「平和と言い換えろ!」安倍政権が安保法制強行で「戦争」という言葉の取締りを開始

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
abe_01_150420.jpg
4月1日の参議院予算委員会で答弁する安倍首相(首相官邸ホームページより)


 安倍政権がめざす「美しい国」が北朝鮮や中国のような国であることがいよいよハッキリしてきた。国家や政府が決めたことには一切の批判や反論を許さないという方針で、メディアに圧力にかけていることは何度も指摘したが、今度は、国会でも言論狩りを始めた。

 社民党の福島瑞穂参院議員が国会で、一連の安全保障関連法案を「戦争法案だ」と述べたことについて、自民党が「一方的な決めつけだ」として議事録からの削除や修正を求めているという一件だ。すでに新聞・テレビでも報じられているが、福島氏の発言があったのは今月1日の参院予算委員会でのこと。安倍晋三首相への質問の際に、「安倍内閣は14本から18本以上の戦争法案を出す」と発言した。これに対して安倍首相が「レッテルを貼って、議論を矮小化していくことは、断じて甘受できない」と反論したが、福島氏も引き下がらなかった。

 たったこれだけのことだが、自民党は異様に問題視し、議事録から削除しろというのだから尋常ではない。ちなみに、国会で「戦争法案」という言葉が出たのはこれが初めてではない。たとえば、1999年に周辺事態法案の審議で共産党の議員が同法を「戦争法案」と批判したことがある。ところが当時の小渕恵三首相は「御党から言えば、戦争法案ということであると思うが」と応じている。当たり前だ。国会は言論の府であり、議員が自らの価値観に基づき言葉を選んで質問をするのが当然だからだ。

 安倍政権はいったい何を恐れているのだろう。実は、こうした“言葉狩り”的対応は、安倍政権のイメージ戦略──もとい、誤魔化し戦略の常套なのだ。

 わかりやすい例が、まさに安全保障法制の名称だ。安倍政権は、安全保障法制の一環で戦争をしている他国の軍隊を後方支援する恒久法(一般法)の名前を「国際平和支援法」にすることを決めた。これは、国際社会の平和と安全を目的に掲げて戦争をしている他国軍を支援するため、自衛隊をいつでもどこでも行けるようにするための法律だ。「支援」というのは、前線より後ろで、武力を使わずに他国の軍隊に食料や燃料を補給する活動を想定しているというが、戦争に協力することに変わりはない。

 しかも、ヘ理屈ではなく常識的に考えて、自衛隊が支援・協力するのは国際平和を実現するための「戦争」という行為であって、「平和」という状態を支援・協力するというのは日本語としてあり得ない。安倍首相が大好きなアメリカの「テロとの戦い」は、“WOT”(War on Terrorism)と呼ばれている。 まんま、戦争そのものなのだ。その戦争に協力するのだから、どう考えても「平和支援」でなく「戦争支援」だろう。福島氏の発言は、レッテル貼りでもなんでもない。

 では、なぜ安倍自民党があそこまで神経質になるかといえば、この言葉の言い換えによる誤魔化しこそが、安倍政権の本質といえるからだ。昨年4月に「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」と言い換えて閣議決定したのもそうだし、「残業代ゼロ法案」を「高度プロフェッショナル制度」(ホワイトカラーエグゼンプション)と呼んだり、「正社員首切り自由化」を「労働規制緩和」と言ったりするのも同じなのだ。いずれも、国民に対して正々堂々と説明できない、後ろめたい政策だから、言葉の言い換えによって誤魔化して乗り切ろうという、安倍首相らしいなんとも姑息な話なのだ。

 だからこそ、国民に法律の本質が丸わかりの「戦争法案」といった言葉が使われると、過剰な反応をするわけだ。今回は、たまたま国会が舞台だったので圧力が可視化されたが、実はこうした“言葉狩り”はマスコミに対しても日常的に行われているという。在京キー局の報道関係者はこう話す。

「最近話題の『公平・公正』と同じくらい言ってくるのが『意図をねじ曲げないように』というセリフですね。もちろん、ねじ曲げるつもりなど毛頭ありませんが、政権にとって都合の悪い解説をしたり、意見を紹介したりしただけで、意図をねじ曲げたことにされる。後方支援のための法案を『戦争支援』ととらえるか『平和支援』ととらえるかは事実ではなく評価の問題なのに。現場が萎縮するのは当然です」

 さらにここ最近はネトサポ(自民党ネットサポーターズクラブ、J-NSC)と呼ばれる連中の“活躍”も喧しい。ネットを使った自民党の応援団で、ネット上に自民党や安倍政権に批判的な言論を見つけては「事実のねじ曲げ」「レッテル貼り」「デマによる煽り」との書き込みを拡散させている。「一連の安保法制は戦争を推進させる」とか「自衛隊に死者が出る可能性がある」などと書こうものなら、たちまち袋叩きにあう。結果、政権に批判的な論評がマスコミからもネットからも姿を消すという寸法だ。

 国家に楯突く者は容赦なく取り締まる。「この道しかない」と異論をいっさい許さない。そして、自由にモノが言えない。安倍政権がいま粛々と進めているのは、そんな恐ろしい国づくりなのである。
(野尻民夫)

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

戦争のできる国へ──安倍政権の正体 (朝日新書)

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

「平和と言い換えろ!」安倍政権が安保法制強行で「戦争」という言葉の取締りを開始 のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。安保法制自民党自衛隊野尻民夫の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 りゅうちぇるが『zero』同性婚特集でも真っ当意見連発!
2 指原莉乃卒業でその処世術を考える
3 『NEWS23』駒田健吾アナが辺野古問題で涙を浮かべ
4 南青山の児相反対と『月曜から夜ふかし』の地域差別ネタ
5 沖縄出身のりゅうちぇるが「辺野古埋め立て中止嘆願署名」を紹介
6 萩生田が前川前次官にシンゴジラを観ろ
7 神社本庁、天皇の甥の最高権威・統理に怪文書
8 辺野古への土砂投入は“三文芝居”だ
9 マクロンと安倍の金持ち優遇はそっくりなのに国民の反応は真逆
10 『朝生』で百田尚樹が徹底論破され大恥
11 りゅうちぇるが慰霊の日に戦争、米軍基地への思いを
12 ブリーフ判事“厳しすぎる懲戒処分”の原因は安倍政権批判か
13 THE MANZAIウーマン村本のもう一つの凄さ
14 宮崎駿が『永遠の0』を酷評
15 川島なお美が近藤誠の診断を告発
16 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
17 つんく♂「アイドルの恋愛」発言に騒然
18 ネトウヨに読ませたい三冊(2)
19 田端信太郎問題でZOZO前澤社長の迷走
20 官民ファンドの高額報酬騒動は政権批判への意趣返しだった
1 水道民営化が参院委員会で可決!安倍政権と水メジャーの癒着
2 安倍政権の国会蹂躙がヤバすぎ! 議長が言論封殺、自民理事が暴力
3 THE MANZAIウーマン村本のもう一つの凄さ
4 水道民営化法案が強行成立! 池上彰、石原良純も危険性を指摘
5 安倍首相が外国人実習生死亡の事実に「知らない」と無責任答弁
6 河野太郎の「次の質問どうぞ」はマスコミの弱腰が生んだ
7 『NEWS23』駒田健吾アナが辺野古問題で涙を浮かべ
8 マクロンと安倍の金持ち優遇はそっくりなのに国民の反応は真逆
9 入管法改正をケント・ギルバートが批判
10 三浦瑠麗に自民党山口県連から54万円、田崎史郎にも計38万円
11 辺野古への土砂投入は“三文芝居”だ
12 沖縄・辺野古への土砂投入強行にアベ友企業が協力
13 浦沢直樹が大阪万博誘致を「万博という発想、古くさい」と批判
14 水道民営化で自然災害が起きても復旧が困難に
15 自民党が「護憲派を敵とみなしネガキャンせよ
16 順天堂大はコミュ力高い女子減点、柴山文科相が東京医大の差別擁護
17 維新が国会と野党の抵抗を「税金の無駄」
18 秋篠宮が「大嘗祭」には秘密の儀式が
19 “コピペ疑惑”百田尚樹『日本国紀』を見城徹・幻冬舎社長が絶賛
20 官民ファンドの高額報酬騒動は政権批判への意趣返しだった

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄