安倍政権の闇を描いた映画『新聞記者』は日本アカデミー賞をとれるか? 松坂桃李が作品への思いと「忖度」の空気を玉川徹に告白

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松坂桃李「自分の目で自分の判断で選択できる意思を持とうよ」

 実際、公開前後、『新聞記者』の宣伝活動には大きな障害があった。『新聞記者』がテレビのプロモーションをことごとく拒否されているという問題だ。周知のように、人気俳優が出演する映画が公開される際は、その俳優たちがテレビのバラエティに出演し、映画の宣伝を行うのがパターンになっている。しかし、テレビで『新聞記者』が取り上げられることはまったくなかった。
松坂自身は公開前後にバラエティ番組に出演していたが、同時期に公開された別の映画の宣伝はしても『新聞記者』について触れることはなかった。
「宣伝はほとんどできなかった」という今回の松坂の発言を聞くと、やはりテレビでは、政権忖度による自粛があったということだろう。

 それにしても、今回の『モーニングショー』インタビューで改めて感じたのは、松坂桃李の強さと聡明さだ。

『新聞記者』が「日刊スポーツ映画大賞」作品賞受賞の壇上でも、松坂は、「『これが公開されたら、僕らいないかもね』とプロデューサーに言われていました。無事公開できればいいなという思いが強かった」と語っており、この作品のリスクを覚悟して出演していたことは明らかだった。

 しかし、松坂は今回の玉川のインタビューで、『新聞記者』に出演した理由として、こう語っていたのだ。

「この作品を通してちゃんと伝えたいなという思いがあったので出ました。まわりの情報などに惑わされずにちゃんと自分の目で自分の判断で選択できる意思を持とうよっていうメッセージ性を込めた作品なので」

 権力者から直接的な命令はなくともその意向を忖度し、同調圧力のもと民衆同士も空気を読み合い監視し合う、そういう緩やかな全体主義ともいえる安倍政権下の日本。そこで奪われているものは何か、それを打破するために必要なものは何か。松坂はそれが「自分の目で自分の判断で選択できる意思」だと考え、まさにそのことを表現した映画に「自分の判断で」出演したのだ。

 その結果、『新聞記者』はポピュラリティを獲得し、硬派な映画としては異例のヒットをした。

 冒頭で触れたように、3月6日最優秀賞などが発表となる第43回日本アカデミー賞で『新聞記者』は、松坂が主演男優賞にノミネートされているのをはじめ、作品賞、監督賞、主演女優賞といった主要部門ふくめ、6部門にノミネートされ、台風の目となっている。アカデミー賞の授賞式は地上波で放送されるが、それこそ『新聞記者』がテレビで大きく扱われるのは初めてなのではないか。賞の行方とともに、授賞式で松坂桃李らが何を語るのか。あらためて注目したい。

最終更新:2020.03.06 10:51

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