家族問題に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
松本人志は高橋ジョージを擁護!「モラハラは女のワガママ」なのか?
「三船美佳オフィシャルブログ「Mikan」Powered by Ameba」より
今年の年明け早々に沸き起こった、歌手・高橋ジョージとタレント・三船美佳の別居&離婚裁判騒動。長年おしどり夫婦と目されていた2人だが、高橋が三船に「おまえは人間としての価値もない」などと人格を否定するような言葉を長時間浴びせるなどのモラル・ハラスメントがあったと報じられた。
高橋はこれをTwitterで真っ向否定しているが、この裁判を報じるワイドショーやバラエティ番組では、坂上忍が「僕の意見では、年下と付き合ったら、ありますよ、モラハラなんて!」とモラハラを肯定するような発言をしたり、ダウンタウン松本人志が「弱者が強いみたいな世の中になってしまってて。『女は弱者であるから女は強い』みたいな。ぼちぼち逆転してもいいんじゃないか。だっておかしいもん。俺はジョージを擁護するよ」と発言するなど、高橋を擁護する声が男性芸能人やコメンテーターを中心に高まってきている。
というのも三船は、モラハラに関する書籍を証拠として裁判所に提出するのみで、具体的な証拠がないから。しかしこのことこそが、モラハラ問題の難しさを立証しているといえるだろう。今回は、三船が証拠として裁判所に提出した『「モラル・ハラスメント」のすべて 夫の支配から逃れるための実践ガイド』(本田りえ、露木肇子、熊谷早智子/講談社)を参考に、モラハラ問題の問題点を浮き彫りにしていきたい。(本書はモラハラ被害に悩む妻向けに書かれた本なので、以下の原稿もモラハラをする「夫」、被害を受ける「妻」という前提で進める)
そもそもモラハラとは何か。これを正しく答えられる人はどれだけいるだろうか。人格を否定するような発言をする、パートナーの私物を勝手に壊す・捨てる、財布・携帯を取り上げて部屋に閉じ込める……。これらの行為は、モラハラ行為の一つだが、これらは多少の差があれ、夫婦げんかの際に言い過ぎ・やりすぎと思いながらも、高ぶる感情のままに行ってしまう人もいるだろう。では、通常の夫婦げんかとの違いはなんなのだろうか。
本書によると、モラハラの特徴は「支配的であること、一方的であること、そして相手を徹底的に攻撃して屈服させること」だという。たしかに通常の夫婦げんかでは、誤解があれば相手に説明しようとしたり、相手の言い分を聞いたり、互いに譲歩することが基本にある。しかし、モラハラなパートナーの場合、勝ち負けに執着するため、相手が屈するまで長時間にわたり攻め続け、分が悪くなっても論点をずらして自分の主張を押し通し、罰を与えたり土下座を要求することもあるというのだ。
しかもモラハラの場合、夫婦げんかの局面でこういった行為を繰り返すのではなく、日常生活からこのような高圧的な態度。被害者は、常にパートナーの“地雷原”に接触しないように、先回りをして行動し、自分を押し殺して生活する。つまり「相手の精神を傷めつけるようないやがらせを繰り返すことで、相手の自尊心や判断力を徐々に低下させ、行動や思考までもコントロールしようとする」、その欲求の発露としての暴言や理不尽な行為をモラハラと呼ぶのだ。
本書の中では、掃除のあとに風呂のふたが閉まっていなかっただけで「家が壊れそうな勢いでドアを締め」て一晩帰らなかった夫、夕食の品数が少ないと怒り、多く作っても「こんなにたくさん作って誰が食べるんだ、おまえ、金が余ってるのか!」と怒る夫、なんの説明もなしに数週間にもわたり妻を無視する夫など、モラハラの具体例が紹介されている。
傍から見ると異常とも思える例だが、妻自身は自分がモラハラ被害を受けていることにすら気づかないケースも多いのだという。というのも、モラハラ夫の多くの場合は「他人にどう見られるか」を非常に気にするタイプなので、人前では妻を持ち上げ、良い夫を演じることもしばしば。なにか問題が起こった際には論点をすり替えるなど弁が立つタイプなため、他人はもちろん、妻も自身も被害に気付きにくい。
さらにモラハラが表面化しないのは、妻の環境にも問題がある。
モラハラ夫の多くの場合は、妻が友人や実家族との付き合いに制限をかけたり、もしくは付き合いに不機嫌になったりするために、妻は孤立しやすい。そのためにモラハラ被害を受けていることに気づかず、相談できない環境にある。
また、モラハラの引き金になる出来事があまりに些細なことのため、妻は自分が我慢すればいいと思い続けるうちに、「普通」と「異常」の区別がつかなくなっていき、問題に気づきにくくなる。
仮に問題に気づいて周囲に相談しても、「あなたも悪いところがあるんじゃない?」「夫婦は我慢も必要よ」と言われて、自分を責めたり、問題を一人で抱え込むという悪循環が生まれる場合もあるという。
前述のバラエティ番組の発言が裏打ちしているが、他人から見ればモラハラの引き金となる出来事はとてもささやか。しかし、それが日常的に積み重なっているとしたら、被害者である妻には非常に大きなストレスになる。ましてや、無視といった不作為は証拠を取ることが難しく、表面上は穏やかな言葉を使っていても実は夫婦間では脅し文句ということも考えられるため、モラハラを他人に理解してもらうことが非常に難しいことがうかがえる。
細やかに話を聞くこと、専門機関への相談を促すことなど、周囲の人がモラハラ被害の可能性を感じたら取るべき行動はまだあるはずだ。高橋・三船の問題も、マスコミは安易に夫婦間の問題として断罪するのではなく、モラハラの実情や回避術、周囲の人の支援法などを周知してほしいものだ。
(江崎理生)
最終更新:2017.12.19 10:28
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