ゴーン逮捕で日本の“中世並み”司法制度に海外から一斉批判! それでも特捜部は自白強要のために長期勾留するのか

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カルロス・ゴーン著 『ルネッサンス 再生への挑戦 』(ダイヤモンド社)

 日産自動車のカルロス・ゴーン会長の劇的な逮捕をめぐる報道は、日本国内はもとより、国際的な大ニュースとなった。周知の通り、ゴーン氏にかけられている容疑は役員報酬約50億円の虚偽記載をめぐるものだが、そんななか、海外からは日本の司法制度に対する批判が殺到している。すでに国内の報道各社も伝えているように、ゴーン氏が日本で置かれている状況を、仏有力紙「フィガロ」「ル・モンド」などが一斉に批判したのだ。

〈仏紙フィガロは、刑事事件に詳しい日本の弁護士に取材するなどし、「家族が面会できる可能性は低く、できたとしても15分程度。面会での会話は日本語しか認められない」と報道。仏誌ルポワンは「日本語を話さないゴーン容疑者夫妻にとって非常に厳しい勾留条件だ」と伝えた。〉(時事通信)
〈大手紙ル・モンドも21日、ゴーン容疑者の逮捕について「日産からゴーン会長を追い出すための陰謀だったのではないか」とするルノー関係者の声を伝えた。〉(読売新聞)
〈仏経済紙レゼコーも「ゴーン氏の拘束はどのようなものか?」と題する記事を配信。最大で20日以上拘束されることなどを伝えた。
 フランスでは容疑者が拘束された際、捜査当局による聴取の際に弁護士が同席でき、拘束期間もテロ容疑をのぞき最長4日間(96時間)と定められている。このため、ゴーン容疑者の環境がとりわけ厳しく映ったようだ。〉(朝日新聞)

 こうした指摘が次々と海外メディアを賑わすのは、ヨーロッパ諸国では推定無罪の原則や被疑者の人権がきちんと確立されているからだ。一方、日本の司法にはいまだ戦前と変わらない、逮捕=罪人という非民主主義的な捜査が横行している。今回、ゴーンというフランス国籍(フランス、ブラジル、レバノンの三重国籍)の有名人を逮捕したことで、改めてその部分に批判的な視点が注がれ始めたということだろう。

 もっとも、日本の司法制度の問題は、これまで国連からも再三指摘されてきた。なかでも有名なのは2013年5月、ジュネーブでの国連拷問禁止委員会での一幕だろう。これは、公務員などが情報収集のために身体的・精神的な苦痛を与える行為や、その他の非人道的ないし人間としての品位を傷つける扱いの防止を定めた国際条約(1987年発効の通称「拷問禁止条約」、日本は99年に加入)に関する、6年ぶりの対日審査でのことだ。

 日弁連代表団の一員として傍聴した小池振一郎弁護士のブログによれば、委員会では〈取調べに弁護人の立会がないのはなぜか、と質問され、日本政府が、取調べの妨げになるからなどと答えたり、取調べ時間が制限されていないという指摘にも、誠意をもった回答をせず…というように、日本政府が不誠実な官僚答弁に終始していたから、委員たちはいらだっていた〉。そうしたなかで、モーリシャスのドマー委員が「(日本の司法制度は)自白に頼りすぎではないか。これは中世のものだ。中世の名残りだ。こういった制度から離れていくべきである。日本の刑事手続を国際水準に合わせる必要がある、とコメントしたというのだ。

 この委員の指摘に対し、日本政府代表である外務省の上田秀明・人権人道大使(当時)の反応が、動画として残っている。上田大使は「日本は中世ではない」「日本は(刑事司法について)いちばん先進的な国のひとつだ」「笑うな! なぜ笑っている! 黙れ!」と英語で激昂。そのまったく説得力のない感情的な発言は、まさしく日本の後進性を国際社会に再確認させた瞬間だった。

容疑を否認したら数ヶ月以上、勾留され続ける日本の中世並み“人質司法”

 今回のゴーン氏の件で、この「中世」並の日本の刑事司法が改めて注目されているわけだが、今後、この批判は世界にいっそう広まっていく可能性がある。というのも、いまはまだ、批判の論点が「弁護士が同席できない」「家族との接見制限」「20日間の勾留」にとどまっているが、今後、ゴーン容疑者は欧米ではもっとあり得ない状態に置かれる可能性があるからだ。

 それは、起訴後の長期勾留である。そもそも、日本の刑事手続における「勾留」は、刑事訴訟法60条等により「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」かつ、「被告人が定まった住居を有しないとき」「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」のいずれかを満たす場合に可能で、起訴前の勾留期間は最大20日だ。

 ところが実際の運用では、「証拠隠滅」や「逃亡」などの恐れとは全く無関係に、とにかく容疑を否認したり無罪を主張する容疑者・被告人を長期にわたって身柄拘束することが常態化している。そして接見禁止をかけたり保釈請求の却下を繰り返すことで孤立させ、肉体的・精神的に追い詰めながら、捜査機関が釈放をチラつかせて自白を迫るのだ。こうした行為は「人質司法」と呼ばれ、人権侵害や冤罪の温床として長年問題視されている。

 最近では森友学園の籠池泰典・諄子夫妻の不当勾留が記憶に新しい。籠池夫妻は補助金詐欺事件で、実に10カ月の長期にわたって勾留された。のちに無罪が確定した元厚労事務次官の村木厚子氏も、虚偽有印公文書作成および行使の罪などを否認したことで5カ月以上も勾留されている。ホリエモンこと堀江貴文氏も約3カ月間勾留された。これですら被疑者が否認しているケースでは比較的「短期」と言えてしまうのが恐ろしいところだが、2015年7月10日の衆院法務委員会に参考人として呼ばれたホリエモンは、勾留中の体験をこのように述べていた。

「単なる勾留ではなくて、私の場合は経済事犯でしたので、接見禁止命令というのがつきまして、担当の弁護士さん以外は誰にも会えない、そして雑誌、新聞の閲覧もまかりならぬということが94日間続きまして、非常に孤独で隔絶された世界におりました。これは、被告人、被疑者にとっては非常に精神的な不安になっておりまして、かなり精神的プレッシャーになるので、脳の記憶が書きかえられてしまうぐらいの記憶になります。これは村木(厚子)さんもおっしゃっていましたけれども、自分がやっていないことをさもやっているかのように思ってしまう」

 被疑者を外界から遮断し、完全に捜査当局のコントロール下に置いて自白を強要する長期勾留は、はっきり言って「認めるまで外に出さんぞ」と脅しているようなものだ。ここには、近代法の大原則である「推定無罪」がまったく働いていない。また、日本国憲法38条では〈強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない〉とされているが、「人質司法」においてはこれも事実上無視されているに等しい。国際的にも強く批判されて当然だろう。

特捜部がゴーンを長期勾留したら、フランス政府は必ず抗議をしてくる

 そして、この「人質司法」と悪名の高い日本の長期勾留は、今回のゴーン容疑者に適用される可能性が非常に高い。というのも、本サイトが先日の記事で指摘したように、この逮捕はかなり無理があり、ゴーン容疑者の自白が不可欠だからだ。

 今回、東京地検特捜部は日産の幹部らと司法取引をしてゴーン逮捕に踏み切ったが、容疑の「有価証券報告書過少記載」は会社側も把握して同意していた可能性が高い。もし、この容疑だけでゴーン容疑者を立件したら“日本の検察が社内クーデターに協力するためゴーン会長を狙い撃ちした”と国際社会から批判されるのは、必至だろう。

 検察としては、そうならないように、ゴーン容疑者の「特別背任」をなんとしても立件しなければならないのだが、しかし、それも、報道されている不動産の購入などだったとしたら、かなり無理があり、「損害を与える」意志を立証する必要が出てくる。つまり、どうしてもゴーン容疑者に背任容疑を認めさせる必要が出てくるのだ。

「おそらく検察は、ゴーン容疑者を20日の勾留期間中に有価証券報告書の過少記載で起訴し、その後も長期勾留をして自白を迫り、特別背任を認めさせようとするでしょう」(司法担当記者)

 もっともそうなったら、海外メディアはもちろん、フランス政府も黙ってはないだろう。人権の観点から不当な拘束がなされないよう、必ず抗議の声をあげるはずだ。そのとき、外圧に弱い日本政府は常態化している長期勾留をあきらめ、ゴーン容疑者を特別扱いするのだろうか。

 いずれにしても、日本の「中世」なみの司法の後進性が、これから、かつてないほど世界に認識されることだけは間違いない。

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