大林宣彦監督が生前、語っていた反戦の思いと安倍政権下の日本への危機感 「みんながしっかり怯えてほしい。大変なことになってきている」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
大林宣彦監督が生前、語っていた反戦の思いと安倍政権下の日本への危機感 「みんながしっかり怯えてほしい。大変なことになってきている」の画像1
戦争と平和をテーマにすえるようになったのかについて語っていた大林監督(ドキュメンタリー『大林宣彦の遺言』(2017年9月2日放送/NHK Eテレ)


 大林宣彦監督が、肺がんのため4月10日夜に82歳で亡くなった。新型コロナの影響で映画館が公開延期となったが、この日は、病魔と闘いながらつくりあげた最新作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』の公開予定日だった。

 大林監督といえば、『時をかける少女』などの“尾道三部作”で知られているが、近年は、反戦と平和への思いを強く訴えるようになった。

 今回の新作『海辺の映画館』も久しぶりに尾道に舞台にしたエンターテインメント作品であり、同時に、戦争の歴史を無声映画、トーキー、アクション、ミュージカルといった様々な映画表現で展開していく、大林監督の反戦と映画への思いがつまった作品となっているという。

 それにしても、大林監督はなぜ、戦争と平和をテーマにすえるようになったのか。それは2017年、前作『花筐/HANAGATAMI』が公開される際に、大林監督自身がその理由を語っていた。

『花筐/HANAGATAMI』は、檀一雄原作の、日米開戦直前を舞台にした青春群像劇で、やはり戦争と平和の問題が深く掘り下げられている作品だ。

 この『花筐/HANAGATAMI』の映画化は42年前に頓挫していた企画を復活させたものなのだが、大林監督はその理由について、ドキュメンタリー『青春は戦争の消耗品ではない 映画作家 大林宣彦の遺言』(2017年9月2日放送/NHK Eテレ)のなかでこのように語っていた。

「40年前はやっぱり僕は文学青年だから、放蕩無頼の檀さんのね、青春文学というものに憧れていた部分もあるし。あれから40年経つと、また日本がね、戦争ができる国になったいまになると、あの痛切な気持ちね、あの放蕩無頼っていうのは、“自分の命ぐらいは自由にさせてくれよ”と、戦争に行って、殺され、消耗品になる、そういう戦争を青春として過ごした人たちの無念の気持ちが、実はこれからまたやって来ると、(そう)いうときにね、ようやく、この『花筐/HANAGATAMI』をいま撮るべしという声が聞こえてきたんでしょうね」

 大林監督は、安倍政権下の日本の状況を見て、『花筐/HANAGATAMI』の時代に近づいているという危機感を強く抱くようになったと語ったのだ。

 なかでも大林監督が危惧していたのが、戦争によって若い人たちの命が奪われることになるのではないか、ということだった。それが、『花筐/HANAGATAMI』という映画のなかでキーフレーズとなっていた「青春は戦争の消耗品ではない」という言葉だった

 大林監督がこの言葉を使うにあたりイメージした人物がいる。それは、大林監督の父・義彦氏だ。義彦氏は医大の外科教室で研究をしていたが、1939年、30歳のときに戦場へ向かうことになる。大林監督は父が復員した後も戦場の思い出を聞くことはなかったというが、軍医として中国、マレー半島からジャワ島へと赴いた先で見たものが何であったかは想像するにあまりある。

 父は晩年、戦場で起きたことを手記に残しており、最近その手記が見つかった。前述ドキュメンタリーでは、1945年10月29日、復員して尾道に帰ってきた日のことがこのように綴られていたと紹介している。

〈やっと戦時生活も終わった。これで自分で考え、自分の意思で生きていける。本当の人生がまた帰って来た〉

 妻と子を日本に残し、研究者としての仕事も中断させられ、6年間もの歳月を軍医としての生活に費やさざるを得なかった父の無念の思いを、ドキュメンタリーのなかで大林監督はこのように語る。

「父のことを考えたら、人生丸ごと消耗品だったんだよね。精神の自由もなかった。なんという人生だろうね。でも、そのなかをきっちり青春があって、生きた。親父たちも自らを納得させていったんだろうと」

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

大林宣彦監督が生前、語っていた反戦の思いと安倍政権下の日本への危機感 「みんながしっかり怯えてほしい。大変なことになってきている」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。伊勢崎馨大林宣彦安倍政権海辺の映画館─キネマの玉手箱花筐/HANAGATAMIの記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

1 小林製薬「紅麹」で問題視される「機能性表示食品制度」は安倍案件!
2 櫻井よしこの朝日攻撃の「捏造」が法廷で
3 東山紀之が“反ヘイト本”を出版
4 乙武洋匡が不倫旅行、5人の女性と関係
5 安倍派裏金で読売新聞「非公認以上の重い処分」報道の違和感!
6 久米宏が終了決定のTBSラジオで田中真紀子と
7 セカオワFukaseのいじめ発言
8 葵つかさが「松潤とは終わった」と
9 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
10 コロナ収束前の「Go To」予算1兆7千億円計上に非難殺到も田崎史郎は…
11 東山紀之、朝鮮学校無償化に言及
12 五輪延期で発覚!安倍のお友だち「アパホテル」に組織委用の部屋
13 石田純一がコロナバッシングで「組織に狙われている」と語った理由!
14 御用新聞・産経が安倍首相に食い下がった毎日記者を攻撃する露骨ぶり
15 安倍は辞任報道でもお友達優遇! 前回のTBS時代の山口敬之が
16 世界的建築家の「カジノありきの万博」批判に大阪市長が大ウソ反論
17 小泉進次郎が「靖国参拝」したのは父親と同じ右派支持狙いの戦略か
18 総裁選で自民党がまた新聞社に圧力文書!
19 松本人志『ドキュメンタル』のセクハラ
20 和泉・大坪の安倍側近“不倫コンビ”の新疑惑を政府機関の理事長が告発

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄