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大阪「高齢者の入院の優先順位下げろ」メールは職員の問題ではない! 吉村知事も“ベッドを高齢者から若者にバトンタッチ”発言
30日会見する吉村知事(大阪維新の会HPより)
昨日29日、過去最多となる44人もの死者を出した大阪。吉村洋文知事は「昨日、亡くなったわけではない。4月19日から昨日までの期間」などと修正していたが、いったい過去の死者がどれくらい含まれているかを明らかにしていないうえ、その期間にも死者数は毎日、発表されており、新たな死者が「44人」判明したことは間違いない。
しかし、こうした事態となるのも当然だろう。大阪では重症病床の使用率は13日以降100%を超え、重症病床に入れず、軽症・中等症病床で治療をしている重症者も50人以上にのぼり(29日時点)、病床全体が逼迫。調整待ち・自宅療養も1万5000人を超えている。コロナ以外でも、救急車の受け入れ先がなかなか決まらない救急搬送困難事案も多発。多くの医療関係者が「すでに医療崩壊が起きている」と明言しているのだ。
そんな厳しい状況のなか、大阪の医療をめぐるさらに恐ろしい事実が明らかになった。今朝の読売新聞が、大阪府の新型コロナの入院調整を担当する部局の幹部職員から、府内の保健所に対して「府の方針として、高齢者は入院の優先順位を下げざるを得ない」とする通達メールが送られていたことを報じたのだ。
通達メールは4月19日、コロナ患者の入院調整をおこなう「入院フォローアップセンター」を所管する健康医療部の医療系技術職トップである医療監が、公用アドレスから府内18の保健所長に宛てて送っていたという。
そのメールは「入院調整依頼に関するお願い」という件名で、文面には〈当面の方針として、少ない病床を有効に利用するためにも、年齢の高い方については入院の優先順位を下げざるを得ない〉などとあり、高齢を理由に入院させないという、文字通り「命の選別」を通告するものだった。
大阪府は読売新聞の取材に対し、「府の方針とは全く違う」「施設での対応力を上げてもらいたいという趣旨だった」などと釈明、29日にメールの撤回と謝罪をした。
吉村洋文知事も本日午後の会見で、この選別問題について釈明。「府の方針とは明らかに違う内容」「一律年齢で優先順位を判断するということは大阪府の方針でもないし。やってませんし」「誤解を招くような中身だった」などと話し、否定した。
「施設での対応力を上げてもらいたいという趣旨」「誤解を招いた」などと釈明しているが、この医療監のメールはどう読んでも、高齢者より若年層の入院を優先させたいこと、つまり年齢による「命の選別」を明確に意図していたものだろう。
吉村知事は釈明会見でも高齢者に対するコロナ治療を「延命治療」と混同して使用
しかも、大阪ではすでに事実上の「命の選別」がおこなわれている。22日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)では、基礎疾患のある60代男性が、自宅療養中に容態が悪化した際、府のフォローアップセンターの調整を受けた保健所から、入院の条件として「人工呼吸器の対応はできないことを了承すること」を求められたという事例が報じられている。
また、「女性自身」(光文社)5月11日・18日合併号では、大阪府内で新型コロナ重症患者の受入れ先になっている病院の看護師が、「いよいよ、“80歳以上の患者さんは受け入れない”という決定が下されました。高齢者施設でクラスターが起こったとしても、『うちに入れることはもう諦めてください』とお断りしているんです……」と証言している。
こうした高齢者切り捨ても、幹部職員による「入院の優先順位下げる」メールも、吉村知事ら維新の方針が背景にある。
なぜなら、当の吉村知事自身が、「命の選別」を口にしたことがあるからだ。発言が問題になると「アンチのデマ」などと否定したが、テレビで「ベッドが足りなくなったら」と問われ「高齢者から若者にバトンタッチ」と答えているのだ。
そして、吉村知事は本日の会見でも、問題のメールについて「まあ趣旨としたら、高齢者施設で延命治療を望まない方についての対応については、看取りも含めて判断をお願いしたい。そういう趣旨で、そういう議論はあるわけですけれども。もともと延命治療を求めない方はそういう判断もあるわけですけれども」などと語り、「コロナ治療」と「延命治療」を混同するような発言をしていた。
言っておくが、コロナ治療は延命治療ではない。ようするに吉村知事らは、高齢者の治療は無駄だと考えているのだろう。
本サイトでは、昨年11月25日に吉村知事の「命の選別」発言を報じた。以下に再編集して掲載するので、あらためてご一読いただきたい。
(編集部)
吉村知事が『ウェークアップ!ぷらす』で「ベッドが足りなくなったら」と聞かれ「高齢者から若者にバトンタッチ」
ここまで府民を危険に晒しておきながら、吉村知事にはまるで反省はないらしい。ここにきて、「トリアージ」、そして高齢者より若者の治療を優先する「命の選別」発言まで口にしはじめた。
まず、吉村知事は11月19日に、重症者の病床確保について「大阪全体での救急病床のトリアージをしていく」と宣言。「トリアージ」というのは、大きな災害や事故現場などで多数の患者が出た際、制約があるなかで重症度や緊急度、救命可能性などに基づいて治療の優先順位を決めて選別をおこなうという意味だが、吉村知事のこのときの発言は、交通事故や脳梗塞などの患者を受け入れる病院と新型コロナ患者を受け入れている病院を明確に分けるという内容だった。
一般の救急患者とコロナ患者の受け入れ病院を分けることを、「救急病床のトリアージ」などと呼び、わざわざ「トリアージ」という言葉を使うことじたい意味不明で、意図が透けて見えるようだが、問題はこのあとだ。その本音はすぐあらわになる。
11月21日に生出演した『ウェークアップ!ぷらす』(読売テレビ)では、司会の辛坊治郎が「場合によって(重症患者の)ベッドのキャパシティを超えてきた場合にどうするかみたいなことは考えていらっしゃいます?」と訊くと、吉村知事はこのように答えた。
「これは三次救急の先生方と話をしなきゃいけません。かなりシリアスな話になってくると思います。つまりほかの病気の方、心筋梗塞であったり交通事故であったり、そういったみなさんの命もやっぱり守らなきゃいけません。ICUっていうのは限りがありますから、そういった意味ではどこをどう命を救っていくのかという、そういった選別のような、これは本質的な議論をしなきゃいけない状況に……」
さらに、辛坊が「政治家としては絶対に言えないことを聞きますけど、本当に極限状態になったときは年齢その他で何かを区切るみたいなことはありえると考えています?」と尋ねると、吉村知事はこんな話をはじめたのだ。
「僕はご家族の同意というのは必要と思いますが、そういった判断、これは押さえなきゃいけないんですけども、これは諸外国ではそういった議論を実はされているんですが、一定の本当にもう超高齢であったりご家族の同意が得られるような場合については、人工呼吸とかそういうのじゃなくて、これはもう若い人にそれをバトンタッチするというような判断というのが必要になってくることがあるかもしれない」
高齢者よりも若者を優先させる判断が必要になる──。つまり、吉村知事は19日に言っていた「病床の振り分け」という話ではなく、文字通り「命の選別」をおこなう可能性を語ったのだ。
吉村知事は「うがい薬」問題のときと同じく「そんなこと言ってない」「アンチのデマ攻撃」と言い訳
無論、これらの発言にはネット上で批判が高まったが、昨日の会見でこの問題を問われると、吉村知事は“そんなことは言っていない!”などと否定したのである。
「『命の選別をする』ということではありません。むしろ命を守るために適切な病床の医療資源を配分していこうということです。ここは一部、誤解の生じないようにしていただきたい」
「一部で何か『命の選別だ』みたいなこと言ってるアンチの人たちがいますけど、それは事実とは違います。僕が言ってるのは病床の話です。病床の最適化、医療の最適化、やはりこれをやっていかなくてはならない状況にあると」
「一部のネット上で『命の選別を吉村がしている』というのはまったく違うということは、ここではっきりと申し上げておきたい」
吉村知事は、19日に宣言した「病床のトリアージ」、つまり交通事故や脳梗塞患者など一般の病気の患者の受け入れ病院と新型コロナ患者の受け入れ病院を分けるという問題にすり替えて否定したが、『ウェークアップ!ぷらす』で言った発言はまったくそれとは違う。「超高齢者は若い人にバトンタッチする」とはっきりと口にしており、これはまぎれもない「命の選別」発言だ。
吉村知事は「ポビドンヨードうがい薬がコロナに効く」と喧伝して批判を浴びたあとも「予防効果があるとは、ひと言も言っていない」などと言い張り、「ぼくが感じたことをしゃべり、『それは間違いだ』と言われたら、ぼく自身、言いたいことが言えなくなる」などと述べ、反町隆史の歌の歌詞のようなことを言い出して“ポイズン吉村”などと揶揄されたが、またも自身の発言を“言っていない”などと無責任にも否定したのだ。
さらに呆れるのが、「『命の選別だ』みたいなこと言ってるアンチの人たちが」と、まるで“アンチがデマを流している”かのように話をすり替えたことだ。「うがい薬」騒動でも吉村知事は「維新が嫌いなのはわかるんですけど」などと批判を矮小化させていたが、都合の悪いことをすべて「アンチのデマ」とするやり口をみていると、この政治家の本質がトランプ大統領とまったく同じであることがよくわかる。
しかし、いくら言い訳を重ねても、吉村知事が「命の選別」を口にした事実は変わらない。そしてそれが現実になるのではと不安を覚えずにいられないのは、そもそも維新の底流には「生きる権利より医療費削減」「生産性の低い高齢者は早く死んだほうがいい」という優生思想が流れているからだ。
医療削減をしておいて「医療資源に限界」の発言 背景にある維新の優生思想
たとえば、今年起こったALS患者の嘱託殺人事件をめぐって、やはりALS患者であるれいわ新選組・舩後靖彦参院議員が「生きる権利を守る、生きやすい社会に」と発言したことに対し維新の最高幹部である馬場伸幸幹事長は「議論の旗振り役になるべき方が議論を封じている」などと攻撃。さらに、表向きは馬場幹事長を諌めていた当時維新の代表だった松井一郎・大阪市長も、同時に「生きやすいかどうかは個人の感性の問題」などと問題を矮小化、なおもALS殺人をきっかけに尊厳死を議論すべきと主張していた。
まさに背筋が凍る主張だが、吉村知事の「超高齢者は若い人にバトンタッチする」という発言にも「生産性の低い高齢者は早く死んだほうがいい」という維新的な思想が見え隠れするのだ。
実際、吉村知事は昨日の会見でほかにも信じられないようなことを口にしていた。吉村知事が「命の選別」問題を“アンチによる攻撃”に話をすり替えたあと、記者が話を戻し、「たとえば150床を目指すなかで、重症者のほうが上回ってしまったときに、じゃあ誰が実際に重症のベッドに入れて、誰が入れなくなるのかという懸念も出てくると思うんですけど、ベッド数を上回ってしまったときの対応にかんしては、いまどのようなお考えがあるのでしょうか」と質問。すると、吉村知事はこう答えたからだ。
「これはまず府民のみなさんにはお伝えをしなきゃいけないというのは、医療資源っていうのは無限ではありません。医療資源っていうのは限りがある、無限に広がるわけではありませんので、ここは府民のみなさんにも当然、どのエリアでもそうですけど、そこはご理解をいただきたいと」
救えるはずの命が救えなくなるという最悪の事態を回避するためには医療提供体制の整備が必要だということは、今年の2月からずっと繰り返し叫ばれてきた話だ。そして、今月末に完成するという臨時施設「大阪コロナ重症センター」をもってしても対応しきれないような状況にまで大阪はきてしまった。繰り返すが、いま地域を医療崩壊寸前まで追い込んでしまったのは政治の責任だ。その責任を棚に上げて、重症患者の病床が足りなくなるという現実が目の前にまできているなかで、医療体制を増強する努力を放棄し、「医療資源っていうのは限りがある」「無限に広がるわけではない」などと言い放つ──。重症患者には高齢者が多いが、ようするにこれは高齢の府民に対して「理解」という糖衣に包んだ表現で「覚悟しろ」と迫ったようなものだ。
この無責任かつ「命の選別」をも厭わない男が陣頭指揮をとりつづけ、大阪は一体どうなってしまうのか。そこにはただただ不安しかない。
(編集部)
最終更新:2021.04.30 10:26
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