「ヘイト」を追及し続けるジャーナリスト・安田浩一インタビュー(後)

ネトウヨを生み出したのはメディアだ! ニコ動は差別に加担したことのケジメをつけろ

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──ただ、ゲリラ・ジャーナリズム(※前編参照)じゃありませんがネットメディアも、元々はマスメディアに対するカウンター的な機能を持ったはずのものだったとは思うんです。

安田 そう。ネットカルチャーって、今でもすごく可能性あるとは思ってるよ。日刊ゲンダイ風に言えば「大新聞が書かない」みたいな文脈のなかで「権力を撃つ」持ち味を生かせるのがネットメディアだったはず。なのに結果的には「日本バンザイ!」といった権威のヨイショ記事しか書けなくなってしまっている。それが一部にウケて、ビジネスとして成立してしまっているんじゃないかな。マンガもそうだよね。先日、ヘイトデモにも参加している漫画家が描いた『日之丸街宣女子』という作品が発表され、ヘイトスピーチを肯定する内容だと問題になりました。アニメ・コミックは文学という権威に対して「それって裸の王様じゃないの?」とこき下ろす破壊力を本来持っていたものだったと思う。それが何で『日之丸街宣女子』になってしまうのかという憤りはやっぱりありますよね。

──安田さんから見て、そうした現状はいま週刊誌が衰退産業だと言われていることと関係していると思いますか?

安田 最近、毎日新聞記者の小国綾子さんが衝撃的なコラムを書いていました(4月14日毎日新聞夕刊)。自社にインターンシップにやってきた新聞記者志望の大学生たちと話していたら、彼らは「新聞を読む姿を友達に見られると恥ずかしい」と揃って口にしていたそうなんです。ガリ勉のように思われるのが嫌で新聞を読んでいるのを人に言いたくないという感覚。それを読んでいる僕の方が愕然としました(笑)。
 新聞読んでいることが「恥ずかしい」という感覚は理解できない。でもそれが現象としてあるということは理解ができる。その意味では新聞だけじゃなくて、週刊誌もたしかにダサいわけですよ。そういう意味では、これは週刊誌の衰退というよりも活字メディア全体の衰退の問題だと思います。
 活字メディアの衰退というのは負のスパイラルで、衰退すればするほど金のかかる調査報道からは離れていく。そうなると、安価なコストで、お客さんを集めやすいネタしか載らなくなる。嫌韓記事と言われているものもその1つです。嫌韓記事って、すごくローコストなんだよね。ネットで材料拾って、識者っぽい人からコメントを取れば終わり。記者の足音も息遣いも聞こえない。ただ煽っているだけの安易な作りは、取材力の低下を招くと思う。で、取材力の低下は必然的にメディアの信頼も低下させると思いますね。
 活字メディアが衰退する代わりに新たな可能性としてwebというものが出てきたはずなのに、それが輪をかけてコーンフレークがいっぱいのクリームパフェだったり、お客集めのためのスカスカ商品を出す。そんなものばっかり量産されている状況は社会のためにも良くない。このスパイラルをどう食い止めるべきか、僕自身が不安にならざるを得ないんですよね。

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