学費のためにソープで働く慶大生、売り専に走る男子学生も…カラダを売るしかない「貧困大学生」が急増中

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『女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル』(朝日新書/中村淳彦)

 親のスネをかじり、勉強もせずにコンパ三昧で青春を謳歌する。かつて大学生がこんな風に揶揄されていた時代が確かにあった。今思えばそれは良き時代だったのかもしれない。

 身体を売って学費や生活費を捻出するしかない。そんな大学生が急増しているという。そんな学生たちの実態をルポした『女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル』(朝日新書/中村淳彦)は衝撃的だ。

「今の女の子たちは昔みたいに遊ぶためじゃなくて、生活するため、学費を払うために、自分の意志でカラダを売っている」

 高齢の祖父母と統合失調症を患った母親を介護しながらデリヘルで学費を稼ぐ中堅大3年生。父親の稼ぎは介護や通院で精一杯なためだ。また父親がリストラされ月々10万円の奨学金を貰いながらデリヘルで働く明治学院大4年生も登場する。

 しかし、彼女たちのように家庭に特別な事情があるケースばかりではない。中流といわれる家庭でもそれは例外ではないことだ。現在、親の世代も生活することだけで精一杯で、バイトもせずに生活できるほどの仕送りを貰っている学生は今どき“いない”という。地方出身なら尚更だ。東北出身で慶応義塾大学に進学し、現在は大手一部上場企業に務める山城亜里沙さん(仮名24)は現在の学生が抱える様々な問題を集約したようなケースだ。

 山城さんは父親が地元サラリーマンで母親も訪問介護のパートをしており世帯収入は600万円ほどの一般家庭に育った。地元大学に進学することを希望した両親だが、優秀でもあった山城さんは慶応への進学を選び学費は自分で払うことを条件に両親を納得させた。仕送りは月5万円。しかし慶応の入学金は20万円で、毎年の授業料は約130万円。毎月11万円ほどが学費として必要だ。その他家賃、食費、交通費などで毎月14万5000円ほどかかってしまう。

「普通のアルバイトを1年間やってみたけど、経済的に時間的に無理だった。地方出身の大学生は、常に不安があるんですね。近くに頼れる人がいない。本当にお金がかかるから真面目に勉強したい、将来はちゃんと就職したいって意識がある。ちゃんと将来を見据えている女の子ほど、風俗を選択する傾向がある」

 そのため山城さんが選んだのは吉原の高級ソープだった。しかも単に学費や生活費を稼ぐためではない。来るべく就職活動に備えるためでもあった。普通のバイトでは就職活動中でもバイトを止められない。それではきちんとした活動さえできない。そんな思いから風俗を選択したのだ。

 そのため必死で性的サービスの技を学び大学3年の夏までの間の1年半、合計1620万円ほどソープで稼ぎ、540万円の貯金をした。

「まったく遊ばないで風俗までやって、それでやっと手にした就職活動という権利ですから。風俗をやっている女の子ほど本気で活動するんです。このときのためにがんばってお金を貯めてきたって。吉原の店には早稲田、明治、青山学院の現役大学生の友達がいました。慶応の学校内でも風俗やってるんだろうなっていう子は何人もいた。そういう子たちはみんな良いところに就職しましたね」

 勉強をする時間を確保し、将来のため、きちんとした就職活動をするために風俗を選択する。本書でもそれは「特別なことではない」と指摘されているが、ここまでしなければきちんとした就職はできず、エリートコースから脱落し、貧困層に陥ることが容易に想像できる。それが現在の“普通の学生”が置かれた暗澹たる状況なのだ。

 しかも風俗で学費や生活費を稼ぐのは何も女性だけではない。売り専や出張ホストなどカラダを使った風俗には男子学生が数多く流れてくるという。

 本書にはそんな一人である大学院生の山下亮太くん(仮名24)が登場する。山下くんは年金生活の祖母と2人暮らし。大学4年間は奨学金をもらい、家庭教師、新聞配達、デリバリーピザの配達などを掛け持ちし、昼夜問わずひたすらバイト漬けの生活を送ったという。だがこの時点で奨学金という“有利子借金”は480万円と膨大に膨れ上がっている。修士課程に進むにあたり、これ以上借金を増やすわけにはいかない。普通のバイト生活を続けると健康さえ害する可能性もあり限界を感じたと言う。

 そんな時見つけたのが時給7000円という“男娼”、売り専の世界だった。慎重な山下くんはまずは客として売り専を買い、その上でこの世界にはいることを決意した。

「男相手に性的行為なんてしたことないし、したいとも思わなかったから、果たして自分ができるのって不安まみれだった」

 案の定、初めて客にフェラチオをした時は「ウェっとなった。どうしようもない拒絶反応」だったという。しかもイカせることもできない。これではマズい、稼げないと思った山下くんは友人を温泉に誘い、必死に説得して友人を練習台にしたという。涙ぐましい努力をした末、山下くんは現在月に70〜80万円ほどの稼ぎを得るまでに至ったという。山下くんは現在のバイトをこう語っている。

「バイト詰めで寝る時間がないという生活より、単価が高くて短い時間でカラダを売った方がいい。それは今も代わらないです」

 勉強をするため、将来の夢を叶えるためにカラダを売るしかない。学生生活を支えるためカラダを売る学生たち。これが現在の格差・貧困が叫ばれる“平成型苦学生”の実情だ。

 さらに本書では高校を卒業したばかりの未成年に莫大な有利子借金を貸し付ける奨学金=貧困ビジネスの問題、公的予算を抑えるため高騰し続ける学費、学生を縛るブラックバイトなどに焦点を当てているが、そんな中で奨学金問題やブラックバイトに警鐘を鳴らす中京大学の大内裕和教授のこんなコメントが紹介されていた。

「日本はもう、壊れていますよ……メチャクチャです」

 だが、こうした“メチャクチャさ”は今後もどんどん加速するだろう。さらなる格差・貧困の固定化、教育の格差はものすごい勢いで広がり、さらに若者たちに貸し付けられた奨学金が将来を大きく抑圧する。そして安倍政権が謳う一億総活躍社会とは、こんなメチャクチャな格差社会を是正することなくひたすら拡充するものでしかないのだ。
(林グンマ)

最終更新:2015.11.07 08:08

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