安倍首相が「保育士に勲章授与を」とトンデモ答弁! これは待機児童問題ゴマカシのための“天皇の政治利用”だ

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 また「国家にとっての意味」としては、同書でこうまとめている。

〈国家にとっての栄典は、それを受けた者が国家への権威への支持を強めることにより、国家の統合を強化することができる。
 (略)君主の権威はより大きなものと認識され、君主に対する支持が高まり、そのことによって国家の統合がより強化される。君主・国家の権威の承認は、そのままそれらの正当性の承認につながる。(後略)〉

 ようは、先にあげた森内閣での「栄典制度の在り方に関する懇談会」の報告書が意味するところも、結局のところ、国家や権力者の権威増強、そして、反対派の懐柔策でしかないのだ。とすれば、「天皇と国民を結ぶ役割」も実のところ戦前・戦中のような“臣民化”を目しているとしか思えないが、実際に“日本の叙勲制度は民主主義に反している”という批判は根強くある。

 第一、現在の叙勲制度にはこれを運用する法律自体が存在しない。1890年の大日本帝国憲法で「天皇は爵位勲章およびその他の栄典を授与す」と定められたものが、戦後の一部例外を除く停止を経て、1963年の池田勇人内閣による閣議決定で“復活”したものだ。これは日本国憲法下での法律ではなく政令による制定であり、現在でも政府は憲法7条の「天皇の国事行為」に直接依拠するとの解釈を用いており、事実上、時の内閣府賞勲局が与えている。このように叙勲は、本来排他的に立法を司るはずの国会を経由していないという点で民主主義的でないと言えよう。

 第二に、強調すべきは、叙勲制度には明らかな官民格差や職業格差が存在し、それが帝国主義の道具立てとなっていた点だ。毎日新聞学芸部記者・栗原俊雄氏の著書『勲章 知られざる素顔』(岩波書店)によれば、1945年の敗戦に至るまで、栄典授与のうち8割弱が軍人で、残りの2割強の大部分も官吏らの定例叙勲であり、民間人は極めて少数だったという。前述のとおり、国家にとって栄典は君主の権威を強め、それ自体の正当性を強化するものであることから、戦前・戦中日本における軍人や官吏への叙勲が、軍事国家の強化と皇軍による侵略戦争の正当化を目したものであったことは疑う余地はない。

 他にもそもそも公権力が人間をランク付けすることなど、様々な批判がある叙勲制度だが、上述した2点だけをとってみても、平和主義と民主主義を掲げる戦後日本に、大日本帝国憲法の影響が強く残る現行制度がふさわしいかどうかは明白に思える。

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