安倍首相の「ニコ生」安保法制番組、来場者はたったの1万人! ムーディ勝山に負けた…

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“珍説”を披露し、ご満悦の安倍首相(YouTube「自民党公式チャンネル」より)


 安倍晋三首相が懸案の新安保法制について「国民に理解を求めるため」と称して始めた「ニコニコ生放送」の番組が悲惨なことになっている。7月6日(月)から5夜の放送予定で、すでに2夜分が終了したが、1回目の来場者がたったの10649人。2回目も12233人だけ。国民の1万人に1人しか見ていない計算だ。

 ちなみに、同じ7日に放送されていたイースタンリーグ、DeNA対巨人、つまりプロ野球の二軍戦の来場者数は32779人、6日に放送されたムーディ勝山が生歌を披露した「ニコラジ」が12743人。そう、安倍首相はあの「♫右から右から何かがやってくる〜」にも勝てなかったのである。

 しかも、安倍首相の場合は、親衛隊である自民党のネットサポーターズクラブが動員されていたはず。ネトサポ会員は公式発表では1万人、実数でも5000人はいると思われるため、実際、見ていた人数は……。

 さらに驚いたのが、番組終了後のアンケート結果だ。「ニコ生」はもともと視聴者の評価が甘く、アンケートはどの番組でもたいていいちばん評価の高い「とても良かった」が70%を超える(90%超も珍しくない)。しかも、安倍首相の場合はネトサポやネトウヨが動員されていることを考えると、100%近い視聴者が「とても良かった」と答えるはず。

 そう思いきや……「とても良かった」は58.9%しかなかったのだ。逆に、最低評価の「良くなかった」は21.9%で、これも他に比べて高かった。

 しかし、それもそのはずだ。内容が「安倍さんがわかりやすくお答えします! 平和安全法制のナゼ? ナニ? ドウシテ?」のタイトルどおり国民の疑問に正面から答えているならまだしも、使ったのは自民党チャンネルの「Cafe Sta」(カフェスタ)で、自民党所属の女性国会議員が“総裁”をヨイショしながら質問するという、まるで身内の宴会での挨拶のようなシロモノだったからだ。当然、番組開始早々から離脱者が相次いだ。

 最後まで付き合っていたのは、いわば“信者”だけだったといっていいだろう。モニター画面は安倍礼賛のコメントで埋めつくされ、そのたびに相方の女性議員が「いまの発言でよく理解できたとみなさんコメントしてくださってますね~」「たくさんの“8888”(パチパチ=拍手の意)いただいております〜、総裁!」などと気持ち悪いおべっかを使う。

 安倍本人は、さぞや気持ちがよかったのではないか。しかし、「国民に理解を求めるため」と言いながら“ホーム”で支持者を前にいくら説明しても意味がないのは明らかだ。説得しなければならないのは、その“外”にいる人たちだろう。つまり、この番組は国民の理解を深めることには何の貢献もしていないのだ。この辺り、活字媒体としての説明の場にゴリゴリの右派雑誌「WiLL」(ワック)を選んだこととソックリだ。

「Cafe Sta」を使うことについて、安倍は6日の自民党役員会で「(説明のため)テレビ番組に出たいが、どこも呼んでくれない」とぼやいていたと伝えられている。だが、厳しい質問をする人間が誰もいない空間で、安倍の奇天烈な自説を垂れ流す放送局はさすがにないだろう。安倍はその一方で、田原総一朗氏が司会を務める『朝まで生テレビ!』への自民党議員の出演を禁止したり、つい最近も元外務副大臣の岩屋毅議員がBS日テレの番組に出るのを止めたと報じられた。安倍自身も、日本外国特派員協会からの再三の会見要請から逃げまくっている。“アウェイ”での勝負を徹底して嫌う安倍の小心さと、法案に対する自信のなさの表れだろう。

 肝心な「Cafe Sta」での“説明”は壊れたテープレコーダー、もしくは頓珍漢を極めた理屈のオンパレードだ。たとえば、第1夜で新たに出てきた“珍説”が「新安保法制=戸締り論」だ。番組で安倍は、

「備えあれば憂いなしというのは、一般の家庭でも戸締りをしっかりしていれば泥棒や強盗が入らない。また、その地域や町内会でお互いに協力しあって、隣の家に泥棒が入ったのがわかったらすぐに警察に通報する。そういう助け合いがちゃんとできている町内は犯罪が少ない。これが抑止力なんですね」

 などと、滔々と語った。だが、安倍はこの話を持ち出すほんの数分前に、同じ町内会の“隣国”である北朝鮮を引き合いに出し、やれ拉致だテポドンだと散々脅威を煽っていたのだ。安倍はこうした矛盾や論理破綻がまったく気にならないようだ。中国はもとより、韓国とさえ「お互いに協力」し合うことができない関係になっているのは、いったい誰のせいなのか。

 政治学者の山口二郎氏が、さっそくツイッターで〈安倍がネットで戸締り論で安保法制の必要性を説いたそう。あまりのレベルの低さに嘆息する。(中略)戸締りならば、自分の家の備えを固めるだけでよいわけで、わざわざ自宅の外に出張って武力を行使するのは矛盾した話。もうちょっと勉強しろよ〉〈日本が協力すべき近所は、韓国、中国ではないか。(中略)安倍の理屈に従えば、隣国との関係改善に真摯な姿勢を見せることこそ、安全を高まる道となるはず〉などと批判していた。

 第2夜に飛び出したのが、集団的自衛権に関する“珍説”だ。

「例えばですね、私の友人でスガさんという人がいたとしますね。で、このスガさんがですね、家に強盗が入ってきて大変だと。というわけで私の家に電話がかかってきて『アベさん助けて!』と電話がかかってくる。『これからアベさん家に来て、一緒に強盗と戦ってよ!』と言われてもですね、これは私がスガさんの家まで行って、スガさんを助けることはできないです。これはねえ、憲法の制約があって、今度の改正でもそれはできない」
「では、我々が認めた集団的自衛権とは何かと言えばですね、例えば、アベシンゾーは生意気な奴だから今度殴ってやるという不良がいる。今夜殴ってやろうと言っている、そのときにですね、家に帰る。で、困ったなあと思っているときにですね、それを聞いた、私の友だちのアソーさんという人がですね、『オレはケンカが強いから一緒に帰って守ってやるよ』と言って、一緒に帰ってくれることになって、アソーさんは私の前を歩いてくれている。そこに3人くらい不良が出てきて、アソーさんに殴りかかった。でもこれは、私をやっつけようと思って出てきて、私の前にまずアソーさんを殴ったんですね。で、3対1ですから、私とアソーさんと一緒にですね、この人たち(不良)に対応する。私も、麻生さんをまず守る。ま、これはまさに、平和安全法制においてですね、私たちができる(こと)」
「友だち同士という感覚では(スガさんを)助けに行かなくてはいけないんですけど、アベ家が危ないわけではないですよね。しかし、私が襲われるという危険のなかでアソーさんが一緒に歩いてくれているということであれば、対応することができるよと、そういうことなんですね」

 これもまったく同じ。経済的利害も含めた複雑なパワーバランスで成り立っている国際社会と、強盗による被害や不良グループの抗争を同じ論理で語れてしまう頭の悪さ。しかも、普段、守ってくれるアソーさんが殴られそうになったら、喧嘩を止めるんじゃなくて、加勢して一緒に喧嘩するって、ようするに、完全に、アメリカ番長の仕切る不良グループに入って、抗争をやろうってことだろう。お前は『クローズ』の登場人物にでもなったつもりか。

 安倍がこだわるホルムズ海峡での掃海活動についても、封鎖されると日本の国民生活に重大な影響があるとの一点張り。経済的な理由で自衛隊を海外派遣することに批判があることについては、「石油やガスが入ってこないことになると、冬の寒い時期なら暖房にも影響が出るでしょうし、あるいは電気の問題、病院や車のことも。こうしたことで命を落とす人も出てくるんだろうなぁと……」と、どこまでいっても印象論のみ。一事が万事。緻密なデータや具体的な根拠に基づく反論がまったくできないのが、実は安倍の安保法制論議の特徴なのだ。

 それでも、今月の半ばには採決に持ち込むつもりだというから正気の沙汰とは思えない。

 ちなみに今後のラインナップは以下の通り。

7月8日(水)自衛隊員は危険にさらされる?
7月10日(金)平和安全法制は憲法違反なの?
7月13日(月)やっぱり心配。徴兵制。

 噂では、あまりの入場者の少なさにあわてた自民党本部がさらに動員をかけるとも言われているが、本サイトとしても、できるだけたくさんの人に見てほしいと願わずにいられない。安倍が自身で説明すればするほど、どんどん、安保法制のインチキと危険性がわかってもらえるはずだからだ。
(野尻民夫)

最終更新:2015.07.08 07:29

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