ベストセラー『叱られる力』は中高年向けポルノ小説である!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
shikarareruchikara_140825.jpg
『叱られる力』(文藝春秋)

 阿川佐和子氏の『叱られる力』(文藝春秋)が売れている。キャッチコピーは「叱られて、叱ってわかることはたくさんある」。前著の『聞く力』は150万部を突破し、2012年の年間ベストセラーに輝いた。第二弾にあたる本著も、年間ベストセラー入りは確実だろう。

 しかし、この本、読んでいくとちょっと引っかかる。ある一定の読者層に向けて書かれている感じがするのだ。その対象とは、中高年(の、特に男性)。中高年男性にとことん優しく、気持ちよくしてくれる──まるでポルノ小説のように。

『叱られる力』は「どうやったら叱られる力がつくのか?」「叱られる力とはなにか?」について説明するような自己啓発本ではない。阿川氏の経験に基づいたエッセイだ。「叱り」「叱られる」に関するエピソードが入り混じって展開している。

 阿川氏の周囲の編集者や友人が「叱られ慣れていない若者」に衝撃を受け、「私たちの若いころはこうだったのにね……」と語り合う一方で、小説家・評論家である父親の阿川弘之に叱られ続けた思い出が綴られる。

■「若者は叱られ慣れていない!」噴出する不満
 本著では、「叱られ慣れていない若者」たちのエピソードが次々に紹介される。

 できていないことを叱られて、「できないって言えなかったんです。わからないって言えなかったんです。何がわからないか、わからなかったから」と泣き出す後輩社員。

 一度も怒られた経験がなかったので、びっくりして涙を流してしまった新人女性部員。

 注意されて唖然としながら「僕、生まれて初めて怒られました」と呟く男性社員。

 叱られて出社拒否、辞表提出、エトセトラエトセトラ。

「それ(人見知り)って、甘えなんじゃないの?」「どうもこの頃、電話の応対のなってない若者が多すぎると思わない?」「今の若い人たちの声が小さくて舌足らず」「(叱りつけると)オオカミに出くわした赤ずきんちゃんのように怯える」などなどの言葉も飛び出す。

 阿川氏と周囲の人々は困り果てながら「いまどきは、家庭でも学校でも叱られずに育っている人が増えているんでしょうか」「そんなに親も先生も優しいんですね」とぼやく。

 もちろん、文句をつけっぱなしではない。「上手な叱り方と上手な叱られ方を忘れてしまったのかも」として、「借りてきた猫の法則」「飲み会でのコミュニケーション」といった「うまい叱り方」を提案している。

 ただし、「叱られ慣れていない若者」の姿は、伝聞でしか見えてこない。「なぜ叱られるのが苦手なのか?」「どのように叱られたいと思っているのか?」といった「叱られる側」の声がないのだ。「叱る側」の推測は載せているものの、実際どうなのかは直接聞かずにあっさりと終わらせる。阿川氏は「聞く」ことのプロフェッショナルであるはずなのに、「若者に聞く」という選択肢はなかったようだ。

 また、「そもそも若者を叱らなかった『親』や『先生』って自分たちの世代じゃないの?」という問題提起も存在しない。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

ベストセラー『叱られる力』は中高年向けポルノ小説である!のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。中年家族青柳美帆子の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 安倍政権が乱発するトンデモ閣議決定
2 国連が安倍政権のメディア圧力に勧告へ
3 義家前文科副大臣が加計疑惑に茶番質問
4 オリラジ中田が日馬富士事件で松本批判?
5 鶴保前沖縄担当相に辺野古利権疑惑
6 『ラ・ラ・ランド』に論争勃発
7 マツコがいじめ、弱者叩きの構造を喝破
8 星野源が考える“新しい家族”とは
9 安倍首相のFacebookのヘイトがひどい
10 「朝日、死ね」足立議員のトンデモぶり
11 加計学園で設置審委員が内情暴露!
12 『シン・ゴジラ』の3・11暗喩に園子温が
13 JASRACが坂本龍一を騙しうち!
14 鶴田真由と昭恵夫人は日ユ同祖論の同志
15 日本大使館が「民進党は米国が分裂させた」
16 萩生田が前川前次官にシンゴジラを観ろ
17 希望に翻弄された!? 嘉田氏に直撃!
18 高校生平和大使の演説中止と安倍政権
19 能年玲奈は独立できるか?飼い殺しも
20 欧米で安倍と訪日トランプに嘲笑の嵐
1佐野元春がトランプ批判の楽曲を発表!
2加計が留学生募集!四国の獣医不足は?
3加計学園で設置審委員が内情暴露!
4トランプ来日の目的は武器売りつけ
6直撃!前川前次官が加計認可の動きを批判
7日本大使館が「民進党は米国が分裂させた」
8テレビが封印した安倍とトランプの映像
9横田さんはトランプに戦争しないでと伝えたいのに安倍が
10義家前文科副大臣が加計疑惑に茶番質問
11萩生田が前川前次官にシンゴジラを観ろ
12国連が安倍政権のメディア圧力に勧告へ
13欧米で安倍と訪日トランプに嘲笑の嵐
14沖縄タイムス記者が官邸と百田に反撃
15トランプ来日を歓迎するマスコミの異常
16マツコがいじめ、弱者叩きの構造を喝破
17安倍が「文化の日」を「明治の日」に
18山口敬之めぐり文春vs新潮がバトル
19「朝日、死ね」足立議員のトンデモぶり
20トランプの精神障害を疑うのは当然だ! 

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

連載一覧へ!

アベを倒したい!

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」