AV出演を拒否したら所属事務所から2400万円の違約金請求が! 人身売買契約横行の裏にAV業界の芸能界化

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 そのこと自体は別に悪いことではないが、一方、かつてアンダーグラウンドな世界であったAV業界がどんどん普通の芸能の世界に近づいていくことで、以上述べてきたようなトラブルを生む構造が出来上がっていった。井川氏は前掲の「創」でこう語る。

〈これまでは芸能事務所とAV事務所は明確な棲み分けがあった。しかし、近年は双方の境い目が曖昧になり、芸能事務所なのかAV事務所なのか分からないような事務所が増えている。女の子たちからしてみれば、アイドル事務所だと思って所属したのに、活動していくうちにAV事務所だと判明する事例が多発しているのだ〉

 このように、芸能事務所とAV事務所が境い目をなくしていったのには、もう一つ事情がある。迷惑防止条例によるスカウトの禁止だ。「創」では、AV事務所マネージャー氏の証言としてこんな言葉が語られている。

〈まずアイドルとしてスカウトしておいてグラビアアイドルとして活動させる。そのうち人気が出てきたら、系列のAV事務所に紹介してAV女優に口説き落とすというのは一般的な流れになっていますね。それは都道府県の迷惑防止条例でAVや風俗のスカウトが禁止されたから、AV女優として誘うのが難しくなってきたことも関係しています〉

 本稿冒頭の裁判もまさにこの事例だ。タレントとして事務所にスカウトされたと思ったら、その内実はAV関係の事務所であった。

 もちろん、AV関係の事務所であればみなこのような会社だと言うつもりはない。AV業界がアンダーグラウンドな世界から抜け出るにつれ、健全化を目指した会社も多く存在するだろう。しかし、残念ながらすべての会社がそうではなかった。それは、前述した「PAPS」の相談件数の数字が物語っている。

 ここまでAV業界に横行するあこぎなやり方について紹介してきたが、よく考えてみれば、このように人権を蹂躙するようなかたちで仕事を迫る構造はAV業界のみならず「芸能界」全体にも同じことが言える。

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