マツコ・デラックスが小池百合子に共演NG宣言した理由…7年前のコラムで小池のことを「権力志向のホステス」

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上・ナチュラルエイトHPより/小池百合子オフィシャルサイトより


 7月31日に行われた東京都知事選挙で増田寛也に圧倒的大差をつけて当選した小池百合子新東京都知事。この小池百合子人気にあやかろうと、週が明けてからメディアはこぞってそのご機嫌とりに必死だ。あるひとりの超人気タレントを除いては。

 そのタレントとは、マツコ・デラックス。選挙翌日の8月1日に放送された『5時に夢中!』(TOKYO MX)のオープニングトークでは都知事選挙が話題に。TOKYO MXは都知事の会見を生中継することもあり、誰が都知事になるかは局を左右する大問題でもあるため、司会を務めるふかわりょうはマツコに向けてこう質問を投げかけた。

「マツコさん、MXテレビ的にはどうなんでしょう? 良い決定だったんでしょうか?」

 100万票以上の大差をつけて勝利をおさめた新東京都知事に対して悪口を言う人間などメディア上には皆無。当然、マツコもそうかと思いきや、予想外の言葉が飛び出した。

「まあ、都知事なんて誰がやったって一緒ですからね」

 ニコリともせず吐き捨てるようにマツコはこう語る。思いがけない回答に面食らったふかわは、何とかしてマツコから小池百合子に対して好意的な意見を引き出そうと、焦りながらこう続ける。

「でも、小池さんだったら、もしかしたらここ(『5時に夢中!』のスタジオ)に来てくれそうな雰囲気もありませんか?」

 この言葉が逆効果だった。ふかわの提案に対し、マツコは苦笑いを隠すこともなく、心底呆れかえった表情で驚きの「共演NG」を叩きつける。

「あ、じゃあ、(私の出ていない)他の曜日にしていただけますか」

 小池百合子のことなど話したくもないというマツコの姿勢に、これで都知事選に関する話題は強制的にシャットアウトとなった。

 当サイトでもお伝えしているように、マツコ・デラックスといえば、かつては鋭い毒舌を吐くコラムニストとして名を馳せていたが、いまでは大手企業のCMに複数出演したり、キー局でも何本もレギュラーを持っているメインストリームのど真ん中にいるような存在。それとともに、言葉の棘がなくなったことを指摘されている。そのことには本人も自覚的で、今年の4月に出版された「SWITCH」(スイッチ・パブリケーションズ)Vol.34 No.5号では、「ずっとバキバキに尖ってられているかと言われたら、やっぱりいろんな人と関わってきて、いろんな人に迷惑を掛けることも知り、丸くなってきちゃうわけじゃない」と予防線を張っていたほどだ。

 そんなマツコ・デラックスがどうして、ここにきて、最も悪口を言いにくい相手である小池百合子に対して「共演NG」を叩き付けたのか?

 その理由を探るべく、マツコの過去の発言を探ってみた。するとマツコは、今から約7年前、「サンデー毎日」(毎日新聞出版)2009年8月16日号に掲載されている自身の連載で一度だけ小池百合子について書いていた。

 コラムではまず「政界渡り鳥」の異名をもち、次から次へと権力をもつ男に擦り寄っては離れていった彼女の政治人生を揶揄する。

〈ここに来て、小泉純一郎の悪行に従順な国民が気付いてしまったんで、とんと話題に上る機会も減ってしまったけど、小池百合子なんて、まさに男どもにひらひらと飛び移っているタイプじゃない。
 当時日本新党の細川護煕、民主党(当時新進党)の小沢一郎、そして、自民党の小泉純一郎と、よくもまあこれだけ三者三様な男どもに合わせて来られたと感心する〉

 そしてマツコは、小池百合子が隠そうともしない「権力欲」を皮肉るのだが、一方で、女性が独力でのし上がっていくことが難しい状況であることを理解し、だったら、男たちを利用して成り上がってやるという選択を認める発言もしていた。

〈まず第一に、彼女は権力志向よね。きっと、日本初の女性首相になることを望んでるんでしょうが、そのチャンスが訪れるであろうその日まで、それが彼女の本意か不本意かは別にして、いわゆる男どものホステスをすることが最終目的に繋がるのであれば、そのしたたかさは間違いではないわ〉

 そのうえで、マツコがひとつの手本として持ち出したのが、マドンナだった。

〈アタシはそんな時、必ずマドンナの顔が浮かぶんだけど、男性のセックスシンボルだった彼女が、男性の為のセックスではなく、自分自身の為のセックスであることを表現し、結果として、女性の権利、女性の自由を表現したのは、部外者であるオカマのアタシでも身震いしたほどよ〉

 マドンナが下積み時代、ポルノまがいの映画に出演したり、ヌードモデルなどの仕事までして名前を売ろうと躍起になっていたのは有名な話だ。ただ、それは、男たちの下衆な欲望を自分の成功のための踏み台に利用しただけだった。そしてスターダムにのし上がるとマドンナは、一転して「強い女性」「自立した女性」のイメージを世界中に広め、マツコの言う通り世界を変えた。

 特に、1989年にリリースされ大ヒットした「エクスプレス・ユアセルフ」は、女性には自分たち自身の愛を追い求める権利があるし、誰に縛られることもなく自由に生きていいのだと高らかに歌い上げており、フェミニズム讃歌としてテレビドラマ「Glee」でもカヴァーされるなど、30年近く時が経った現在でも愛され続けている。

 当時のマツコは、小池百合子の「政界渡り鳥」っぷりには微妙なものを感じながらも、それは単なる「ステップ」であり、いずれマドンナのような存在になってくれればそれでいい。そう思っていた部分もあったのかもしれない。前述のコラムは半分留保しつつもこのように締めくくられている。

〈小池百合子がそうだとは言わないけど、きっと日本にも、そんなしたたかな、しなやかな女性が、女性政治家が現れてくれるんじゃないかって、そう信じて見続けてみるわ……〉

 しかし、その小池百合子が都知事という権力を手に入れた今、マツコは冷たく共演拒否を言い放った。

 その理由はおそらく、小池百合子の方向性がマドンナのそれとは180度真逆のものであることがわかったからだろう。小池にとっては、地位や権力を手に入れることだけが最終目的であり、女性の自由や人権なんてつゆほども考えていない。むしろ、本サイトで度々指摘している通り、権力奪取のためには、改憲や核武装を叫び、在特会のようなヘイト勢力と平気でつるむただの「保守オヤジ」でしかない。そのことを完全に理解したのではないか。

 もしかしたら、過去にマドンナを重ね合わせてほんのわずかでも期待をしてしまったことへの後悔が、怒りを倍増させていたのかもしれない。

 いずれにしても、マスコミがこれだけ小池百合子を絶賛する中で、その本質を見抜き背を向けるとは、さすがマツコというほかはない。ぜひ、キー局でも同様のその批判的姿勢を貫き、小池に騙されている都民の目を覚まさせてやってほしいと思うのだが、それはやはり無理な相談なのだろうか。
(井川健二)

最終更新:2016.08.04 11:07

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