オウムだけじゃない。自己啓発セミナー、ブラック企業…どこにでもある洗脳の落とし穴

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「当時は僕という醜い人間が稼いだお金をMASAYAに使ってもらうことで、彼が生み出すものが醜い世界を美しい世界に変えるんだと本気で信じていました。もちろん、彼らはいきなりそういう方向に持って行かず、最初は自己啓発セミナーという形で感動させ、そこから少しずつ、彼らに取って都合のよい世界へと引きずり込んでいくんです」

「ただ単に殴ったり蹴ったりするのではなく、『すべてが僕のためである』という大前提というか大義名分があるんですよね。もちろん、まったくもって間違っているのですが、先ほどいったように、『人間の本質は美しいのに汚いものを被っているのだから、それを取り払ってやるんだ』という理屈なんです。もちろん、暴力は嫌だし辛いし痛いし怖い。けど『これも自分のためなんだ』と思わせるわけです。
 僕も嫌だから抵抗しますよね。でも、抵抗すればするほど暴力を受ける時間が長くなるし、途中からは『もうどうでもいいや』という心理状態になってしまう」

 暴力による洗脳が思考能力を低下させることを体験者であるToshlは生々しく語る。このように金・名声・実力すべてを手にした有名人が持つ心の隙間に入り込む洗脳手法は、中島知子と謎の女占い師との事例でも本書で紹介されているが、我々のような一般人が陥るさまざまな事例についても触れられている。

 例えばアラサー女性に多い“自分探しの旅”だが、そこに潜む落とし穴があるというのが「都会を捨てる自分探しの甘い罠/佐々木浩司」だ。2011年の東日本大震災以降、〈都会を捨てて地方で“自分探し”をする若者たち〉が増えているが、いざ向かった新天地のバーや宿泊施設では、こんな状況がみられるという。

「ここで注目すべきは、従業員である。彼らの多くは“自由”に憧れており、住む場所と食事が用意される代わりに、自ら志願して無給でスタッフとして働いているようなのだ。ホームページにはアシスタント(ボランティア)募集の告知が行われている。
 ここでひとつの疑惑が浮上する。自分探しの若者が、金儲けに利用されているのではないか、と」

 金を落とす側も“自分探し”の若者たち。働く側も、“自分探し”でやってきたボランティア。〈「自分探し」が駆動する永久機関〉と作者は称している。

 またワタミに代表される「ブラック企業」も、ブラックと知りながら辞めない人材について“洗脳”が機能していると指摘している記事も(「ブラック企業で働きたい!/高島昌俊」)。平均労働時間13時間というある居酒屋は〈バイトを含む全スタッフが参加する朝礼を毎日実施している。その内容というのが自分の夢や今の目標、好きな言葉などを大声で叫ぶ〉もので、気持ち悪いことこの上ない習慣を設けているのだが、これは近年の居酒屋業界で一種のトレンドとなっており〈これ目当てでバイト先を決める若者もいる〉というのである。

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洗脳のすべて (別冊宝島 2289)

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