渡辺えり『バイキング』降板はなぜ? ネトウヨ化する番組で戦争反対を貫き弱者に寄り添う貴重なリベラル論客だったのに

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 政治的発言をするだけでも敬遠される芸能界にあって、逮捕覚悟で官邸にアポなし訪問までしていたとは。結局、逮捕されることはなく事なきを得たのだが、しかし、彼女がそこまでして戦争を止めようとするのはなぜか。前掲「論座」ではこのように語っている。

「私には子供がいない。だから、世界の子供を守る義務がある。大人の仕事は子供を育てることである。子供を大人にするのが、大人の役割である。自分の子供を持たないものは、人が子供を育てる手助けをしなければならないと思っている」

 だから、この世界のどこであろうと、弱い立場に置かれている子供たちを傷つける戦争には「反対」の声をあげずにはいられないのだ。人間として至極真っ当な感覚だと思うのだが、いま現在のメディアではこのような考えをもつ文化人や芸能人がどんどん排斥される状況になっている。

 本サイトの対談連載で室井佑月は経済学者の金子勝に対し、メディア上からリベラルな語り手たちの立場が次々に奪われていく現状を、このように嘆いていた。

「発言する場所がなくなってきてる。私も、いつか振り子が逆に振れるだろうと思って頑張ってるけど、でも長いよ。本音を言える人がどんどんいなくなっていっちゃう。目立ちたくないのに。私なんて、ただのおばさんだよ。なんで怖い目に合わなきゃいけないの。もっとみんなが声をあげてくれたらと思うよ」
「仲間が減ってくのも嫌。しかも右の論客の人たちって楽しそうなんだよ。テレビに出てても群れて、我が世の春みたいで、すごい楽しそう。みんなで「先生のこの本、読みました!」なんて話しちゃってさ。仕事なんか回し合っちゃってさ。私は、どんどん仲間がいなくて寂しいのに。奴らが羨ましくてしょうがない」

 そして、またひとり、渡辺えりというリベラルな語り手の発言の場が失われた。渡辺の卒業理由や代わりの新レギュラーは発表されていないが、大勢迎合一色に染まったスタジオで、果敢に大真面目に、でも愛嬌をもって、ひとりリベラルな立場を貫き弱者に寄り添った発言をする彼女の存在は、本当に大事なものだった。討論スタイルによる視聴率好転も手伝って、今後『バイキング』は裏の『ひるおび!』(TBS)のように政権PRに利用されたり、ますますネトウヨ番組化する可能性も高まっていくだろう。渡辺の番組降板が残念でならない。

最終更新:2017.11.22 01:30

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

関連記事

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

渡辺えり『バイキング』降板はなぜ? ネトウヨ化する番組で戦争反対を貫き弱者に寄り添う貴重なリベラル論客だったのにのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。バイキング坂上忍室井佑月小籔千豊渡辺えり編集部の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄