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朝日新聞の次は『報道ステーション』がやられる!? 古舘降板、番組終了も
テレビ朝日『報道ステーション』HPより
次のターゲットはどうやら『報道ステーション』らしい。朝日新聞バッシングがなかなかおさまらない中で、今度は系列のテレビ朝日の看板番組『報ステ』とキャスターの古舘伊知郎が激しい批判にさらされ、安倍政権からのプレッシャーで番組打ち切り、古舘の降板までが取沙汰される事態になっているのだ。
始まりはその朝日問題、慰安婦報道の検証番組をめぐる批判だった。朝日新聞が吉田証言の撤回を掲載してから一カ月以上も「報ステ」がこの問題にふれなかったことで「逃げているのか」という批判の声が巻き起こり、9月11日に検証番組が放映されると、今度は内容に対して「謝罪していない」「開き直り」と苦情が殺到した。
さらに決定的だったのが川内原発問題だ。慰安婦検証番組放映前日の9月10日、『報ステ』は原子力規制委員会が鹿児島県の川内原発再稼働に事実上のGOを出す判断をした問題を取り上げ、規制委の田中俊一委員長の会見での受け答えを紹介したのだが、その中で、「竜巻のガイド(審査基準)を修正した」ことを「火山のガイド(審査基準)を修正した」と間違って報道した。
また、「(川内原発は)火山活動の影響が及ばない」と判定した問題で、田中委員長は記者の質問に回答していたのに、同じ質問の繰り返しに「答える必要がありますか? なさそうだから、やめておきます」と拒否した部分だけを放映したことが判明。「反原発の方向へもっていこうと恣意的に編集した」というバッシングが巻き起こったのだ。
『報ステ』は翌々日に番組で古舘が謝罪し、9月30日にはテレビ朝日の吉田慎一社長が謝罪したが、問題はそれではおさまらず、BPOの審議対象になった。
しかし、これらのバッシッングは、明らかに過剰反応というべきものだ。まず、慰安婦報道の検証についてはたしかに『報ステ』は放映まで時間がかかったものの、そのぶんかなり丁寧な取材をしており、50分という異例の長さで放映。内容も厳しい朝日批判をしたうえで、吉田証言とは別に慰安婦の広義の強制性があったことを指摘するなど、毅然したものだった。『報ステ』への苦情、批判はイチャモンに近く、右派団体などの組織的攻撃である可能性が高い。
また、川内原発問題をめぐる報道で「竜巻」を「火山」に取り違えたのはよくあるイージーミス。田中委員長発言の編集についても、「報ステ」記者が「専門家が『わからない』といっている火山リスクを規制委が『ない』とするのはおかしい」と質問しているのに、田中委員長が官僚的な答弁しかしないため、業を煮やした記者が角度を変えて質問を繰り返したところ、田中委員長が「答える必要ありますか」と打ち切ったもの。編集で強調したとはいえ、田中委員長が記者の追及にきちんと答えなかったのは事実であり、趣旨を歪めたわけではない。
しかも、この2週間後の9月27日には御嶽山が突然噴火し、むしろ火山リスクを問題にしていた『報ステ』の主張の正しさが証明された形になった。川内原発から160キロという距離に、御嶽山以上に頻繁に噴火を繰り返す桜島があり、桜島はカルデラ噴火が起こした場合は川内原発も壊滅的な被害にあることが予想されているのだ。どう考えても社長の謝罪やBPO審議の対象になるような話ではない。にもかかわらず、ここまでの事態になったのは、田中委員長率いる原子力規制委員会が強硬に抗議してきたためだ。
「田中委員長は安倍首相や官邸とも近いため、テレビ朝日としては、謝罪を拒否したら、朝日新聞の二の舞になるという恐怖があった」(テレビ朝日関係者)
原子力規制委・委員長の田中氏はこれまで内閣府原子力委員代理や日本原子力学会会長をつとめるなど「原子力ムラ」の大物だった人物。第二次安倍内閣発足以後は、官邸や電力会社とタッグを組んで、原発再稼働に向けた動きを急加速してきた。今回の田中委員長の強硬姿勢には、こうした“原子力ムラ”の意向も働いているのではないか、といわれている。
「『報ステ』は今も原発の危険性を報道し続けている数少ない番組で、規制委員会や電力会社、官邸にとってはうっとうしい存在だった。そこに、この問題が起きたので、朝日と同様、一気に攻め込んでやろうと考えたのではないでしょうか」(政治部記者)
しかも、この問題を機に、安倍政権は『報ステ』つぶしに本格的に動きはじめたようだ。もともと、自民党は前身の『ニュースステーション』時代から、この番組を敵視しており、2003年に安倍が自民党幹事長に就任すると、「民主党の肩を持っている、偏向報道だ」と抗議し、自民党の出演を拒否するなど、徹底的に圧力を加えていった経緯がある。
「『報ステ』になってからも同様で、自民党はことあるごとにテレ朝側に『偏向だ』と抗議しています。安倍首相は古舘キャスターのことも相当嫌いらしく、出演した際には古舘キャスターの批判にムキになって反論するということもありました。ある意味、安倍首相にとって『報ステ』つぶしは朝日つぶしに次ぐ悲願のようなものだった。権力を盤石にした今、その動きを本格化させる腹づもりのようです。第2次内閣で高市(早苗)さんを放送局を管轄する総務相にもってきたのもその一環ではないかといわれています」(前出・政治部記者)
実際、9月17日には在京キー局社長が高市総務相のところに挨拶に訪れたが、この際、高市大臣は吉田社長にテレ朝の報道姿勢についてかなり皮肉をいったといわれている。
『報ステ』と古舘に対しては、テレ朝内部からもプレッシャーがかかっているという。プレッシャーの主は早河洋会長。早河会長はもともと『ニュースステーション』のプロデューサーで、『報道ステーション』に古舘を抜擢した当事者。だが、本サイトでも報じたように、早河氏は最近、幻冬舎・見城徹社長の仲介で安倍首相と急接近しており、自局の看板ニュース番組の安倍批判、原発批判の路線転換を迫っているのだという。
ところが、古舘と現場はこれに抵抗。今年4月、「報ステ」10周年パーティーで、挨拶に立った古舘はこんな挨拶をしている。
「早河社長から好きなようにやってくれ。何の制約もないからと言われて始めたんですが、いざスタートしてみると制約だらけ。今では原発の“ゲ”も言えない」
そこで、浮上してきたのが、来春の番組全面改変と古舘降板説というわけだ。少し前、「週刊実話」がこの問題についての詳しい記事を掲載し、早河会長が古舘の後がまに宮根誠司を抜擢するという噂を紹介していた。たしかに、早河会長と安倍首相の仲をとりもった見城氏はバーニングプロ・周防郁雄社長の右腕的存在で、宮根はその周防社長の大のお気に入りといわれている。ありえない話ではないだろう。
また、今年7月、古舘が「AERA」のインタビューに応じて「テレビはウソしか伝えていない」などの過激な発言をしていたことを、本サイトで紹介したが、もしかしたら、これも古舘の覚悟の現れだったのかもしれない。
朝日新聞に続いて、『報道ステーション』までが……。このままいくと、権力に批判的な主張をするメディアはすべて消えさってしまうかもしれない。安倍政権の言論包囲網を止める術はないのか。
(エンジョウトオル)
最終更新:2015.01.19 05:02
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