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岸田首相のオミクロン対策はザルだ! しかも入国禁止は外国人だけで差別性丸出し 目的は感染対策でなく右派のご機嫌とり
首相官邸HPより
岸田政権が打ち出したオミクロン株対策に評価の声があがっているが、これって本当に評価できるようなものなのか。
まず、岸田文雄首相は11月29日、オミクロン株の感染が拡がっていることを受けて30日0時から「全世界からの外国人の新規入国を停止する」と発表。昨日11月31日にはアフリカのナミビアに滞在歴があり成田空港に到着した男性がオミクロン株に感染していたことが発表されたが、後藤茂之厚労相はこの男性がナミビアの外交官だと公表した上で、同じ航空機に同乗していた乗客70人全員を濃厚接触者として扱うとした。
さらに、本日になって松野博一官房長官は、水際対策も強化として、在留資格を持つ外国人についても南アフリカなど10カ国からの再入国を原則拒否すると発表した。
こうした対応を対し、ネット上では「前政権と違って動きが早いことを評価します」「前政権に比べて、迅速な判断」「決断が早い…今までと違う」と岸田政権を評価する声が増加。つい最近まで10万円給付のクーポン支給に事務費が967億円もかかることに非難が殺到していたが、一気に挽回したかたちだ。
だが、ちょっと待ってほしい。乗客70人を濃厚接触者として扱うという対応は、いままで航空機で感染者が確認されても乗客全員を濃厚接触者としてこなかった対応がザルだっただけでしかない話だ。
さらに問題なのは、評価が高い「全世界からの外国人の新規入国を停止する」という措置だ。政府は外国人の新規入国を停止する一方、当初、日本人や在留資格のある人の再入国にかんして、南アフリカなどの指定された23の国・地域からの帰国者は国の指定施設で3〜10日間の待機、それ以外は自宅などで14日間の待機という入国規制を設けたが、言うまでもなくウイルスは国籍を選んだりするわけではないのだから、当然、外国人と日本人で切り分ける理由はない。実際、アメリカなどは南アフリカなど8〜7カ国からの渡航制限措置を取っているがアメリカ市民と居住者のアメリカ入国は認められており、外国人の入国禁止などという措置をとっているのはイスラエルくらいだ。
にもかかわらず、岸田政権は前述したように再入国にかんしても、日本国籍を有する人と在留資格がある外国人とを切り分け、在留資格がある外国人の入国を拒否するなどと言い出したのだ。
空港検疫ではいまだ精度の低い抗原検査…ザルだらけの対策なのに、外国人排斥でやってる感
しかも、岸田政権の対策はザルだらけだ。たとえば、日本人の再入国者に対する制限は、アフリカ10カ国からは隔離期間が10日間である一方、イギリスやイスラエル、国内2例目の感染が確認された人の出国先だったペルーなどは6日間、オーストラリアやドイツ、香港などは3日間。それ以外の国や地域からの日本人などの入国者は指定の宿泊施設での隔離ではなく自宅待機(14日間)となっている。だが、イギリスではオミクロン株の市中感染がはじまっているとみられ、すでに広範な国や地域に広がりつつあると考えるべきだ。しかも、空港検疫ではいまだにPCR検査よりも精度が劣る唾液による抗原定量検査が用いられている。水際対策を強化するというのならば、新規・再入国や国籍の区別なく、すべての入国者をしっかりと保護し、国の指定施設で10〜14日間隔離・PCR検査の実施という方針をとるべきだろう。
だいたい、岸田首相は「全世界からの外国人の新規入国を停止する」と言いながら、米軍人については日米地位協定を理由に対象から除外している。11月15日には成田空港の検疫でコロナ感染が判明した米軍関係者が隔離されることもなく民間航空機で沖縄に移動していたことが発覚したが、同様の問題がまたも起こる可能性があるのだ。
ようするに、岸田首相は見せかけだけ強い措置をとっただけで、実態は「俺は安倍・菅政権とは違う」というアピールと“外国人の排斥”が大好物の極右のご機嫌取りが目的でしかなく、かたや再入国者を万全の体制で保護するという責務を果たしておらず、感染拡大を助長しかねない状況になっているのだ。
いや、問題は水際対策だけではない。他国での広がり方をみても、すでにオミクロン株が国内に入っていても不思議ではない状態だが、国内の検査体制は相変わらず整っていないという問題があるからだ。
事実、岸田首相は総裁選時から「検査の拡充」を掲げてきたが、実行されたのは抗原検査キットの薬局販売の解禁くらい。一方、東京都ではいまだに発熱していないとPCR検査が実費となり行政検査を受けられないケースがあり、そのほかの自治体でも「喉の痛みと味覚障害があったのに検査に繋いでもらえなかった」という声があがっている。コロナに感染していても発熱症状が出ないことは十分考えられるのに、いまなお検査が受けられないのである。
岸田首相は11月12日におこなわれた新型コロナウイルス感染症対策本部で「感染拡大時にはワクチン接種者を含め、無症状者でも無料で検査を受けられるようにする」と明言したが、言っておくが首相に就任してからすでに約2カ月も経っているのだ。この2カ月のあいだに「誰でも無料ですぐに検査が受けられる」という他国ではスタンダードになっている体制を整えることはできたというのにそれもせず、その結果、新たな変異株の脅威に晒されようとしているのが現実なのだ。
“ヒゲの隊長”佐藤正久・自民外交部会長らはさらなる外国人排斥を主張
こんな岸田首相の株が上がっているのだから、呆れ果てるしかない。いや、それだけではない。岸田首相の打ち出した「外国人の新規入国停止」という差別的な部分だけがどんどん膨らみ、目的がオミクロン株対策でなく、排外主義に転化しつつあるのだ。
たとえば、“ヒゲの隊長”こと佐藤正久・自民党外交部会長などは「“特段の事情”という例外で3万3000人(の外国人が)入っている。日本人は4万人。日本人とほぼ同じ数が入っている」などと問題視し、さらなる外国人の規制強化を主張。さらに前厚労相の田村憲久衆院議員も、入国する外国人が完全にゼロになるわけではないことを踏まえて「決して安心できない」などと発言。田村前厚労相といえば、デルタ株がインドで猛威を振るっていた際、水際対策の強化として隔離期間を6日間から10日間に延ばすべきだと野党から追及されると「憲法の制約がある」などと言い出して拒絶した張本人で、それが大臣を辞めた途端、「決して安心できない」とは何を言っているのかという話なのだが、このように自民党は外国人の入国だけを槍玉にあげ、日本人などの再入国時の問題点を無視しているのだ。
しかも、これは自民党にかぎった話ではない。立憲民主党の早稲田ゆき・衆院議員は11月29日、厚労省に〈在留資格のある外国人の再入国も停止する措置を要請〉したとツイート。これに批判が殺到すると、翌30日に〈これはすでに外国にいる在留資格のある方(特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)の日本への再入国の禁止は求めておらず、日本にいる在留資格のある方(特別永住者は除外)が、今後、当該地域に出国して再び日本に入国することの禁止を求めたところです〉と釈明したが、感染症対策を国籍や永住権の有無で切り分けることに意味はなく、差別以外の何物でもない。
ようするに、自民党にしろ立憲にしろ、岸田首相が打ち出した「全世界からの外国人の新規入国停止」措置に評価の声が集まったことをいいことに、さらに外国人への差別を助長するような対策を声高に叫んでいるだけなのだ。
排外ナショナリズムを助長するだけの政治と、それに納得してしまう世論──。こんな体たらくでは、オミクロン株の流行を阻止できるはずもないだろう。
(編集部)
最終更新:2021.12.01 09:41
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