横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」53

北海道知事選でも安倍官邸が暗躍! 地元の声を無視し候補者ごり押しも、野党が統一候補で対抗

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 4期16年の高橋はるみ知事の後任を決める「北海道知事選(投開票4月7日投開票)」が与野党激突の構図となった。2月1日に出馬会見をした与党系の鈴木直道・夕張市長に続いて、6日に野党が出馬要請をした石川知裕・元衆院議員も「北海道の改革と未来のために頑張っていきたい」と述べて立候補を表明したのだ。道政ウォッチャーはこう話す。

「野党が弱くて保守分裂となる知事選は福岡や福井などいくつもありますが、与野党激突となるのは北海道知事選だけ。統一地方選最大の注目知事選となるでしょう」

 そんな統一地方選挙の“天王山”で、「勝てる候補は鈴木市長」として鈴木市長ありきで与党系候補選定を主導したのは、菅義偉官房長官と官邸の意向を忖度する自民党北海道支部連合会(道連)会長の吉川貴盛・農水大臣なのだという。そんな中央のお墨付きを背景にするかのように鈴木市長は2月1日、何と道連の候補選考過程の途中に“フライング出馬会見”に打って出て、地元の経済人や国会議員や道議らが推していた和泉晶裕・国交省北海道局長を不出馬に追い込んだのだ。「官邸の意向をバックにして出馬表明の既成事実作りで選考レースに勝利した形。鈴木市長が当選した場合、高橋知事以上に“官邸言いなり知事”になるだろう」とある道政ウォッチャーはこう話す。

「菅義偉官房長官と頻繁に会うなど太いパイプがある鈴木市長が、まさに官邸のトップダウンのような形で与党系候補となった。菅官房長官の意向を忖度した道連会長の吉川貴盛・農水大臣が『鈴木市長ありき』で候補者調整を進めてきたともいえますが、これが地元国会議員や道議や経済人や市町村長から『おかしいじゃないか』『何も聞いていない』などの反発を招いた。和泉氏が不出馬表明した後も、橋本聖子参院議員擁立の動きが出たのはこのためです」

 自民党は世論調査を何回かやっていたが、鈴木氏が和泉氏に差をつけていたので「勝てる候補は鈴木市長」と踏んだという。「官邸の意のままに操れる」「安倍自民党の政策に異論を唱えることもない」という要素も出馬会見から垣間見えた。カジノを含むIRについて、ギャンブル依存症のマイナス面にも触れながらも「経済的にプラス」と明言し、4年前の北海道知事選で争点になった泊原発再稼働については一言も触れず、JR北海道の廃線問題についても「攻めの廃線をした」と自画自賛していたのだ。

「JR北海道に対して『石勝線夕張支線を廃線にします。その代わりにバスを含む代替交通を支援して下さい』という提案をして、夕張支線廃線がいち早く決まった。その評価は賛否両論で、いい評価としては『自分たちで廃線を決めてJR北海道から見返りとして7憶5千万円の支援金などをもらうことになった』という声がある一方で、廃線の瀬戸際にある維持困難路線を抱えている自治体からは、地元で議論をしているさ中に夕張だけが先に手を挙げて廃線を言ったことへの反発もある。他の自治体の首長も『このままでは赤字路線の維持は厳しい』と分かっているなかで悩みながら議論を地元で進めているときに、『鈴木市長だけ抜け駆けをして、いい顔をした』というわけです。JR北海道への2020年までの国の財政支援は決まったが、それ以降のことを考えても国の支援抜きでは赤字路線維持は困難だし、JR東海など儲かっている他のJRが支援するスキームが出来る動きもない。鉄道と道路などの関連予算を合体させた『総合交通体系』に変えて『交通量の少ない高速道路や高規格道路の建設予算を削って、JR北海道に回す』という提案もありうる。JR北海道廃線問題は、何らかの抜本的解決策が不可欠なのに、そういった国の政策転換を迫る議論なしに、国が設定した枠組みの中で、鈴木市長は抜け駆け的に夕張支線廃線を言い出したのです」(道庁関係者)

自民系候補の鈴木直道・夕張市長は政策でも官邸の言いなりか?

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北海道知事選で候補者選定を主導したとされる菅官房長官(1月20日、山梨県知事選での応援演説・撮影/横田一)

 JR九州の『ななつ星』ような観光列車を走らせたり、増え続ける外国人観光客に道内を列車で移動してもらうことなどによって、赤字路線を黒字に近づけていくといった将来を見据えた大胆な鉄道維持(死守)政策を打ち出す発想は鈴木市長にはない。安倍政権のという新自由主義的枠組みの中で、いかに若い市長の自分をカッコ良く見せるかを考えている優等生的小役人のように見えるのだ。

「見た目は子供、頭脳は大人」の名探偵コナン風に言えば、「見た目は若者、頭脳は老人」となるだろうが、ただ「バックに菅官房長官がいる」「官邸忖度志向の吉川道連会長が『鈴木市長ありき』で候補者選考を進めてきた」「カジノ誘致・原発再稼働・JR廃線推進の安倍政権には異議申立てはしない」という“官邸言いなり候補”であることは一部の政界関係者や報道関係者は知っているが、大多数の北海道民は知らない。「爽やかで元気があって夕張を再生した」というイメージが強いので無党派層の票はかなり鈴木市長に入ると見られている。

「具体的には菅官房長官の操り人形になるだろう。知事選候補者選定の段階から、これだけ『鈴木ありき』で後押しをした官邸とその意向を忖度した自民党道連会長の世話になれば、カジノ誘致や泊原発再稼働やJR廃線問題で中央に逆らえるはずがない。神輿に担がれた状態になるだろう」(前出・道政ウォッチャー)

 8日、石川元衆院議員は札幌市内のホテルで記者会見し、無所属での立候補を正式に表明。また道内の立民や国民、共産、社民なども石川元衆院議員を野党統一候補とすることを確認した。「中央依存VS地方自立」の構図が浮き彫りになった。出馬会見で石川氏は、富山生まれの元官僚の高橋知事道政16年間を「中央依存体質が続いた」と総括する一方で、市町村長や経済人らから意見を聴く北海道のダボス会議「北海道経営会議」創設を“目玉政策”として掲げ、地方分権自立(脱中央依存)を目指す姿勢をアピールしたのだ。

 個別の主要政策(争点)でも鈴木市長との違いは明確。カジノを含むIR誘致について「鈴木市長は『経済的にプラス』と言っているが」との私の質問に対して「経済成長に資するか疑問だ」と明言。鈴木市長が出馬会見で全く触れなかった原発政策についても「脱原発の立場で原子力に頼らない北海道を目指す」と冒頭説明で訴え、続く質疑応答でも泊原発再稼働に慎重な姿勢を繰り返した。さらにJR北海道の廃線問題でも「赤字路線を維持すべき」との立場を強調しながら、安すぎる貨物料金アップやJR東日本との連携などの抜本的対策実現への意欲も示した。赤字路線を国策で維持する海外事例に目を向けない地方切捨ての安倍政権に対して、出馬会見で異議申立てをしたともいえるのだ。

 北海道知事選は与野党激突の構図であると同時に、辺野古新基地建設強行で保守分裂・オール沖縄誕生となった沖縄県知事選と同じ「中央(官邸)依存路線VS地方(オール北海道)自立路線」という様相も帯びてきたのだ。北海道知事選から目が離せない。

最終更新:2019.02.10 07:04

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