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自衛隊機撤収、アフガン置き去りの裏に日本大使館の無責任! 英仏や韓国は大使館が最後まで支援、日本は大使館員だけ先にトンズラ
茂木としみつオフィシャルウエブサイトより
いったい、何のためにアフガンまで行ったのか。本日31日、岸信夫防衛相が、日本人とアフガン人の退避のために派遣していた自衛隊機の撤収を命じたからだ。
周知のとおり、日本政府は、タリバンによる政権掌握を受け、アフガニスタンに残っている民間日本人と日本大使館など日本関係機関で働いていたアフガン人現地スタッフら約500名を退避させるために、自衛隊機3機をアフガンに派遣していた。
ところが、退避できたのはわずか日本人1名とアフガン人14名だけ。500人近い人を混乱状態のアフガニスタンに置き去りしたまま、撤収するというのだ。こんな非人道的なことが許されるのか。
今回の自衛隊機撤収は米軍の撤退完了を受けてのもので、31日をもって撤収というのはおそらく既定路線だったのだろうが、このままでは500人ものアフガン人を見捨てることになる。
あらためて問われるのは、初動の遅れとオペレーションのお粗末さだろう。日本人だけでなく、アフガン人のスタッフを退避させる必要があることはかなり早くから専門家が提案し、実際、韓国などでは、22日深夜には軍が現地に展開していた。ところが、日本は24日なってようやく自衛隊機が日本を出発するというのんびりぶり。その結果、26日に爆破テロが起きて、移送ができなくなったのだ。
しかも、この背景には、外務省と日本大使館の無責任がある。
本サイトでも28日に報じたとおり、日本の大使館員は民間人とアフガン人スタッフを残して、真っ先に退避。カブールが陥落した15日、岡田隆アフガニスタン大使はすでにアフガニスタン国内にはおらず、日本人の駐アフガニスタン大使館員12人も17日に全員、英軍機で出国した。
イギリスやフランスなど他国の大使や大使館員は退避せず、空港内に大使館機能を移転し、アフガン人のためにビザを発給し続けるなどしていたという。また390人のアフガン人退避に成功した韓国も、一旦退避した大使館員がアフガン人救出のためにカブールに戻り、空港までの移動手段となるバスの確保や現地スタッフへの連絡など現地のオペレーションに動いていた。
ところが、日本の大使や大使館員たちは自分たちだけとっとと先に逃げて、こうした救出作業を放り出していたのだ。
茂木敏充外相は呑気に外遊!中東歴訪もアフガン情報は全く蚊帳の外
無責任ぶりは、外務省のトップ・茂木敏充外相も同様だ。7月下旬はジャマイカ中米カリブ海諸国を外遊し、カブール陥落後の8月17日以降も、エジプトに始まり、イスラエル、トルコ、イラン、カタールなど中東を歴訪。中東まで出かけておきながら、ツイッターで歴訪の様子を報告する一方、アフガン情勢については一切ふれず。昨日30日になってはじめて〈8月31日の米軍撤収を前に情勢が一層緊迫感を増す中、アフガニスタンに関する閣僚会合に参加しました。G7、カタール、トルコの外相等との間で、アフガン情勢の評価、出国希望者の安全な退避、人道問題、テロ対策、今後の展望・対応等について率直に議論し、関係国間の緊密な連携を確認しました〉とツイートする始末だった。
こうした姿勢をみると、日本の外務省が考えていたのは日本人の大使館員の身の安全だけで、アフガン人スタッフを本気で救出する気なんて最初からなかったのではないか。
実際、日本は国連からも勧告を受けるほど難民受け入れに消極的というか難民拒否ともいえる姿勢をとっており、500人ものアフガン人スタッフと家族を本気で受け入れようと考えていたとは思えない。
国際社会へのエクスキューズのためにギリギリのタイミングで一応自衛隊機を派遣しただけ。失敗したら、憲法や自衛隊法、野党のせいにして、改憲に利用すればいい。それくらいに考えていたのではないか。
そう言いたくなるくらいに、今回の外務省と日本大使館の動きは、怠慢、未必の故意とでも言いたくなるほどに無責任で、お粗末だった。
本サイトでは、先日アフガン人救出をめぐる韓国の動きと日本の動きを比較し、いかに日本の初動が遅かったか、オペレーションがお粗末だったか検証・批判した。以下に再録するので、あらためてご一読いただきたい。
(編集部)
移送したのはたった一人、民間人と現地職員を置き去りの日本、390人を退避させた韓国
日本政府の棄民姿勢はコロナ対策だけではなかったらしい。タリバンが権力を掌握したアフガニスタンで、日本の自衛隊がJICA職員など民間の在留邦人や大使館の現地スタッフの退避作戦を展開したが、結局、日本人1人しか退避させられなかった。
アフガニスタン人については14人をパキスタンに運んだものの、これはJICAや日本大使館の現地職員ではなく、第三国から移送の依頼を受けた人たち。日本に関係するアフガニスタン人はそのまま置き去り状態になっている。
政府は26、27日の2日間で約500人全員を移送できるとしていたが、蓋を開けてみたら、このていたらく。
政府や防衛省は「26日に空港近くで自爆テロが発生し、タリバンの検問が厳しくなったため、多くの人が空港にたどりつけなかった」などと説明しているが、これは言い訳にすらなっていない。
それは、「韓国」と比べれば、明らかだ。韓国もアフガニスタンに多くの関係者がいたため、韓国軍が退避作戦を展開したが、大使館の現地職員や家族あわせて390人を韓国に移送。26、27日にはすでに、全員が仁川に到着し、手厚く保護されている。
なのに、日本が退避させたのはたったひとりの日本人(共同通信のスタッフ)。いったいこの差はなんなのか。ネトウヨや政権応援団は「日本は憲法9条のせいで動けなかった」などデマをわめいているが、憲法は関係がない。自衛隊が在外邦人を保護し、移送することは、自衛隊法84条の4で認められているし、空港までの保護もやりようはあった。
日本の退避作戦がこんなお粗末な結果に終わったのは、オペーレーションがなってなかったから、そして、政府に自国民や現地の人たちを本気で救う気がなかったからだ。
韓国の対応と比較をすれば、そのことがよくわかるはずだ。
韓国は空港に辿り着けないリスクを考えて6台のバス手配、米軍が同行
もっとも大きかったのは、初動の差だ。今回、韓国はかなり早い段階から退避を進めており、まず、17日の段階で、民間人も含めた在アフガニスタン韓国人を全員退避させていた。
そして、22日深夜には、韓国軍が現地に展開。同日、経由地のパキスタンの了解を取り付け、韓国大使館などに努めていたアフガニスタン人とその家族390人を移送するオペレーションを開始した。
すでに広く報じられているように、26日の爆破テロ以前から、カブール空港周辺は国外脱出のために多くの人が殺到するなど混乱状態が起きていて、空港周辺はタリバンの厳しい検問が敷かれていたため、自力で空港にたどり着くのが困難な状況にあった。
そこで、韓国は政府が6台のバスを手配。別の場所に集まった365人をバスに乗せて、空港に移送した。バスにはさらに、タリバンの厳しい検問を突破するために、米軍に同行してもらい、タリバンとの交渉を依頼していたという。
25日の時点で全員を空港に集め、C-130輸送機でパキスタンのイスラマバードに移送。26日に377人がKC-330輸送機で仁川に、残る13人も27 日に仁川に退避させている。
ところが、日本は日本人大使館員については17日に全員退避させたものの、現地スタッフについてはなかなか動こうとせず、自衛隊機が日本を出発したのは、24日だった。
韓国と日本でこんなに差がついたことを、一部のマスコミは「1日違いでたまたま移送できず」と、この差が偶然であるかのような報道をしていたが、初動の差は1日どころではない。自国民については1週間以上、現地アフガニスタン人スタッフについても、少なくとも3日は韓国より遅れを取っていた。
空港周辺でテロが起きる可能性は22日頃から米軍が呼びかけていたのに、日本はなかなか動こうとしなかったのである。
実際、旧タリバン政権崩壊後、政府特別代表として武装解除にあたった伊勢崎賢治氏も朝日新聞で「駐留米軍の撤退期限が今月末に迫る中、今月初めから自衛隊機派遣を含めた退避支援を政府に進言していたが、初動が遅れた」と語っていた。
しかも、日本は当初、移送はあくまで空港から国外に脱出する自衛隊の手配だけで、それ以外のケアはしていなかった。ようするに「空港までは自力で来い」という姿勢だった。
〈カブールに到着した自衛隊員や外務省職員は空港外に出られず、輸送機に搭乗したい人は自力で空港に入る必要がある。〉(読売新聞 8月27日)
〈退避を希望するスタッフらは自力で空港まで移動する必要があり、実際に空港までたどりつけるかが課題となっている。〉(朝日新聞 8月27日)
最終的には、韓国と同様、バスを出すことになったようだが、JAICAのアフガニスタン人スタッフらが政府のバスに乗り込んだのは、26日。出発直前に空港の爆破テロがわかり、結局、引き返さざるをえなくなった。
アフガン人スタッフ退避支援を放棄して真っ先に逃げた日本人の大使館員
こうした無責任な対応を見ていると、結局、日本政府は現地人のスタッフや日本の民間人なんて、どうなってもいいと考えているとしか思えない。
実際、オペレーションのお粗末さ以前に、日本の方針は人道や人権の観点から見てもありえないものだった。というのも共同通信によると、日本政府は民間NPOの現地スタッフも移送対象としたが、本人だけで家族の帯同を認めなかったというのだ。家族を置いていかなければならないとなったら、退避したくても退避できないだろう。
しかも、こうしたアフガニスタン人や民間の日本人置き去りの一方で、日本人の大使館員は17日の時点で、一足先に退避してしまっていた。カブールが陥落した15日、岡田隆アフガニスタン大使はすでにアフガニスタン国内にはおらず、日本人の駐アフガニスタン大使館員12人も17日に全員、英軍機で出国した。
これも、韓国との大きな違いだ。韓国の場合も、韓国人の駐アフガニスタン大使館員らは17日に一旦国外に退避している。しかし、このとき、韓国人の民間人全員をまず退避させており、自分たちは最後に退避。しかも、キム・イルウン参事官ら4人の韓国人外交官は22日に、アフガン人の脱出を支援するため、再びカブールに戻っている。
「Wow Korea」によると、 キム参事官は「アフガン人たちを韓国に移送しようとすれば、カブールに戻るしかなかった」と語ったというが、現地職員との連絡やバスの早期手配、タリバンとの交渉などは、彼らが現地に戻ったからこそ、できたのである。
一方、日本はどうか。日本の大使や外交官らはアフガン人スタッフや日本の民間人の退避支援を早々と放り出して、自分たちだけが逃げてしまったのである。これでは、いくら自衛隊機を投入したところで、スムーズな退避なんてできるはずがない。
日本政府の姿勢を批判しないマスコミ、「憲法9条」「自衛隊法」のせいにするネトウヨ
いずれにしても、日本政府によるアフガニスタン退避作戦がたった一人だけという大失敗に終わった原因が、日本政府の「大事なのは自分たち日本人の高級官僚の安全だけ、民間人やアフガン人なんてどうでもいい」という棄民姿勢にあることは明らかだ。
これはまさに、主権国家としての義務の放棄であり、厳しく糾弾されるべきだが、驚いたのは、マスコミがこれをほとんど批判していないことだ。
それどころか、「アフガンから日本人退避 空自輸送機でパキスタンへ」(共同通信)「“日本人がアフガン退避した”政府発表 残る日本人のため自衛隊待機」(FNN)などと、まるで自衛隊の努力で、日本の民間人が大勢退避したかのような見出しを打っていた。
また、退避が一人だったこと報じたメディアでも、NHKのように「日本人1人が自衛隊機でアフガニスタンからパキスタンに退避」と淡々と事実を伝えるだけで、批判的なニュアンスはゼロ。
結局、日本人一人しか助けられず、アフガン人スタッフを置き去りにしてきたことを批判しているのは、朝日、毎日などのリベラルメディアだけだった。
さらにひどいのが、ネットの反応だ。
8月27日、立憲民主党の福山哲郎幹事長がTwitterで、〈派遣された自衛隊員のご尽力に敬意を表します。しかし、なぜわずか1人なのですか。退避を希望する日本人やアフガン人のスタッフなど500人程度の想定だったのではないですか。ロシアも韓国もEUも数百人規模で退避しています。〉と、政府の姿勢を批判すると、政権応援団やネトウヨたちがこんな話のすり替えで、福山攻撃と政府擁護を展開したのだ。
〈そこまで言うなら福山センセが現地に行って500人助けて来いや〉
〈立憲民主党は自衛隊が現地で邦人救出できる法案を作ってくれるってことですね。
当然、武器使用も可で、捜索も出来るようにしますよね?よろしくお願いします。〉
〈よく言うなあ…自衛隊が活発に動くのを妨害してる勢力が、この言い草 自衛隊を国防軍と正式に認め、軍隊として動けるように、国会で採決決定して下さいよ!〉
〈法改正を邪魔しておいて、安全な場所からマウントを取らないで頂きたい。〉
〈福山先生のおっしゃる通り 邦人救出でも明らかなように国家公務員の自衛隊では限界がありすぎですね。憲法改正して自衛隊も軍隊になってもらわないといけませんね。〉
〈ぜひ、このような事態の際に、退避を希望する多くの方を救うことのできる能力を自衛隊に備えていただかなくてはいけませんよね!〉
ようするに、憲法9条や自衛隊法の限界で、邦人退避ができなかったというのだが、冒頭でも指摘したように、退避失敗と憲法は関係がない。韓国がそうしたように、外務省や大使館員が責任感をもって早くから動いていれば、とっくに全員を退避させることができたのではないか。にもかかわらず、そのことを批判せずに、改憲に結びつけるとは……。
いずれにしても、今回のアフガン退避をめぐる失態は、ふだん「国のために命を捧げろ」だの「国家と国民を守ルために改憲を!」とわめきたてている連中が、国民を守る気などひとつもないことを、証明したと言える。いや、それはこの間のコロナ対策でとっくに証明されていたことではあるが……。
(編集部)
最終更新:2021.08.31 09:46
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