世界に知れ渡った「歴史修正主義ホテル」APAの正体(前編)

アパホテルはなぜトンデモ極右思想の宣伝装置になったのか? 「北朝鮮のよう」と言われた経営者一族のホテル私物化と恐怖支配

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 椅子に腰掛け、本を紐解いてみる。予想どおりだ。そこには、ゴリゴリの歴史修正主義と陰謀史観、そして改憲と安倍政権礼賛が延々と展開されていた。

〈日本は西洋列強が侵略して植民地化していたアジアの植民地軍と戦い、宗主国を追い払った植民地解放の戦いを行ったのに、東京裁判では、反対に日本が侵略国家であり、中国国民党政府軍が謀略戦としてつくった捏造の歴史によって、南京大虐殺を引き起こした悪い国だと決めつけられた。〉
〈つまり南京事件も慰安婦強制連行もなかったということだ。しかし、中国も韓国も自分たちの行動を棚に上げて、これらの虚構に基づく日本への非難を繰り返す。〉
〈一九二八年七月に勃発した日中戦争の発端はコミンテルンの謀略であり一九二八年九月の張作霖爆殺事件を関東軍の河本大作大佐の仕業が行ったように見せかけて日本に恨みをもたせた息子の張学良によって蒋介石をおびきよせ、蒋介石を監禁した西安事件を機に第二次国共合作をさせたことにある。これは一九三五七月二十五日から八月二十日にかけてモスクワで開催された第七回コミンテルン世界大会の方針に基づいたものであって、Wikipediaのコミンテルンの項によると(以下略)〉
〈度重なる中国共産党、コミンテルンの陰謀が、この泥沼の日中戦争を引き起こしたのだ。〉

 いまさら言うまでもないが、「南京事件がなかった」というのは、保守系の学者でさえ「ありえない」とするトンデモ論だ。しかし、元谷代表はそれを平気で主張するばかりか、張作霖爆殺事件から日中戦争開戦までを、なんと「コミンテルン」の仕業だというのである。こちらもまた、当時の歴史的背景がまったくわかっていないフリーメーソン並みの陰謀論として有名な主張だが、元谷代表の暴走は止まらない。

〈先の大戦の遠因は、メディアのせいでユダヤ人を敵に回してしまったせいだ〉などと、今度はユダヤ陰謀論を展開したうえで、なんと他国への先制攻撃ができるよう憲法を改正せよ、と主張し、こう安倍政権礼賛を展開するのだ。

〈防衛力だけでは攻撃力の二十倍もの軍事力が必要になる。本来攻撃こそが最大の防御なのだ。攻撃的な兵器も保有できるように憲法改正を行うことは必須だろう。〉
〈安倍政権は十年以上続く長期政権を目指し、日本を立て直し、誇れる祖国・日本の再興を果たして欲しい。(中略)中国、韓国にしっかり対応していくためにも、安倍政権が長期政権となるべく、私も最大限のサポートをしていくつもりだ。〉

 読めば読むほど、そのネトウヨ脳っぷりにくらくらしてくるが、それにしても、アパホテルはなぜ、こんなトンデモ歴史修正本の宣伝をしているのか。もちろん、それはグループ総帥の元谷氏の意向だろう。

 元谷氏は石川県小松市で信用金庫の営業マンから、マンション事業を立ち上げ、いまや400以上のホテルを配下におさめる一大グループをつくりあげた立志伝中の人物。しかし、その経営手法は、スタッフを最小限にして経費を極限までカットするというかなり強引なもので、2007年には2棟のホテルで耐震偽装が発覚したり、マンションからレジオネラ菌が検出されるなど、ずさんな管理を物語るトラブルも頻発してきた。ホテルの消防法違反やテナントビルの計量法違反を指摘されたこともあるし、2000年には出入りの業者にディナーショーのチケットを押し付けたことで、公正取引委員会から独占禁止法に抵触するとの警告を受けたこともある。

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