カンヌ受賞でもネトウヨは是枝裕和監督と『万引き家族』が大嫌い! 安倍首相は無視、百田尚樹と高須克弥はバッシング

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ネトウヨなどから卑劣な攻撃を受ける『万引き家族』(公式サイトより)


 第71回カンヌ国際映画祭で最高賞となるパルムドールを受賞し、世界中から称賛を集めている是枝裕和監督『万引き家族』。だが、この快挙に、ふだん「日本スゴイ」話が大好物の人たちが、いつもとまったく違う反応を見せている。

 その筆頭が総理大臣の安倍晋三だ。是枝監督の受賞は日本人監督としては今村昌平監督『うなぎ』以来21年ぶりなのだから、普通なら何かコメントを出しそうなものだが、一切無視。フランスの「フィガロ」紙にも「日本人が国際的な賞を受賞したら必ず賛辞を送るはずの安倍首相が沈黙を保ったまま」と皮肉られる始末だった。

 これはもちろん、安倍首相が『スターウォーズ』シリーズと山崎貴監督の映画にしか興味がないからではなく、是枝監督が安倍政権の姿勢を何度か批判しているからだろう。

 まったくその狭量さには呆れるが、もっと頭を抱えたくなるのが、その安倍首相の応援団、ネトウヨたちの反応だ。彼らは無視どころか、カンヌ受賞が決まるや、監督や受賞作『万引き家族』に対して一斉に攻撃を始めたのである。

 たとえば、百田尚樹氏はDHCテレビが製作する『真相深入り!虎ノ門ニュース』(5月22日放送分)にて、番組の放送が終了する直前、無理やりねじ込むようにして、このようにまくしたてた。

「あとひとつだけ言いたい。是枝監督がね、映画撮って、カンヌ取りましたけど、なんか、向こうで言うたらしいね、日本はアジアに謝らなアカンとかってね。何を言うとんねん。外国にまでしょうもないことを言いに行くな、ホンマにね。村上春樹かホンマ、腹立つ。映画と関係ないやないか」

 たしかに、是枝監督は「共同体文化が崩壊して家族が崩壊している。多様性を受け入れるほど成熟しておらず、ますます地域主義に傾倒していって、残ったのは国粋主義だけだった。日本が歴史を認めない根っこがここにある。アジア近隣諸国に申し訳ない気持ちだ。日本もドイツのように謝らなければならない。だが、同じ政権がずっと執権することによって私たちは多くの希望を失っている」と語り、日本社会の保守化や、それにともなって巻き起こった歴史修正主義の動きに対して警鐘を鳴らしていた。

 しかし、これのどこが「しょうもないこと」なのか。今の日本で共同体文化の裏打ちのないペラペラの国粋主義しかが残っていないことは、百田氏たちネトウヨの跋扈とグロテスクな発言が証明しているではないか。

百田尚樹と高須克弥が是枝裕和『万引き家族』に的外れで無教養な批判

 しかも、この発言があったのは、2018年5月17日付中央日報に掲載されたインタビューで、パルムドールを受賞したカンヌ国際映画祭の壇上でのスピーチではない。ちなみに、パルムドールを受賞した壇上で是枝監督は、「映画」という芸術が、国際平和や、価値観の違う人々の相互理解をもたらしてくれる一助となることを願った、このようなスピーチを行っている。

「さすがに足が震えます。とてもこの場にいられることが幸せです。そしてこの映画祭にいつも参加させて頂いて思いますが、映画を作り続けていく勇気をもらえます。そして、対立している人と人、隔てられている世界を映画が繋ぐ力を持つのではないかと希望を感じます。頂いたその勇気と希望をまずは一足先に日本にもどったスタッフとキャストに分かち合いたいです。作品が選ばれたにも関わらずここに参加できなかった人たちとも分かち合いたいですし、これから映画を作りここを目指す若い映画の作り手たちとも分かち合いたいと思います。ありがとうございます」(映画『万引き家族』公式ツイッターより)

 この言葉を百田氏がどう受け止めるのか、聞いてみたいものだが、バッシングしていたのは百田氏だけではない。

 ツイッターでは、『万引き家族』という作品に対して、ネトウヨと思しき連中から「日本人は万引きで生計を立てたりしない」「変なイメージを外国に植え付けるな」「万引きのやり方を教えるなんて犯罪教唆だ。R指定にしろ」「『万引き家族』のカンヌ受賞は世界に恥をさらすものだ」といった内容の批判が多数投稿された。

〈日本人は子供に万引きなど教えません。万引きしたらこっぴどく叱ります〉
〈万引き家族みたいな家族が現実に日本にいる、いられるみたいなのが拡散されているようで、実はとっても嫌です。カンヌに行くことが、反日にすら感じてます〉

 その典型が、高須クリニック院長の高須克弥氏によるこのツイートだろう。

〈万引き家族で日本人のイメージを作られるのは嫌です。日本人は勤勉で正直で礼儀正しいです〉

 彼らはこれまで、多くの映画が社会や人間が抱えている負の部分を表現し、高い評価を得てきたことを知らないのか。それとも、『永遠のゼロ』や日本会議オススメの『海難1890』みたいな国策映画もどきだけが映画だと思っているのか。

『万引き家族』が描いたのは格差が広がる日本の現実だ

 その文化的教養のなさには呆れ果てるが、加えて腹立たしいのは、連中が明らかに映画を見ずにこんないちゃもんをつけていることだ。『万引き家族』の柴田家は怠惰だから、祖母・初枝(樹木希林)の年金を当てにしたり、年金だけでは足りない不足分を万引きで補うような生活になっているわけではない。

 実際、父・治(リリー・フランキー)は日雇い派遣に、母・信代(安藤サクラ)はクリーニングの仕事をしており、きちんと働いている。ただ、不安定な雇用を余儀なくされているので、なにか不測の事態が起こると、真っ逆さまに貧困へ転落してしまうのだ。

 たとえば、治は仕事中にケガをしても労災が出ないし、ケガで仕事を休まざるを得ない間の給与の保証もないため困り果てる描写が出てくるし、また、信代も、働いている会社の経営が傾くと、真っ先にリストラの対象とされてしまうくだりがある。

 高須氏は〈万引き家族で日本人のイメージを作られるのは嫌です〉と述べていたが、『万引き家族』で描かれている家庭は、言うまでもなく、いまの日本の現実である。

 事実、是枝監督は現実の日本社会の投影として『万引き家族』の家庭をつくっている。前出・中央日報のインタビューで是枝監督はこのように話している。

「日本は経済不況で階層間の両極化が進んだ。政府は貧困層を助ける代わりに失敗者として烙印を押し、貧困を個人の責任として処理している。映画の中の家族がその代表的な例だ」

 是枝監督が『万引き家族』の企画を思いついたのも、現実に日本の社会で起きていたことに触発されたからだ。前出・中央日報のインタビューで是枝監督は、「数年前に、日本では亡くなった親の年金を受け取るために死亡届を出さない詐欺事件が社会的に大きな怒りを買った。はるかに深刻な犯罪も多いのに、人々はなぜこのような軽犯罪にそこまで怒ったのか、深く考えることになった」と、『万引き家族』のインスピレーション源を語っているが、そういう意味で、『万引き家族』には、是枝監督がいま日本社会に対して感じている違和感、問題意識が凝縮されているとも言える。

 格差の激化、共同体や家族の崩壊、機能しないセーフティネットによる貧困層の増大、疎外される貧困層や弱者、自己責任論による弱者バッシングの高まり。そういったものが、一人一人の人間に、家族になにをもたらしているのか。『万引き家族』は、その問いを観客に突きつける映画だ。

ケン・ローチ監督『わたしは、ダニエル・ブレイク』も英国でバッシング

 にもかかわらず、「変なイメージを外国に植え付けるな」「万引きのやり方を教えるなんて犯罪教唆だ」「『万引き家族』のカンヌ受賞は恥さらし」という頭の悪すぎるバッシング。実はこうした状況について、ミニシアター系映画館・渋谷アップリンクなどを運営するアップリンク代表の浅井隆氏が、こんな興味深いツイートをしていた。

〈『万引き家族』パルムドール受賞おめでとう。日本人ということで様々なところでおめでとうと言われる。ロンドン在住の友人曰く「日本では反日映画とネトウヨに言われているみたいだね、ケン・ローチが受賞したときのイギリスも同じで嘘の話をでっち上げて恥さらしと、右側が騒いでいた」と〉

 これは、2年前のカンヌ国際映画祭でケン・ローチ監督作品『わたしは、ダニエル・ブレイク』がパルムドールを受賞したときに英国で巻き起こったバッシングのことだ。

 『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、心臓に疾患を抱えているため、長年続けてきた大工の仕事を辞めるように医者から言われているダニエル・ブレイ
クという中年男が主人公。仕事をすることができない以上、福祉の助けが必要なのだが、そのタイミングで行政からは「就労可能」であるとして打ち切られてしまう。しかし、健康上の理由で働きたくても働けないため、事情を説明してなんとか支援を回復してもらえるよう行政にかけあうものの、役所は典型的なお役所対応に終始して答えを徹底的に先延ばし。結果的に、ダニエルは悲劇的な運命をたどることになってしまう──。

 これは、保守党政権下でなされた福祉政策見直しの結果、現実に起きていたことを物語にしたものだ。仕事をすることができないのにも関わらず「就労可能」であるとして支援を打ち切られて苦しむダニエル・ブレイクのような人がたくさん生まれていた。そのような状況が用意された背景は日本と同じ。「弱者切り捨て」にひた走る政府と、福祉のおかげでなんとか生きていくことができる人々に対し「貧乏なのはお前のせい。国に頼るな」と自己責任論で叩く社会が生み出した状況である。

 新自由主義政策が押し進められていった結果、貧困層に起きている過酷な現実を描く映画、という点で、『万引き家族』と『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、共通したテーマを扱った映画といえる。しかし、日本と英国、貧困層の間で現実に起きている似たような苦しみに着想を得てつくられた二本の映画が、それぞれの国で同じようなバッシングを受けているとは……。浅薄でグロテスクなネトウヨ思想の跋扈が日本だけの問題ではないことを再認識して、改めて暗澹とした気分に襲われるが、しかし、一方では希望もある。

 それは、自分たちが生きている国や社会の負の部分を真正面から逃げずに見つめたふたつの作品が、世界で高い評価を受け、パルムドールという世界最高峰の賞を受賞したという事実だ。このことは、映画界の知性がまだ死んではいないことを示している。

 ケン・ローチ監督は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』日本公開時のオフィシャルインタビューのなかで、「日本にも同じ状況が見られるかもしれません。もしそうであれば、私たちは変化を求めるべきです。でも今しばらくは、ケイティ、ダニエルやその他の登場人物たちと知り合いになってください」(ウェブサイト「Real Sound映画部」より)と語っていた。

 また、是枝監督は先に引いたカンヌ交際映画祭でのスピーチで「対立している人と人、隔てられている世界を映画が繋ぐ力を持つのではないかと希望を感じます」と語った。

 現実を見つめ、手を差し伸べること──。二人のパルムドール受賞監督は、映画を通じて観客にそのようなメッセージを送っている。その思いが多くの人たちに届くことを切に願う。

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