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名古屋市長選で河村たかし優勢も…リコール不正渦中の田中事務局長が公表した河村市長との焼肉会食の領収証、不正署名めぐる発言
名古屋市公式HPより
明日25日、ついに菅政権の今後を占う補選が北海道・長野・広島でおこなわれるが、同時に忘れてはならない選挙がある。同じく明日投開票の、名古屋市長選だ。
この市長選は、現職の河村たかし氏と元市議会議長の横井利明氏による事実上の一騎打ちとなっているのだが、河村氏といえば、自身が主導した例の大村秀章・愛知県知事に対するリコール運動で大量の不正署名が見つかり、現在は捜査に発展中。河村氏はいまだに説明責任を果たせていないが、そんななかで立候補したこと自体、驚かざるを得ない。
だが、さらに驚いたことに、メディアによる選挙情勢では、河村氏が「やや先行」(読売新聞18日付)、「優勢」(中日新聞20日付)となっており、自民、立憲民主、公明、国民民主が推薦する横井氏と「激しく競り合う」状況となっているらしいのだ。
疑惑の渦中にあるというのに、まさかの「優勢」。河村氏はこれまでも「減税」を掲げて選挙で圧勝し「選挙モンスター」と呼ばれてきたが、この状況でも「優勢」とは……。
しかし、河村氏に市政をこのまま任せていいのだろうか? それは、河村氏がその不正が発覚したリコール運動にかまけた結果、コロナ対策をおろそかにしていたとしか思えないからだ。
愛知県のなかでも名古屋市は人口約230万人の大都市で、当然ながら新型コロナでも感染の中心地となり、第1波でも病床逼迫などの問題に直面した。だが、肝心のコロナ対策の陣頭指揮をとる河村氏は、第1波の反省もなくコロナ対応そっちのけでリコール運動に邁進してきた。
実際、6月28日には名古屋市中区の大須商店街でおこなわれた街頭活動ではノーマスクでフェイスシールドを装着した河村氏のまわりに人だかりができ、地元メディアの東海テレビも「河村市長が「密」の中での大村知事リコール活動」と報道。また、大村知事が新型コロナの感染状況を上から2番目の「厳重警戒」としていた8月25日から9月17日の期間中にも、河村氏は自身が街頭に立つ様子を写真つきでTwitterに投稿していた。
しかし、この間にも名古屋では感染者が急増し、8月初旬から下旬にかけては病床が逼迫。入院調整中となっていた人が計171人にも達し、〈なかには、70代感染者が自宅待機中に意識を一時失い救急搬送を要請したが、2時間半のうちに12病院から受け入れを断られ、ようやく入院できた〉というケースもあったという(朝日新聞デジタル2020年11月16日付)。さらに、7月にも第1波のときと同じように「症状があるのに検査してもらえない」という声が続出し、この事態を受けて大村知事は会見で「言っていただければ県でいくらでもやる」と述べた。だが、〈市はそれに応じていない〉(東海テレビ2020年7月30日付)という事態となっていた。
田中事務局長が河村氏から「市議会リコールでも多数の不正署名」を聞かされていたと証言
つまり、医療提供体制や検査体制の強化をすべきときに河村氏はリコール運動に精力を傾け、市民の健康と安全を最優先に県と連携をはかるべきときにもそれをやろうとしなかったのである。
しかも、信じられないことに、このリコールの主張を河村氏は「公務」と呼んでいた。実際、河村氏と氏の支持団体「ネットワーク河村市長」の連名で出していたリコール署名「受任者のお願い」の文面には、はっきりと〈名古屋市の公務として主張しているのです〉と書かれているのだ。
緊急かつ最大の「公務」であるコロナ対応を放り出し、同じ県の知事をリコールする運動に熱をあげる──。これだけでも絶句するほかないが、さらなる問題の核心はもちろん、リコール不正署名への河村氏の関与についてだ。
すでに報じられているとおり、リコール活動団体の事務局幹部だった山田豪・元常滑市議が「偽造署名に深く関与した」ことを認め、事務局長である田中孝博氏から「ミスター、こうやってやるんだ」と手本を見せられ、同一筆跡とみられる大量の署名簿に自ら指印を押したことを証言。一方、田中事務局長は今月21日に開いた会見で山田氏への指示を否定したが、同時にこの場で重大な証言をおこなった。
田中事務局長によると、昨年10月25日ごろに河村氏から「約10年前の市議会リコールでも多数の不正、無効署名があった」と聞かされたと言い、それを受けて今回も「白紙以外のすべての署名を提出した」というのだ。
2010年におこなわれた市議会リコールでも「多数の不正署名があった」……!? 河村氏は昨年6月にCBCテレビの取材に対して「経験がありますから、10年前に」「けっこうノウハウがいるんですよ」などと語っていたが、田中事務局長の証言が事実ならば衝撃と言わざるを得ないだろう(ちなみに、河村氏はこの田中事務局長の発言に対し「選挙妨害の恐れがあり、悪質な名誉毀損」と指摘し、〈「12年前の市議会リコール」において、結果として「無効署名」がまぎれ込んでいたことを話したことはあるが、「不正署名」があったという言葉使いはしていない〉というコメントを公表している)。
「連日、河村市長と焼肉屋に行っていたのか」と問われた田中事務局長が「そういう時期もありました」
だが、田中事務局長の会見では、もうひとつ、気になる問題が取り上げられた。田中事務局長はこの日、ある物を記者に配布した。それはリコール運動中に河村市長と会食をした際の領収書のコピーだ。
というのも、田中事務局長によると「数社のメディアの方から『河村市長と私が深夜いろんなところで飲み食い、どんちゃん騒ぎをやっていたのではないか』というような質問を受けている」らしく、「早々にこの案件が紙面に載るというような噂も聞いた」ことから今回、領収書の公表に至ったといい、「どんちゃん騒ぎ」はしていないと田中事務局長は否定。「初期のころはリコールの日程などを協議していた」「クラウドファンディングや受任者がどれくらい集まっているか、発送作業や活動計画がおもな話だった」と言うが、なぜ事務局内での打ち合わせではなく会食だったのか。田中事務局長はこのように語った。
「市長のほうから、秘書の方を通じてリコール活動前、期間中に私がアドバイスを聞きに行くときには(領収書の)お店に呼ばれ、お話をした」
「本来であれば重要な話っていうのは事務所とかそういうところでお話しするんですが、なんか、えー、わりとそういう場所が(河村氏は)お好きというようなことでですね、そのようなところでお話をさせていただいた」
また、この領収書のなかには数日つづけて同じ焼肉店のものがあることから「毎回毎回、わざわざ連日、焼肉屋に行っていたのか?」と記者から質問が飛んだのだが、田中事務局長は「そういう時期もありました」と回答した。
コロナ対応そっちのけで連日の焼肉三昧というのもどうかしていると思うが、田中事務局長といえば、名古屋テレビの取材に対して「田中孝博、真っ黒けという状況じゃないですか」「逮捕される立場にあるという認識に立たなくてはいけないのではないかな」などと自ら語っているような状態。この田中事務局長と会食を重ね、報告を受けていた河村氏は、ほんとうに不正署名について何も知らなかったというのだろうか。
名古屋市民の命と健康を守ることよりリコール運動に血道を上げてきた人物が市長選で優勢に
今後、捜査の進展によっては河村氏の関与についても新たな事実が判明することもあるかもしれないが、それ以前に、このように名古屋市民の命と健康を守ることよりもリコール運動に血道を上げてきたという事実は重大なものだ。
そして、けっして忘れてはならないのは、このリコール運動は市民の生活とはまったく関係なく、河村氏をはじめとする歴史修正主義者たちの動きと連動したものだったということだ。「あいちトリエンナーレ」の展示をめぐっては、河村氏は「展示の即刻中止」を大村知事に申し入れをおこなったが、この行為自体が明らかな憲法違反の検閲行為であり、公金の支出を問題視することは全体主義国家の考え方にほかならない。河村氏はこれまでも歴史修正発言を繰り返してきたが、このような人物を信任することは、氏の歴史否認に加担するということでもある。
投票はいよいよ明日。名古屋市民はほんとうに、この人物に市長を続けさせるつもりなのだろうか。
(編集部)
最終更新:2021.04.24 10:36
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