小田嶋隆も中川淳一郎も!? アルコール依存症はチューハイの税率上げても防げない

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 さて、『アル中ワンダーランド』では、まんしゅうのアル中体験が赤裸々描かれており、これがまた壮絶で興味深い。

 たとえば、被害妄想。アル中になっても、3日程度は断酒することができたというのだが、その時の被害妄想がとにかく酷いというのだ。

「ツイッターのフォローリクエストがあると『なんだ!? 私を監視する気か!?』とブロックし、はては友人・知人も『敵』に見えて、ブロック、ブロック、ブロック……。また、特に鍵アカウントでフォローしてくる人への警戒心が異常でした」(同書より)

 そして、しばしば“死”への衝動に駆られることもあったという。まんしゅうの叔父はアルコール依存症で58歳という若さで肝硬変で亡くなっている。まんしゅうは、そんな叔父に自分の姿を重ねていたのだ。

「アルコールに依存するようになってから、私も飲むたび、オジサンののように『死にたい』と思うようになりました。感覚としては、すべてに対して『投げやり』で、生きてるだけでツライ。息するのもツライ。そんな感じ。この先どうしていけばいいのかとか、いろいろ考えているうちに、『どうせツライなら死んでラクになりたい』とネガティブに思ってしまうのです」(同書より)

 そんなまんしゅうはある日、「電車が行き交うホームにただ座り、私は『死にたい』と思って」いたという。

「『S極』であるレールに、『N極』の私は強く引き寄せられました。立って電車を待っていた私は、線路に吸い込まれそうになって、思わず尻もちをつきました。そして、『死にたい』はずの私は近くのベンチまで這っていき、しがみつきながら思いました。『死にたくない』って」(同書より)

 死にたいと思って電車に飛び込みそうになるも、直前で「死にたくない」という感情が湧き上がってくるという、かなり不安定な状態にまで陥っていたことが分かる。

「飲んでも地獄、飲まずとも地獄」の過酷な世界が待っているのが、アルコール依存症というもの。少なくとも『アル中ワンダーランド』で描かれているのは、単純に酒が好きで溺れていった姿ではなく、精神的な弱点を酒で埋め合わせていった結果としての依存症だ。

 それは、酒の価格を引き上げたところで、防げるようなものではないことは言うまでもない。酒が手軽すぎてしまうのも確かに問題だ。しかし、本当に依存症を防止したいのなら、税率アップよりもすべきことがあると思うのだが……。
(田中ヒロナ)

最終更新:2015.05.17 04:04

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