出演強要、売上減少、違法サイト…AV監督、女優、男優が語るAV業界の危機、そして再生のための方法とは

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「この21世紀の今日、男性器を女性器に入れて、それだけで購買者が満足するかというと、そんなことはないですからね。僕なんかはフェチ系のビデオでは、本番を撮らないですから。挿入してパカパカやっているビデオなんて、今の時代、売れないんですよ。じゃあ本番行為なしでどうやったら作れるのかというところで議論しているのが、最新のAV事情なんです。作る側からすると、本番行為が入っていると作りやすい。本番って120分の作品で、セックス行為を2回やれば、50分ぐらい稼げちゃうから。でも、そこに甘えないで作っていくところに、今のAV制作の難しさややりがいがあるんです」

 レンタルからセルに移行し、モザイクが薄くなった時期から、AV業界はとりわけ“お客様第一主義”に傾き、いかに「ヌクための素材」を提供することができるかという競争に突入した。結果として、それまであったドラマ性であったり、ドキュメンタリー性といったものは邪魔なものとして捨て去られることになる。そうして、いかに性器が結合する「ハメシロ」を撮るかといったようなルーティン的な作品づくりに突入していくことになった。

 成人誌を中心に執筆するライターのやまもと寅次郎氏も、そういった経緯から業界がAVをエンタテインメントに昇華できなかったことを嘆く。

「芸能界にもAVと同じく、世間のハグレ者の不良とかが入っていたりしているよ。でも、芸能界の人と話してみるとね、AV業界との違いがはっきり分かるんだよ。彼らは言うんだよ。『今のAVの人たちはエンターテイメントを作っているっていう意識がないよね』って。目先の金ばかり追いかけているって。その通りだと思ったよ。芸能界の人たちは、みんなエンターテイメント業界にいる意識を持っているからね」
「AV業界って、もともとピンク映画やエロ本から発展してきたでしょ? 90年代は、サブカルでもあり、エンタメにもなりつつあったんだよ。でも、結局、エンタメ産業になれなくて、射精産業になってしまった。みんな、AV業界がどうなるかって考えてこなかったんだよ」

 AVがそれまでもっていたようなサブカル的要素を捨て去ったのにはそれなりの理由があったわけで、彼らの意見が窮地に立たされるAV業界を救う特効薬になるかどうかはわからない。

 しかし、違法動画サイトで切り取られたものでは満足させないような、エンタテインメントをつくるための努力が解決策のひとつとして大きな役割を果たす可能性もまた否定できないだろう。ひいては、そういったエンタテインメントをつくるための努力が、業界の健全化に寄与する可能性もある。

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