは難しい」という答弁を引き出し、政府がなんの対策も講じていないことを暴露させた。

 8月19日では、「永田町ではみんな知ってるけれど、わざわざ言わないことを質問していきたいと思います」と前置きをして、政府に「第3次アーミテージ・ナイリポート」を突きつけた。これはアメリカのジャパンハンドラーによる日米安保の報告書だが、安倍政権の政策のことごとくがこれをなぞった「完コピ」であると指摘。さらに、アメリカの防衛予算はすでに日本の自衛策を当てにしており、そのための安保法制ではないかと迫った。

 また、8月25日には、自衛隊は国際法上違反となる行為には支援しないと言い切る安倍首相に対して、山本太郎は、イラク戦争時に無抵抗のイラク市民が手足を縛られた状態で虐殺されたことなどの事例を列挙。「総理、これ戦争犯罪ですよね? 国際法違反ですよね?」と問い、またその翌日の委員会では、防衛省が2年前に作成した「企業から自衛隊へのインターンシッププログラム」を取り上げ、政府による経済的徴兵制の一端を明かしている。

 そして、9月14日には沖縄の基地問題について追及。前述の「アーミテージ・ナイレポート」の両責任者が、「対案があれば米国は間違いなく耳を傾ける」(アーミテージ氏)、「辺野古を再検討するべき」(ナイ氏)と発言していることに関して、「これ言うこと聞かなくて大丈夫ですか? 利権がまた違うのかな?」と首相を問いただした。安倍首相は「『利権』という言葉については取り消していただきたい。根拠もなくですね、極めて名誉を傷つけるような発言は控えていただきたいと思います!」と、説明責任を放棄して“名誉毀損だ!”と攻撃。だが山本議員は動じず“日米地位協定は「売国条約」だ”とはっきりと言い放ったのだ。一方、「売国」という言葉を鴻池委員長にとがめられると、あっさり撤回するという柔軟性も見せた。

 こうした国会での答弁を見れば、山本太郎が、近年の政治状況や資料をよく研究したうえで、戦略的に政権の“急所”を突く質問を連発していたことがわかるだろう。

 そこには、少数政党に所属し世間からは“色物”としか見られていない山本が、政権を打倒できないまでも、“引っ掻き傷”くらいは残してやろうという強い意志がうかがえる。
 
 実際、こうした質問は政府側からはごまかし答弁でかわされ、テレビでも報じられることは皆無だったが、少なくともネット上では話題になり、かなり広い層に拡散していった。

 山本太郎は我々が想像している以上に、戦略的に物事を考え、行動している。いま、何を訴えるべきか、何のためにどんな情報を集め、どういう方法で表現すべきか。おそらくネットやメディアの非難も山本にとっては織り込み済みで、むしろ拡散の道具として考えているのではないだろうか。

 そう考えると、「バカ」「キチガイ」と口汚く罵って自己満足にふけるネトウヨのほうがむしろ、山本の手のひらの上で踊らされているのかもしれない。

 山本太郎、もしかして将来はけっこうすごい政治家になるんじゃ……。って、ちょっと、ホメすぎ?
(宮島みつや)

最終更新:2015.09.21 06:59

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