ネットで拡散「堤防決壊は民主党の事業仕分けのせい」は完全なデマだ! 自民党のステマ部隊“ネトサポ”が関与か

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蓮舫参議院議員HPより


 記録的な大雨の影響で、関東から東北地方にかけて、各地で河川の氾濫や浸水などによる大規模な被害がでている。茨城県常総市では鬼怒川の堤防が決壊し、多くの住民が建物のなかに取り残されている。

 そんななか、ネット上では、10日夕方ごろからこの種の情報が飛び交っていた。

〈民主党政権時代の負の遺産の目に見えての大失敗だ。スーパー堤防を何百年に一度来るかどうかの対応は不要と却下した。当時の総理大臣始め担当部署大臣職を皆極刑にしてもいいくらいだ。日本人皆で殺人及び殺人未遂で訴えたら…世界初かな?何とか責任は取らせないといけないと思う〉

 ようするに、民主党政権が事業仕分けで「スーパー堤防」を「却下」したことが、今回の“鬼怒川堤防決壊”及び大規模浸水被害の原因、民主党は責任をとれ!というのだ。スーパー堤防とは、国が1987年に開始した堤防の幅を高さの30倍(従来は2倍)に広げる治水事業。計画当初、国土交通省は200年に1度クラスの大洪水に備えるため、実に873kmを整備予定としていたが、現在、計画は首都圏と近畿圏の5河川120キロに縮小されている。

 だが、一言で言えば“鬼怒川堤防決壊は事業仕分けのせい”というのは完全にデマである。

 たしかに2010年、民主党政権が事業仕分けでスーパー堤防を「廃止」と判定したことは事実だ。しかし、スーパー堤防は完成までに400年、あるいはそれ以上の長大な年月と、12兆円超もの莫大な金額がかかると試算された超巨大事業。仮に民主党が仕分けをおこなっていなくても、現在までにスーパー堤防が機能していた可能性は極めて低いだろう。しかも、もともとスーパー堤防が計画されていたのは、関東地方の利根川、江戸川、荒川、多摩川、関西地方の淀川と大和川の計6河川区間のみ。そもそも鬼怒川は最初から計画に入っていなかったのだ。

 ようするに、民主党による仕分けがあろうがなかろうが、今回の“鬼怒川堤防決壊”は防げなかったというほかないのである。にもかかわらず、とりわけツイッター上では、“事業仕分け人”の民主党・蓮舫参議院議員を誹謗中傷するこんなツイートであふれた。

〈決壊した鬼怒川の堤防、「50年100年に一度しか役に立たない堤防はいらない」って蓮舫が切り捨てた堤防計画の結果なので蓮舫は責任とって死ね〉
〈おう、スーパー堤防なんて要らんと言うて仕分けした想像力なし漢族おばはんとその徒党ども、NHKニュース見てるかこらぁ〉

 このヘイトスピーチさながらの言い回しを見て、ピンときた人もいるだろう。そう、実は“鬼怒川堤防決壊”をタネに、国粋主義的・民族差別的な発言を連呼するネット右翼たちが、一斉に蓮舫議員と民主党を攻撃していたのである。

 また、ネトウヨたちは「鬼怒川の堤防決壊はソーラーパネル業者せい。太陽光発電を推進した民主と反原発派は責任とれよ」などともがなりたてているが、これも明らかに難癖レベルの物言いだろう。

 昨日夜、一部ネットニュースが“鬼怒川の氾濫はソーラーパネルの設置により丘が削り取られていた場所からもあった”と伝えたが、これは鬼怒川沿いの常総市若宮戸地区で、堤防の役割を果たしていた“自然の丘”が、太陽光発電所の建設のために民間業者によって削りとられており、そこから「越水」していたというもの。決して人口的な「堤防」を太陽光発電業者が破壊していたわけではない。にもかかわらず、ある「2ちゃんねらーでネトウヨ」と自認するツイッターユーザーはこんなツイートをしていた。

〈常総市のソーラーパネル、反原発派の意見を聞かせて下さい。素晴らしいブーメラン。此度の水害で水力発電所も水没したそうで…やはり原発再稼動は必要ですね〉

 ようするに、脱原発派が再生可能エネルギーを推進したために“鬼怒川堤防決壊”が起きたと言いたいようだが、そもそも、氾濫の可能性がある河川沿いで“自然の堤防”を切り崩す工事を放置していた行政の監督不行届きや現政権の法整備のずさんさこそ問われるべきで、太陽光発電そのものは河川の氾濫とはまったく別の話だ。もちろん現在行政を担っていない民主党とも、ましてや脱原発運動とも関係ない。ようは、ネトウヨは“ソーラーパネル→反原発→サヨク”という連想で、責任を捏造し、押し付けたいのだろう。

 まあ、ネトウヨによるデマやミスリードを用いた攻撃は毎度のことでもあるが、しかし気になるのは、こうしたツイートやリツイート(引用拡散)をするネットユーザーのなかに、自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC、通称・ネトサポ)の姿が散見されることだ。

 J-NSCとは、自民党が下野時、有志に呼びかけて設立した党「公認」のボランティア集団。その活動内容は、自民党の政策や方針などをネットに日々書き込むこととされているが、実態は、ネット上で他党のネガティブキャンペーンを行う“別働ステマ部隊”だ。J-NSCの会員専用サイト内には掲示板があって、ここに自民党関係者が他党に関する情報を書き込み、ネトサポが拡散する仕組みがあると言われている。

 詳しくは本サイトの過去記事をご覧いただきたいが、ネトサポのかなりの部分はネトウヨやヘイト勢力と重複している。たとえば今回、〈民主党や蓮舫らの仕分けによって、堤防の予算を仕分けし削ったというのは本当ですか??? 民主党は日本国民の生命と財産を守ることより、日本を破壊することに必死なようですね。許せません。日本を貶めることに必死な民主党〉とツイートした、J-NSCを名乗るユーザーのプロフィール欄を見てみるとこんな感じだ。

「左翼撲滅。憲法第9条廃止。自衛隊を国軍へ。原潜と核抑止力保有。交戦権明記。自主憲法制定。日教組解体。外国人参政権(帰化人親子4代参政権)反対。夫婦別姓反対。共同親権と面接交渉の法制化。国家と君が代への忠誠。愛国心教育。打倒中国韓国北朝鮮&左翼労組&民主党。北朝鮮は拉致被害者を返せ!通名禁止。在日特権廃止。J-NSC会員」

 ほかにも、「嫌韓・嫌中!」や「特アには絶対に侵略されたくない!」などとプロフィールに書き込んでいるJ-NSC会員を名乗るアカウントが〈反原発派・左派は、なんの為に原発反対して太陽光を推し進めてたのか?人命に危害が及ばないように反対してたんだろ?〉などというツイートを次々とリツイートしている様が確認できる。

 ようするに、今回の大規模災害を他党のネガキャンに利用するために、自民党がネトサポに指示していた。そういう筋書きがあっても、なんの不思議もないだろう。

 というのも、本サイトで既報のとおり、昨日、安倍首相は、多数の国民の命が危険にさらされているなか、安保法案成立のための“作戦会議”を優先し、夕方頃になってやっと災害に関する関係閣僚会議を開く始末だった。その対応の遅れをカモフラージュしようとしたのかもしれない。

 いずれにせよ、11日午前4時現在も東北地方などで土砂崩れや河川の氾濫の危険性が迫っている。ネトサポのデマに踊らされず、冷静に警戒を続けていくことが必要だろう。
(宮島みつや)

最終更新:2015.09.12 12:06

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