「廃案報道」にC.R.A.C.野間易通が緊急寄稿

ヘイトスピーチ規制法ではない! 安倍政権の排外主義が遮る人種差別撤廃基本法の行く手

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 また、昨年12月に最高裁で民事訴訟の判決が確定した京都朝鮮学校襲撃事件は、在特会らの行為を人種差別でありヘイトスピーチであると認定するものだったが、この認定には民法ではなく人種差別撤廃条約がそのまま援用されている。これはかなり画期的なことではあったが、逆にいえば適切な国内法がないということであり、早急に立法が要請されていることを示してもいるのだ。

 法案の審議は、8月6日に参議院法務委員会で第1回が行われたまましばらくストップしている。この審議は私も傍聴したが、自民・公明といった与党も含め、法案そのものに反対する議員はいなかった。「人種差別は違法である」ということを定めただけの理念法なのだから、常識的にそんなものに反対しようがないのである。

 とくに自民党の猪口邦子はかつて少子化・男女共同参画担当大臣であった経験から積極的で建設的な提言を行ったが、この姿勢は必ずしも自民党全体の立場とは相容れるものではないらしい。その最大のネックはやはり安倍政権だという。「安倍政権でなかったら、こんな法案は一発で通りますよ」と、関係者が口をそろえる。

 8月28日付朝日新聞は「ヘイト禁止法案、採決見送りへ 表現の自由で与野党に溝」というタイトルで、自民党が消極的であると報じたが、法案作成者の一人である民主党の有田芳生によれば、今のところ採決見送りとの方針は打診も含め、ないという。消極的な理由は、例によって「表現の自由」との兼ね合いだ。

 ヘイトスピーチの問題は、ある意味では「表現の自由との闘い」である。この問題では、民主主義にとって最大の価値であり武器である表現の自由という権利が同時に人権と民主的な社会を脅かすというパラドックスに、常に悩まされることになる。これを法律で禁じるかどうかは、それぞれの社会の状況によって異なる。

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