リテラの新年特別企画●フェイクニュース大賞(後編)

泉放送制作、前川出会い系バー、安倍の捏造も…リテラが選ぶ2017フェイクニュース大賞、いよいよ大賞発表!

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首相官邸ホームページより


 2017年に流されたトンデモフェイクニュースを改めての検証付きでお届けしているリテラフェイクニュース大賞! 前編ではまず4つの部門賞を発表したが、後編ではさらに4つの部門賞、そしていよいよフェイクニュース大賞を発表する。2017年、最も悪辣でトンデモだったニュースはなんだ!?


★バカ丸出し拡散賞
「泉放送制作が全テレビ局を牛耳って反安倍報道を仕掛けている」のトンデモデマを拡散した自民党議員

 森友・加計学園問題で紛糾していた6月、悪質なネトウヨ系フェイクニュースをばらまくことで知られるウェブサイト「netgeek」が、「日テレ・フジ・TBS・テレ朝の16番組以上を1つの制作会社が担当して偏向報道やりたい放題。日本は乗っ取られた」なる記事を出した。内容は、泉制作放送という番組制作会社が、テレビ朝日の『羽鳥慎一モーニングショー』やTBSの『サンデーモーニング』など民放各局の情報番組・ワイドショーを〈実質的に乗っ取〉り、偏向報道を繰り返して〈国民を洗脳〉しているというものだ。
 泉制作放送は実在する会社だが、いち会社がテレビ局を乗っ取ることなど不可能であり、一見して荒唐無稽なデマであることは自明。このデマは安倍政権の支持率低下を受けた2ちゃんねるの書き込みに端を発しネトウヨ系まとめサイトなどを通じてネットで急速的に広がっていたもので、Netgeekの記事もそれをそのまま記事にしたものだが、デマのなかには「泉放送制作は金富隆という在日プロデューサーが仕切っており反日工作として仕掛けている」なるヘイト攻撃まであった。
 本サイトでは、このクソのようなデマを徹底検証。泉放送制作がたんに、各番組にディレクターやアシスタントディレクターなどを1人から数人、人材派遣しているにすぎないこと、金富氏は泉放送制作の社員ではなくTBS社員で、在日でもないことなどを指摘し、こうしたネトウヨの投稿がまったくの事実無根であると断じた。
 しかし、この悪質なデマを自民党の長尾敬衆院議員が7月12日、netgeek netgeekによるフェイクニュースのURLを貼りつけながら〈拡散!情報戦です!〉とツイート。国会議員でありながら、虚偽かつ悪質な「泉制作放送デマ」を拡散したのである。長尾議員といえば“安倍親衛隊”として知られ、2015年の自民若手会合で「(沖縄メディアは)左翼勢力に乗っ取られている」などと言い放ったほか、沖縄の新基地建設に反対する市民活動を〈反社会的行動〉と評するなど筋金入りの極右議員。
 長尾議員は8月、拡散を呼び掛けたツイートを取り消し、「事実ではなかった」とデマであることを認め、謝罪していたことを共同通信が伝えた。netgeekも本サイトの検証報道後、該当記事を削除している。しかし、普通に考えればすぐフェイクだとバレるような低俗なデマを自民党の国会議員が拡散したという事実は忘れてはならない。

★歴史修正賞
「慰安婦像のモデルは関係ない事故の被害者少女」の官邸デマに乗っかった「週刊文春」

 日本軍による慰安婦問題を象徴する少女像について、安倍政権が敵意をむき出しにしているのは周知の通り。保守系メディアは、少女像設置問題をあれやこれやと批判し、フェイクニュースを交えながら、韓国に対する憎悪と慰安婦問題自体をなかったことにしようとする歴史修正主義を扇動しまくっている。
 たとえば、「週刊文春」(文藝春秋)12月7日号の特集記事「『慰安婦像』の正体を暴く!」だ。記事の中で文春は、2011年にソウル日本大使館前に建てられた少女像について、「あの慰安婦像はもともと、慰安婦とは全く関係ない、事故で亡くなった少女をモデルにした像を転用したものだというネット情報です」なる官邸関係者のコメントを掲載。そのうえで、ネットに少女像のモデルは2002年に米軍の装甲車に轢かれて死亡した二人の女子中学生のうちのひとり沈美善(シム・ミソン)さんとする情報が流布しているとし、極右月刊誌「WiLL」10月号の「『慰安婦像』のモデルは米軍犠牲者の少女だった」(田中英道)を引用。文春記者が「WiLL」の記事を片手にミソンさんの父親を直撃し、「本当に美善が少女像のモデルなら不愉快です」なるコメントを掲載した(が、結局は裏どりできていないので空振り取材である)。
 ようするに、文春も「WiLL」も少女像とミソンさんの写真を掲載して「慰安婦像のモデルは別事件からの転用だった!」と主張しているわけだが、これは完全なデマである。本サイトでは、少女像の制作者夫妻がインタビューで語った制作の経緯を紹介しながら、たしかに夫妻が米軍装甲車事件で亡くなった中学生を追悼する作品も発表しているが、その作品の姿形は少女像とは似ても似つかないものであることを画像つきで指摘した。ちなみに、産経新聞の元ソウル支局長である加藤達也・社会部編集委員も今年行われた講演の中で「当時の記録を調べましたところ、米軍装甲車の女子中学生轢過事件の後にできた像と、慰安婦の像は別物です」と断言している。
 天下の文春がこんなネトウヨデマを報じたのもクラクラしてくるが、本当に恐ろしいのは、このネタを文春に吹聴したのが「官邸関係者」だということ。ようするに同誌が抱える“官邸マター記事”の腐臭がプンプンしてくるが、これは安倍官邸がメディアを使って、ネトウヨばりに頭の悪い情報操作を仕掛けているということの証左でもあるのだ。

★偏向妄想賞
「加計問題は朝日とNHKが共謀した捏造」陰謀論を真顔で語る安倍御用評論家・小川榮太郎センセイ

 自民党が5000冊近い数の大量購入をしていたことが発覚した『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)なる本。選挙期間中に発売された同書の著者・小川榮太郎氏は『約束の日』(幻冬舎)という安倍ヨイショ本でデビューした自称文芸評論家で、報道圧力団体「放送法遵守を求める視聴者の会」の創設メンバーである。
 内容は、森友問題や加計問題でスクープを連発していた朝日新聞を標的に、〈「冤罪事件」を計画し、実行した「主犯」〉〈「安倍叩き」のみを目的として、疑惑を「創作」した〉と攻撃するものだが、記述の具体的な根拠はほとんどなく、小川氏の陰謀論的分析が書きなぐられているだけ。
 たとえば、例の「官邸の最高レベルが言っていること」等が書かれた文書をNHK(5月16日『ニュースチェック11』)と朝日(5月17日付朝刊)がスクープしたことについて、小川氏は〈ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に会し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することを共謀したとみる他ないのではあるまいか〉などと、“朝日とNHKの共謀”と結論づけていた。
 まったくのデタラメである。そもそも「夜11時のスクープと翌朝朝刊のスクープが偶然にも重なることがあるはずがない」という前提が間違っている。朝刊の最終版締め切りは午前1時から1時30分。夜11時台のテレビのニュースが出た後、新聞が翌日朝刊でそれを後追いしたり、記事を修正したりなんてことはしょっちゅう起きている。実際、このときも朝日が一連の「総理のご意向」文書を報じているのは最終版のみ。朝日はNHKが文書の存在を報道したのを知って、入手していた別の文書を報道したにすぎない。
 こんな感じで荒唐無稽な陰謀論が次から次に展開される同書だが、国会でも「朝日が加計問題を捏造した」なる話を持ち出すトンデモ議員(維新・足立康史など)が出てくるなど、影響は小さくなかった。あの“弱腰朝日”もさすがに堪忍袋の緒が切れたのか、同書の虚偽を指摘したうえで小川氏と版元に謝罪と訂正、損害賠償を求めた。
 しかし小川氏は意に介さず、〈朝日新聞と小川榮太郎──どちらが正しいかが問題なのではありません。最終的な結論が「捏造」と出ようと、貴紙の「表現の自由の範疇」だと出ようと、私は構わない〉〈「月刊Hanada」2月号〉などと身も蓋もない開き直りをして謝罪・訂正を拒否。結局、先日朝日は名誉毀損で提訴したのである。
 小川氏にかぎらず、ネトウヨや安倍応援団全体に言えることだが、連中は政権に都合の悪い報道を「フェイクニュース」とレッテル貼りをし、攻撃する。だが、その主張の根拠じたいが、事実に基づかない妄想、陰謀論、ネットのデマなのだ。小川氏の虚説が司法の場で徹底追及されることを期待したい。

★世界的フェイク賞
「共謀罪批判の特別報告は国連の総意じゃないと言っていた」国連トップの発言を捏造した安倍首相

 共謀罪の国会審議中の5月、国連人権理事会の特別報告者・ジョセフ・ケナタッチ氏が法案に懸念を表明する公式書簡を政府に送ったことに対し、安倍首相は国会でこう述べた。
「この点について、G7サミットで懇談したアントニオ・グテレス国連事務総長も『人権理事会の特別報告者は、国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない』旨、述べていました」
 新聞各紙なども、外務省の発表そのままに「ケナタッチ氏の書簡は必ずしも国連の総意ではないとグテレス事務総長が語った」などと報じた。また、慰安婦問題にかんする日韓合意についても〈グテレス氏は合意に「賛意」と「歓迎」を表明した〉(産経新聞28日付)などと伝えていた。
 が、これはウソだ。事実、国連が5月28日付でプレスリリースにはこう書かれている。
〈シチリアで行われた会談のなかで、事務総長と安倍首相はいわゆる「慰安婦」問題について話し合った。事務総長は日本と韓国のあいだで解決されるべき問題だということに同意した。事務総長は具体的な合意内容については言明せず、原則としてこの問題の解決策の性質と内容は二国に任されるべきと話した。特別報告者による報告書に関し、特別報告者は人権委員会に直接報告する、独立した専門家(experts that are independent and report directly to the Human Rights Council)であると語った〉
 ようするに、グテレス事務総長は日韓合意に「賛意」や「歓迎」など見せず、実際には「具体的な合意内容については言明しなかった」。また、特別報告者についても「国連の総意ではない」という文言はなく、“independent”すなわち憲法でいう「裁判官の独立」と同じ意味で、何者にも干渉されない存在であることを説明していただけだった。
 そもそも、リリース内ではケナタッチ氏の名前も共謀罪やテロ等準備罪、組織犯罪対策という言葉も出てこず、普通に読むと特別報告者の位置づけに関する一般論、あるいは前段の「慰安婦問題」における特別報告者の話の可能性もある。
 つまり、安倍首相と政府は国連事務総長の発言を歪めたうえ、自分たちの言葉を勝手に足してマスコミに流し、共謀罪の正当化に利用しようとしたのである。にもかかわらず、国内マスコミは外務省発表や「日本政府の説明」を検証せずに断定的に報道したのだ。言い換えれば官製フェイクニュースの拡散に大きく加担したのである。欧米メディアでは、ここまで政府べったりの報道にはならないだろう。政府による情報操作に対する国内マスコミの脆弱さを露呈させた一件だった。

★2017年「フェイクニュース」大賞
官邸の謀略にまんま乗っかり「前川前事務次官、出会い系バー通い」と報じた読売新聞

 やはり、大賞はこれをおいてないだろう。加計学園問題で「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」と書かれた内部文書が飛び出た5月、文科省の前事務方トップ・前川喜平氏の実名告発の動きがあるなか、読売新聞5月22日付で報じた「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」の記事だ。
 年のため振り返っておくと、記事にある事実は、「歌舞伎町の出会い系バーに、頻繁に出入りしていたことが関係者の取材でわかった」ということのみ。そのあとは、〈「割り切り」と称して、売春や援助交際を男性に持ちかけることが多い〉など示唆し、前川前次官が〈女性と連れ立って店外に出たこともあった〉などと書いているが、買春を裏付ける根拠らしいものは何もなし。ところが読売は、ご丁寧に〈不適切な行動に対し、批判が上がりそうだ〉と誘導までしていた。はっきり言って、三流週刊誌レベルのやり方だ。
 実際、この“買春疑惑”を週刊誌やテレビも取材したが、結局、前川氏が買春を行なっていたという事実は一切浮び上らなかった。
 むしろ、出会い系バーで前川氏と出会った女性は、「週刊文春」での告白で「口説かれたこともないし、手を繋いだことすらない。私が紹介した友人とも絶対ない」と買春行為を全面否定。『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ)が直撃した出会い系バーの店員も「遊びではなく、見学に来ているように見えた」「前のめりになってるほかのお客さんとは、ちょっと違った」と証言。また、「FLASH」(光文社)が取材した前川氏から同席希望を受け店外で食事をしたという女性も、食事のあとに売春をほのめかすと「僕はないなあ」と言われ、5千円をもらって「(時間が)遅いけれど気をつけてね」と言われたと話している。
 当然だろう。本サイトでも報じてきたとおり、この読売の記事は、前川氏の動きを察知した官邸が読売にリークして書かせたものだった。このときすでに前川氏はNHKや民放のインタビューに応じていたのだが、その告発をつぶすために、読売ならまず書かない実話誌のような下半身スキャンダル記事を出してきたのだ。その不自然さは複数の読売OBからも指摘された。たとえば、元読売新聞社会部記者の大谷昭宏氏はこのように喝破している。
「同じニュースでも東京、大阪、西部それぞれの本社が編集するので、見出しや記事の大きさは異なる。でも、あの記事はすべて同じ。これは依頼が断れない記事を指す『ワケアリ』の特徴です。官邸との癒着を読売は否定するだろうが、内部にいた人間なら誰でもわかる」(「AERA」17年6月12日/朝日新聞出版)
 また、本サイトで伝えたように、実は読売記事が出た直後から1日後にかけての官邸記者クラブのオフレコ取材では、安倍首相側近の官邸幹部が「官邸が流したのか」という記者の質問にこう言い放っていたという。
「読売の記事にはふたつの警告の意味がある。ひとつは、こんな人物の言い分に乗っかったら恥をかくぞというマスコミへの警告、もうひとつは、これ以上、しゃべったらもっとひどい目にあうぞ、という当人への警告だ」
 政権に不都合な人物は、謀略のフェイクニュースをあてがわれて“始末”されてしまう。とうとう日本は、そんな独裁謀略国家のような体制になってしまったのだ。
……………………………………

 いかがだっただろうか。ご覧の通り、「フェイクニュース」は、単なる誤報や勘違いから生まれるものではない。情報それ自体に、政治権力などによる特定の意図が込められており、またそれを報道媒体が批判的に検証せず、丸乗りすることで拡散されていくのだ。
 リテラでは2018年も、こうしたデマや謀略報道を徹底検証し、その深層や裏側を積極的に報じていく所存である。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます!

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