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組織委の現役職員が五輪の異常な人件費と中抜き告発 日当は1人35万円どころか80万円!「政治、利権が絡んでこの金額に」
『報道特集』の取材に応じる組織委の現役職員
東京五輪によってパソナグループと電通が暴利を貪っている実態がまたも明らかになった。東京五輪組織委員会の現役職員が5日放送の『報道特集』(TBS)の取材に応じ、パソナや電通による異常な人件費と中抜きの実情を告発したからだ。
「お金の流れというのは我々も疑問に感じるところではありますので、この実態を知ってほしい」
そう言って今回、組織委の現役職員がまず言及したのは、高額な人件費問題だ。
本サイトでも取り上げてきたように(既報参照→https://lite-ra.com/2021/05/post-5901.html)、5月末になって組織委が会場運営を委託した企業と交わした契約書とその内訳書が流出。その契約書は東京五輪の42会場あるうちのひとつでバトミントンなどの競技がおこなわれる武蔵野の森総合スポーツプラザのもので、組織委は会場運営を大手広告代理店に委託。委託先の中心を担っているのは電通をはじめ、博報堂、ADK、東急エージェンシーといった大手広告代理店で、武蔵野の森総合スポーツプラザの委託先は東急エージェンシー。契約金額は税込みで6億2304万円にものぼる。
そして、内訳書によると、「本大会に向けての準備業務」を担うディレクターの1日当たりの「単価」は、なんと35万円。日数は「40日」となっており、つまり1カ月ちょっとで合計1400万円にものぼっていたのだ。
ところが、5月26日におこなわれた衆院文科委員会では、この契約書に記された単価について組織委の布村幸彦副事務総長は「必要な経費やバックヤードの費用を含むものと推測され、人件費単価そのものではない」などと否定していた。
しかし、今回『報道特集』の取材に応じた組織委の現役職員は、「これは1人当たりの単価だと思います」「人件費ですね。これは1日単価ですね」「実際の運営に当たる人数で当然、見積もりを出していると思う」と指摘。準備業務のディレクターの人件費が1日35万円だというのは間違いないと述べたのだ。
丸川珠代「30万円はマニュアル策定業務も入った金額」は嘘! 策定も本番業務も別枠で合計80万円
この組織委現役職員の証言によって、丸川珠代・五輪担当相の国会答弁が完全に虚偽だったことも明らかになった。
丸川五輪担当相は4月19日の衆院決算行政監視委員会において、毎日新聞が1日当たりの人件費単価が最高30万円である(その後、流出した内訳書では35万円だった)と報道したことに対し、「人件費単価を設定した契約ではなくて、各競技会場の設備の特徴を踏まえて、すごく詳細な分厚い運営計画というのをまずおつくりになる」「運営マニュアルを策定するというのに大変な労力がかかる」などと答弁。さまざまな業務を含めてのものだと説明を受けているなどと述べていた。
しかし、今回、『報道特集』で告発した組織委の現役職員は、35万円が「準備業務」だけの金額で、「運営マニュアル策定」などは別に報酬が支払われていることを指摘したのだ。
番組では、流出した内訳書をあらためて紹介し、会場運営計画策定業務のディレクターに1日25万円、準備業務のディレクターに1日35万円、会場運営業務にあたる運営統括に1日20万円という記述があることを説明。「組織委員会の現役職員はこれらを同一人物が兼ねる場合もあると聞いている」というナレーションのあと、現役職員が登場し、こう証言した。
「計画の策定にあたった人がもちろん大会の準備業務もおこないますし、本番業務もおこなうということですので、同一人物に支払われる額なのではないか」
そして、番組側の「いくらになるんですか」という質問に、現役職員はこう答えた。
「合計で(1日)80万円ですね」
つまり、組織委が広告代理店に1日当たりの人件費として、1人の人物に準備業務の35万円に、計画策定業務の25万円、「本番」での運営統括の20万円の合計80万円を支払っている場合があると証言したのである。
ちなみに内訳書を見ると、前述したとおり「準備業務」は1日当たり35万円×40日=1400万円、「計画策定業務」は1日当たり25万円×40日=1000万円、「運営統括」は1日当たり20万円×53日=1060万円が計上されている。つまり、1人に合計3460万円が流れるということになるのだ。
そして、この高額人件費について、組織委の現役職員はこう語った。
「一般的な感覚からしてありえない数字。本当にいびつだなと思う」
「それにはやはり政治的なものが絡んでいたりとか、利権的なものが絡んでくるからこそ、こういった額になっているんじゃないかと推察します」
組織委の計上人件費は1日計80万円なのにパソナが募集したマネージャー職の日給は1万2千円
この、組織委の現役職員が口にした「政治的、利権的なものが絡んでいる」という指摘は極めて重要だ。というのも、こうした高額人件費は、そのまま労働者に支払われるわけではないからだ。
本サイトでも言及してきたように、パソナグループは「人材サービス」カテゴリーで「東京2020オフィシャルサポーター」として東京五輪組織委員会と2018年に契約を締結。一方、会場運営を支えるスタッフの多くは派遣であり、5月26日の衆院文科委での立憲民主党・斉木武志衆院議員の質疑によると「パートナー契約では、人材派遣サービスはパソナにしか許されていない。43会場の派遣スタッフを頼むときはパソナに出さなくてはならない契約になっている」という。
しかし、パソナのHPに掲載されている東京五輪大会スタッフ(職員)の募集概要によると、責任を担うマネージャーでもスタッフでも時給は1650円(深夜時間帯は125%の割増賃金)で、日給にして約1万2000円ほど。仮に1日合計80万円のディレクター職でも実際には日当1万2000円しか支払われないのだとすれば、パソナの中抜き率は98.5%にもなるのである。
もはや「えぐい」という言葉しか出てこないが、パソナといえば、ご存知のとおり菅義偉首相のブレーンである竹中平蔵氏が取締役会長を務めている企業。そして、本サイトが報じたように、同社の2021年5月期の純利益予想額は、増減率で前期比約940%のプラス、前年の10倍強の数字になると見込まれているのだ。
東京五輪開催により、菅首相に近いお友だち企業があくどいピンハネ商売で甘い汁を吸う──。「政治的、利権的なものが絡んでいる」という発言の重大さがこれでよくわかるというものだが、しかし今回、告発をおこなった組織委の現役職員はさらに重要な問題に踏み込んだ。
前述したように、組織委は電通などの広告代理店に運営業務を委託しており、予算規模がもっとも大きいオリンピックスタジアムでは約35億円が支払われるというが、実際には電通などは下請け会社に再委託するだけ。だが、そこで電通などは「特別な報酬」を得ている。それが「管理費」だ。
この「管理費」は10〜15%が計上されており、オリンピックスタジアムの場合、管理費は10%。つまり、業務は下請けに再委託するだけだというのに、3億5000万円あまりが広告代理店に渡る計算になるのだ。
組織委の現役職員が「コロナ禍での福祉が重要ななかで、そういったお金の使われ方は、やるせない」
組織委の現役職員は「実際の現場の運営にあたるのは下請け。我々は当然、直でその現場の業者とやりとりさせていただくこともありますので、広告代理店はその仲介をするのみ。契約の仲介をするのみという状況」と証言。しかも、組織委内部でも代理店を通さずに業者と直接契約すべきという問題提起があり、「直で事業者と契約させてくださいと異を唱えた部署もあった」ものの、「現状は以前と変わらず従前どおり、聞き入れてもらえなかった」と言うのだ。
組織委内部からも、仲介するだけで数億円もの巨額が電通などの広告代理店に流れることに「おかしい」という声があがったというのに、無視されてしまった──。これは東京五輪がいかに「政治的、利権的」であるかということの証左ではないか。
今回、重大な証言をおこなった組織委の現役職員は、こうした金の流れに心を痛め、このように語っていた。
「組織委員会の会計でまかないきれない部分は東京都ないし国の負担に……税金で賄われると思いますので、こういうコロナ禍で失業率も増えていて、そういった人に対する福祉が当然重要ななかで、そういったお金の使われ方をしているのは、やるせないと言いますか、許せないと言いますか、ありえないんじゃないかと思います」
コロナ下に貴重な税金がパソナや電通などに流れ、竹中平蔵氏のような政商が懐を肥やす。菅義偉首相はいまだに東京五輪による感染拡大の指摘を聞こうともしていないが、開催強行の背景にはこうした極めて「政治的、利権的」な金の流れがある。そして、それと引き換えにされるのが国民の命と健康なのである。
(編集部)
最終更新:2021.06.08 08:26
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