フジ番組審議会で林真理子が月9『いつ恋』めぐり暴言! 介護職という設定に「あの容姿ならもっとラクな仕事ある」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
itsukakonokoi_10_160314.jpg
フジテレビ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』番組サイトより


 有村架純、高良健吾主演のフジテレビ月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』。現在、平均視聴率は9%台と振るわず、くわえて有村が介護職、高良が引っ越し業と、それぞれ厳しい労働環境のなかで苦しい生活を強いられていることもあって、「暗すぎる月9」と呼ばれている。

 そんななか、この『いつ恋』が議題となった2月のフジテレビ番組審議会で、さる“有識者”からこんな声があがった。

「ちょっと職場が過酷すぎて、いくらなんでも看護師の職場、あれだったら訴えられるんじゃないかというくらい。ブラック企業そのままのあの引っ越し屋さんも変」

 こう発言したのは、フジの番組審議委員である作家の林真理子。しかも驚くべきことに、林はつづけて、こんな言葉で苦言を呈したのだ。

「これだけ二人とも素晴らしい容姿をしていたら、ガールズバーへ行くとか、ショップの販売をするとか、いくらでも楽な労働があるだろうと思ってしまう」

 有村や高良レベルの美人・イケメンなら、介護や運送業に就かずに水商売とか販売とか、“楽な仕事”をやればいいのに──。職業差別や仕事への貴賤意識が滲み出すぎていて、正直ドン引きを禁じ得ない発言である。

 まず、林の指摘と同様に、介護施設で契約社員として働く主人公の劣悪な労働環境の描き方に対しては、公益社団法人日本介護福祉士会が「影響の大きさも考えて頂きたい」という意見書をフジに提出。だが、視聴者のあいだからは「これが介護現場の実態」という声も大きい。ドラマでは規則外勤務を平気で強いられたり、契約社員が使い捨てられたり、時給がまったく上がらないなどの描写が出てくるが、いずれも実際の介護施設で日常的に頻発している問題。「職場が過酷すぎて」と林は言うが、これが日本の現実なのだ。

 しかも、きちんとドラマを視聴していたならわかると思うが、有村演じる主人公は介護の仕事に使命感や責任感、充実感をもっている。「楽な仕事はたくさんあるのに」という意見こそ、世間に蔓延る介護職に対する偏見そのものではないか。

 さらに、ここで林が同時に露呈している“かわいいなら水商売で楽に稼げるのに”というのは、悪質なオヤジ意識だ。容姿端麗なら男に寄生し、人並み以下なら過酷な労働も致し方ないとでも林は考えているのだろうが、それは男社会の論理、女を容姿で分断する思考でしかない。そもそも林は女が女に抱くミソジニーを描かせたら右に出る者はいない作家だが、その女・女間のミソジニー自体も男社会が生み出し、温存させつづけている価値観だ。つまり、いつまで経っても林は男性側の意識から離れられずにいるから、このような暴言が吐けるのだろう。

 だが、皮肉にも、林のこうした男社会的な価値観によっていかに女性が生きづらさを抱えているかという点をも、『いつ恋』は描いている。主人公は1話目から、美人ゆえに資産家から結婚を申し込まれ、貧窮した養父に一方的に結婚させられそうになるし、田舎から東京に上京してきた別の女子は、めぐまれた容姿と若さは対価を得られる価値であることを知る一方、危うい目に遭ったりする。つまり林の“かわいいなら介護などせず水商売で楽に稼げるのに”というような差別観を、『いつ恋』はすでに批判的なかたちで物語のなかに組み込んでいるのだ。

 さらに脚本を手がける坂元裕二は、過酷すぎる労働環境や働けども賃金が上がらない状況のみならず、現状のおかしさを訴えても「対案を出せ」「すべては自己責任」だと問題を押し付ける社会の歪みをも描いている。この社会を覆っている生きづらさ、それを克明に描かずしていま現在の恋愛は描けない……『いつ恋』からはそんな坂元の覚悟が感じられるが、そうした創作における現実との誠実な向き合い方が、作家であるのに林にはどうやら伝わらないらしい。

 こうした番組意図も理解できない人物が番組審議会のメンバーであり、平然と差別意識を開陳させて疑義を呈する……。議論のレベルの低さには閉口してしまうが、しかし、番組審議会には、もっと深刻な問題がある。それは権力に迎合する場になっているという問題だ。

 テレビ朝日の放送番組審議会では、委員長を見城徹・幻冬舎社長が務めているが、見城氏といえば安倍首相とは公邸で“組閣ごっこ”写真を一緒に撮るほどの昵懇の仲で、早河洋・テレ朝会長と安倍首相をつなげたのも見城氏だ。昨年の『報道ステーション』をめぐる古賀茂明氏の更迭問題にしても、見城氏のパイプによって安倍首相と関係を深めた早河会長が『報ステ』の政権・原発批判路線からの転換を迫っていたなかで起こった問題だった。しかも見城氏は、昨年2月、この番組審議会の席で“『報ステ』は政権擁護もするべき”との発言を行ったと「週刊ポスト」(小学館)は報道している。

 そもそも放送番組審議会とは、放送法第6条で「放送番組の適正を図る」ため、放送事業者に設置を義務づけられているものだ。権力の介入を許さない放送法の理念から考えれば、放送番組審議会こそ“政治的公平”が求められ、本来なら放送が権力の言いなりになっていないかどうか、放送番組審議会が厳しく内容をチェックするべき場である。とくに放送法を政権が曲解して、政治的介入を進める現在は、放送番組審議会が自由な報道・番組づくりを行えているかを局や制作者に問わなければならない。しかし現状はまったく違い、権力におもねる人物が委員長という座におさまり、フジでも熱烈な安倍首相応援団の一員である八木秀次・麗澤大学教授が委員を務めている。

 あからさまな権力側の人間を重用し、本来あるべき機能も果たさず、権力擁護や差別発言が飛び交う。しかもキー局5社は、この番組審議会の模様を自局の自己検証番組内で少し放送するだけで、HPにのせる議事録では都合の悪い発言をカットし、発言者の明記も行っていない(NHKも発言者は明記せず)。こんな体たらくでは、テレビはもっと悪化していく一方だと思わざるを得ないが……。
(水井多賀子)

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

フジ番組審議会で林真理子が月9『いつ恋』めぐり暴言! 介護職という設定に「あの容姿ならもっとラクな仕事ある」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。フジテレビ介護林真理子格差水井多賀子の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 百田尚樹『日本国紀』に“Yahoo!知恵袋コピペ疑惑”
2 直木賞受賞『宝島』が突きつけた「沖縄問題」の本質
3 三浦大知が歌う歌は天皇皇后の沖縄への想い
4 櫻井よしこは嘘つきだ!小林節が告発
5 稀勢の里「ナショナリズムのアイコン」の相撲人生
6 沖縄県民投票“不参加”指南の背後に安倍官邸の存在か!
7 “バンクシー”のネズミはOKで安倍首相の顔写真にヒゲはNG?
8 DA PUMPがEXILEに挑戦状
9 三浦瑠麗が松本人志の悪質セクハラ発言を「問題ない」と擁護
10 つんく♂が秋元のメンバー差別に
11 元旦朝生のウーマン村本は間違ってない
12 ネトウヨ高須院長に息子が苦言!
13 古市憲寿「平成くん、さようなら」と「終末期医療打ち切れ」論
14 竹田恒泰が父の五輪汚職捜査に「フランスは皇室がないからひがんでる」
15 国連も「組み体操」の危険性を指摘!
16 追悼!市原悦子が生前語った安倍政権への怒り、反戦の思い
17 百田尚樹の「改憲PR映画」がトンデモ!
18 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
19 戦争専門家が集団的自衛権の嘘を指摘
20 収賄疑惑の甘利大臣がバンダイとも
1 追悼!市原悦子が生前語った安倍政権への怒り、反戦の思い
2 クイーンのB・メイ辺野古署名に『ボヘラプ』鑑賞の安倍首相は…
3 所ジョージが沖縄米軍基地反対ソング! 
4 竹田恒泰が父の五輪汚職捜査に「フランスは皇室がないからひがんでる」
5 ウーマン村本、ローラ…権力批判芸能人を排除する醜悪メディア
6 安倍首相の“サンゴ移植した”嘘を追及しない本土メディア
7 早野龍五・被曝論文に重大誤り!お墨付き与えた糸井重里の責任
8 産経と菅官房長官が「辺野古赤土投入問題」追及の望月記者を攻撃
9 仏司法当局が東京五輪誘致汚職で竹田恒和JOC会長の捜査開始!
10 日露外相会談の大失態を必死で隠す安倍政権
11 沖縄県民投票“不参加”指南の背後に安倍官邸の存在か!
12 ゴーン前会長出廷で露呈した特捜部の無理スジ国策捜査
13 外務省が日米地位協定のウソ説明をコッソリ修正
14 バカリズム、指原莉乃が外国人労働者問題で差別丸出し
15 安倍政権の反韓煽動が酷い!「韓国へ渡航禁止」まで主張
16 三浦瑠麗が松本人志の悪質セクハラ発言を「問題ない」と擁護
17 三浦大知が歌う歌は天皇皇后の沖縄への想い
18 “バンクシー”のネズミはOKで安倍首相の顔写真にヒゲはNG?
19 直木賞受賞『宝島』が突きつけた「沖縄問題」の本質
20 松本人志が指原莉乃に悪質セクハラ差別発言! 

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄