田原総一朗らの“高市発言”抗議会見で明かされた現場の生の声!「デモの映像流せない」「なくなったニュース山ほど」

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「私たちは怒っています!」という横断幕を掲げた会見の様子(YouTube「ANNnewsCH」より)


 先日本サイトでも伝えたように、高市早苗総務相が放送局に対して“電波を停止することもありうる”と恫喝発言を行ったことについて、テレビメディアで活躍するジャーナリストたちが2月29日、都内で記者会見を行った。

 会見では、呼びかけ人の田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏、岸井成格氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、青木理氏が「私たちは怒っています!」という横断幕を掲げて声明を発表、欠席した呼びかけ人のひとり、田勢康弘氏のコメントも代読された。会見では、高市総務相の「電波停止」発言への痛烈な批判が飛び出した。

「高市総務大臣発言というのは非常に恥ずかしい発言でして、ただちに全テレビ局の、全番組が抗議をすべき。断固抗議」(田原氏)

「(高市総務相は)憲法の精神あるいは放送法の精神や目的というものを知らないで、もし、ああいう発言をしているとすれば、もう大臣失格。資格ありません。そしてもし、仮に知っていて曲解をしている、ということであれば、意図的にある一歩を進めて、言論統制に進みたいという意図があると、思われても仕方がない」(岸井氏)

 さらに岸井氏は質疑応答のなかで、新聞意見広告を使ってTBS『NEWS23』と岸井氏に圧力をかけた安倍応援団「放送法遵守を求める視聴者の会」について、初めて言及。「全然間違いだし、ああいう低俗なアレにコメントするのは時間の無駄」「単純に言えばもうほんっとに低俗だし、品性どころか知性のかけらもない」と切って捨てた。

 しかし、このような高市「電波停止」発言、安倍別働隊への強烈な批判もさることながら、一方で、テレビ報道に長年携わってきた彼らは、安倍政権を忖度し、政治権力による恫喝行為に対して声をあげないマスコミの現状に対しても、強く懸念を表明した。会見の取材に来た記者たちに語りかけるように、“ジャーナリズムの危機”をこう訴えたのだ。

「全テレビ局の全番組がこれを抗議したら高市さんは非常に恥ずかしい思いをする。と、なるはずなんですね。ところが、残念なことにこの多くのテレビ局の多くの番組は、何も言わない」(田原氏)

「本会議場で、誰が拍手しなかったかを総理がチェックしているらしいと、複数の自民党議員から聞いた。(略)メディアの社長が総理と会食してるために、書く内容を自己規制している現場の記者たちと同じだなと、自民党議員たちと笑いあった。ジャーナリズムは死にかけている」(田勢氏のコメント)

「このままどんどん押し込まれてしまうと、本当にメディアとジャーナリズムの原則が根腐れしかねないなという危機感を僕自身、抱いています」(青木氏)

「自主規制とか忖度とか、あるいは過剰な同調圧力みたいなものが、それによって生じる萎縮みたいなものが、今ぐらい蔓延していることはないんじゃないかと、私は自分の記者経験のなかから思います」(金平氏)

 それぞれが一斉に“私たちはこのままでいいのか?”と問いかけたわけだが、彼らはテレビ業界でも活躍するメディア人である。とりわけ、金平氏は現役のTBS執行役員。つまり、この会見は、身内への真剣なダメだしでもあったわけだ。それでも、ここまで彼らがマスコミの腐敗を声高に追及せざるをえなかったのは、それだけ現在、異常事態が発生していることの証なのだ。

 実際、大マスコミは報じようとしないが、呼びかけ人たちの他にも、この声明に参加したいと申し出るも「拒否された」、あるいは、「どうしても参加できる状況ではない」という民放やNHKの現場の人間たちがいたと明かされた。会見ではそうした彼らの声が匿名で読み上げられたが、その内容は、安倍政権の報道圧力による現場の萎縮を、生々しく物語るものだった。

〈「それはやりたいのは分かるが我慢してくれ」「そこまでは突っ込めない」などと言われることは何度もあります。これまでなら当然指摘してきた問題の掘り下げなどについてです。政権批判と取られるのではないかと恐れ、自粛しています。これは報道側の情けなさではありますが、実際に、ある圧力によって影響を受けています。これまでの政権下でも公平性に注意して報道してきましたが、安倍政権になって特に自粛が強まっています。〉(在京キー局報道番組のディレクター)

〈2012年12月の選挙の際、自民党が選挙報道にあたっての要請文を放送各社の記者ひとりひとりを呼びつけて、手渡しましたが、これまで政党がこんなことをしたことはありませんでした。(略)実際に、こうした文書や動きが、報道現場に自粛の効果をもたらしています。(略)例えば、この文書を受けて街録を削りましたし、デモの批判的な映像も自粛しています。デモは市民の意思を表す動きですが、デモを警戒している官邸に気をつかったのです。ニュースの選択の段階で気をつかい、なくなったニュース項目は山ほどあり、数をあげたらキリがないほど気をつかっています。〉(在京キー局報道局の中堅社員)

〈気付けば、争点となる政策課題、例えば原発、安保を取り上げにくくなっている。気付けば、街録で政権と同じ考えを話してくれる人を、何時間でもかけて探しまくって放送している。気付けば、政権批判の強い評論家を出演させなくなっている。私たちは今までどおり自由に企画を提案しても、通らないことが多くなったり、作ったものに対しても直しを求められることが増え、それがいつの間にか普通になり、気付けば、自由な発想がなくなってきているような状況だ。(略)若い新入社員などはそれをおかしいとは思わず、これを基準に育っている〉(在京のキー局報道局の若手の社員)

 安倍首相は国会で、「メディアは自粛していない。むしろ言論機関に対して失礼だ」とのたまったが、これが実態なのだ。前述の報道局若手社員は、高市総務相の「電波停止」発言で、「ああ、やっぱりこれ以上、政権批判はできないんだという絶望感みたいなものは、さらに加わった気がする」という。これを“公権力による報道圧力”と言わずして、なんと言うのか。

 しかし、彼ら窮地に瀕する現場のメディア人たちの必死の訴えは、この国の大マスコミには届かなかったらしい。

 会見には新聞各社の記者らも取材にきていたが、翌日3月1日付の朝刊を見ると、その扱いは、朝日新聞、毎日新聞でも1000字ほど。産経新聞はウェブ版でこそ数名の発言をひろったが、紙面ではたったの数行だ。読売新聞に関しては、声明の内容はおろか、会見があったことすら、一文字足りとも触れなかった。そして、いずれの新聞も、匿名で出さざるをえなかったテレビ局報道現場の悲痛な叫びについては、完全に無視したのだ。

 しかし、産経と読売に関しては、ある意味、今回の声明に触れたくないと思うのは当然だろう。言うまでもなく、このふたつの“安倍政権の御用紙”は、「放送法遵守を求める視聴者の会」の全面意見広告を掲載した新聞だからだ。当のテレビメディアに関わる人間たちが、死に体のジャーナリズムを蘇生させようと呼びかけているなかで、産経と読売は“言論弾圧広告”を全国にばらまいた当事者なのだから、まさに恥知らずとしか言いようがない。“権力のポチ犬”ぶりも度を超えている。

 安倍政権からの圧力に萎縮し、街の声を収録するときすら政府に批判的なものを避け、デモの模様を放送せず、国民の生命に関わる安保や原発の問題すら扱わなくなってしまったテレビ局。そして、こうした状況で、現場の人間がやっとの思いでSOSをあげても、その声を報じようとしない新聞──。

 会見のなかで金平氏は、自分たちの呼び掛けの大部分は会見の取材に来ている記者たちにあると語り、立場を超えた連帯の必要性を強調したが、どうやら、日本のマスコミは、政府の言論統制に対抗するという一点であってもなお、共闘できないらしい。この国に巣食うメディアの病は、とうとう末期状態にまできている。そういうことだろう。
(小杉みすず)

最終更新:2017.11.24 07:53

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