水島宏明の「政治からテレビを守れ!」①

テレ朝とNHKの“失態”につけこむ安倍政権とほくそえむ籾井会長

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
momii_150415.jpg
籾井勝人NHK会長(NHK公式HP「NHKについて 会長あいさつ」より)

■政権批判を封じるのが狙いのテレビ局への事情聴取

 自民党が17日にNHKとテレビ朝日の幹部を情報通信戦略調査会に呼んで、最近話題になっている報道番組について、直接、事情を聞くという。

 これは14日夕方の日本テレビのニュースが伝えたものだが、どちらも「報道番組」に対する“牽制”であることは間違いない。やらせの疑いが濃厚になってきたり、あるいは、生番組でのコメンテーターの爆弾発言が波紋を広げたりした「報道番組」が相次いでいることは事実だが、それぞれの局内で独自の検証や責任者の処分などが検討されている。そうしたなかで、政治がわざわざ口を出し、制作した放送局の幹部を呼びつけ、詰問するのは、政権与党や彼らが進める政策への批判を封じ込めるのが本当の狙いだと考えた方がいい。

 要は、テレビ局が犯した“失態”につけこんで、テレビ報道に介入し、報道の力を弱体化させることを目論んでいるのだろう。


■NHKへは「調査報道」への牽制

 籾井勝人会長の下で起きたNHK『クローズアップ現代』の“やらせ”疑惑。昨年5月放送の「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」で、ビルの一室を詐欺の「活動拠点」として報道したがその場所でそうした実態がなかったこと、この場所に相談に訪れたとして報道された「多重債務者」の男性が実は取材したNHK記者とは8、9年来の知人でこの場所での撮影を主導していたこと、「ブローカー」として放送された男性が、自分はブローカーではなく記者に演じるように依頼されたと主張していることなどが指摘されている。

 筆者のように、長年、テレビ報道の一線でやってきた人間からすれば「やらせ」は明らかだ。「ブローカー」と「多重債務者」との相談風景を別のビルから隠し撮りするような撮影をしておきながら、実は相談が行なわれていた部屋にはNHK記者も身を潜ませ、二人の会話に注文をつけていた事実をNHK側も認めている。まだ調査委員会が調べている最中ではあるものの、国谷裕子キャスターも「取材が不十分だった」と謝罪している。

『クローズアップ現代』の「やらせ」や放送倫理違反はもはや揺るがないものになっているが、注意しなければならないのが、これによって『クローズアップ現代』が今後も続くのか、という問題だ。局内ではすでに「打ち切り」も検討されているという。

 確かに、今回の「やらせ」はテレビ報道への信頼を揺るがせた行為だということができるが、他方で、『クロ現』はNHK、民放を含めて数少ない、良質な「調査報道」を行なってきた報道番組である。「無国籍児」、「女性の貧困」など、同番組の調査報道が発端で世間が注目するようになった社会問題は数多い。また、生放送であることから、国谷裕子キャスターが政治家などに鋭い質問を浴びせることでも定評がある。昨年7月に集団的自衛権の行使容認をめぐる閣議決定が行なわれた直後にも、菅義偉官房長官をスタジオに招いて質問攻めにし、不快な表情にさせた。放送を見た官邸スタッフがNHKに対して激怒したと伝えられている。

『クロ現』を始めとするNHKの調査報道番組は、たとえば、福島第一原発の事故発生のメカニズム、原発から出るゴミ(使用済み核燃料)や廃炉に向けた取り組みの困難さなどの問題でも、他の報道機関の追随を許さない圧倒的な取材力を発揮している。

 こうした調査報道の報道番組に対して、安倍首相の周辺が「偏っている」などと批判してきた経緯がある。今回の『クロ現』やらせ問題は、NHKがこれまでの「踏み込む調査報道」から手を引くきっかけになりかねない。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造 (朝日新書)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

テレ朝とNHKの“失態”につけこむ安倍政権とほくそえむ籾井会長のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。NHKテレビ朝日政治からテレビを守れ!水島宏明の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 幻冬舎・見城徹社長に寄せられた作家の批判総まくり! 幻冬舎から著作出版の作家も…能町みね子は「青林堂と合併すれば」
2 玉川徹が『バイキング』の小室圭さんバッシングの嘘を批判!
3 『朝生』で百田尚樹が徹底論破され大恥
4 葵つかさが「松潤とは終わった」と
5 百田尚樹vs古市憲寿、ウソついたのは
6 ジャニーズが“2.5次元”に危機感
7 佐藤浩市をフェイク攻撃した安倍応援団が批判殺到で逃亡
8 秋篠宮家の料理番がブラック告発
9 百田尚樹『日本国紀』批判で出版中止の津原泰水に直撃
10 グッディ!土田マジギレ真の原因
11 丸山穂高「戦争」発言で長谷川豊、百田尚樹がマスコミを批判
12 瀬戸内寂聴がさらに激烈安倍批判
13 読売が出会い系通い記事批判に失笑反論
14 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
15 佐藤浩市がテレビの右傾化に危機感表明
16 つんく♂が秋元のメンバー差別に
17 「佐藤浩市が安倍を揶揄」の炎上は言いがかりだ
18 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
19 安倍が再びバノンから「偉大なヒーロー」と
20 DT浜ちゃんの息子がシティボーイ!?
1国民健康保険料が大幅値上げ、年間10万円増額も
2安倍首相と省庁幹部の面談記録ゼロ!安倍政権“公文書破壊”の実態
3石野卓球がワイドショーに勝利した理由
4忖度道路めぐり安倍の直接指示の新事実が
5安倍首相が「桜を見る会」に『虎ノ門ニュース』一行を堂々招待
6安倍が“忖度道路”の要望書を提出、山陰自動車道でも利益誘導
7上野千鶴子「東大祝辞」へのワイドショーコメントが酷い!
8 塚田「忖度」発言は事実! 麻生利益誘導の疑惑
9イチローに国民栄誉賞を断られ安倍政権が赤っ恥
10野党議員をデマ攻撃「政治知新」の兄・自民党県議を直撃!
11NHKで国谷裕子を降板に追い込んだ人物が専務理事に復帰
12維新勝利で橋下徹が「反対した年配の人が死んじゃった」
13中村文則が安倍政権批判に踏み込む理由
14 『あさイチ』の「中高生に韓国が人気」企画炎上の異常
15 安倍首相「桜を見る会」招待状が8万円で売買との報道!
16菅官房長官「令和おじさん」人気の正体!
17ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける経産省メール
18「あつまれ!げんしりょくむら」以外も…原子力ムラの醜悪SNS戦略
19衆院補選で安倍自民党が大惨敗の予想が!
20 ピエール瀧出演の『麻雀放浪記2020』に“安倍政権への皮肉”

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄