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竹田恒泰が山崎雅弘を訴えた裁判で完全敗訴も控訴! 東京地裁が竹田の「差別主義」「自国優越思想」を認めた判決文を改めて紹介
竹田恒泰Twitterより
この人は、あんな決定的な判決文をつきつけられても、まだ自分の差別性を反省するつもりがないらしい。“明治天皇の玄孫”竹田恒泰氏が、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏を名誉毀損で訴えた裁判で、一審での敗訴を不服とし控訴した。
この裁判は、竹田氏が山崎氏からツイッターで「差別主義」「自国優越思想」と批判されたことなどが名誉毀損であるとして500万円の損害賠償と投稿削除を請求していたもの。
しかし、2月5日に、東京地裁が山崎氏のツイートについて公正な論評・意見の表明であり名誉毀損にあたらないとして、請求を棄却。しかも、判決文では、竹田恒泰氏の言動がいかに差別主義的であるか、過去の数々の差別発言をあげて認定、竹田氏の「自分は差別主義者ではない」という弁明についても踏み込んで批判するくだりまであった。
にもかかわらず、控訴という手段に訴えた竹田氏。その差別的言動への自覚と反省をうながすためにも、東京地裁が下した一審の判決文をあらためて紹介したい。
まず簡単に経緯をふりかえろう。2019年11月、富山県朝日町教育委員会主催の中高生向け講演会で竹田氏を講師に招くことがわかり、ネット上で大きな批判を浴びる。山崎氏もツイッターで、竹田氏の自国優越思想や差別主義について指摘、そうした人物を教育委員会主催という公的なイベントの講師に招くことを批判し、以下のようなツイートを連投した。
〈竹田恒泰という人物が普段どんなことを書いているか、ツイッターを見ればすぐ確認できる。それでもこの人物を招いて、町内の中・高校生に自国優越思想の妄想を植え付ける講演をさせる富山県朝日町の教育委員会に、教育に携わる資格はないだろう。社会の壊れ方がとにかく酷い。〉(2019年11月8日)
〈竹田恒泰という人物が過去に書いたツイートを4つほど紹介するだけでも、この人物が教育現場に出してはいけない人権侵害常習犯の差別主義者だとすぐわかる。富山県朝日町の教育委員会が、何も知らずに彼をわざわざ東京から招聘するわけがない。つまり今は教育委員会にも差別主義者がいる可能性が高い。〉(2019年11月8日)
その後、開催の妨害を予告する電話があったとして、講演会は中止が発表されるのだが、すると竹田氏は山崎氏に対して〈朝日町に「ガソリンを撒く」という脅迫がありました。貴殿が煽ったから、このようなことが起きたのではないですか?〉(2019年11月12日)などと、脅迫を引き起こしたのが山崎氏であるとイチャモン。さらに上記の2つを含む5件のツイートについて山崎氏を名誉毀損で訴えたのだ。
裁判では、竹田氏が山崎氏のツイートを「人格攻撃」「誹謗中傷」と主張。山崎氏側は竹田氏が差別主義者であることを立証するために、これまでの竹田氏の著書、ツイート、ネット動画、講演などでの差別的発言の数々を示していった。
その結果、前述したように竹田氏の請求を棄却する判決が下されたのだが、以降は、判決文はどういうものだったのか、具体的にみていこう。
竹田恒泰の中国人・韓国人差別と自国優越思想を裁判所が事実であると指摘
まず判決では、「差別主義」「自国優越思想」は竹田氏の言動および朝日町教育委員会という公的機関が竹田氏を招いたことに向けられたものであり、竹田氏の「人格」を否定してり誹謗中傷するものではなく、さらに公的機関主催の中高生向けの講演会に対する批判であることから、公益性もあるとし、論評の域を逸脱しないとした。
そして、「差別主義」「自国優越思想」という論評について相応の根拠があるとして、竹田氏の著書、ツイート、ネット動画、講演などでの発言の差別性について、次々と指摘しているのだ。
たとえば竹田氏は「自国優越思想」と批判されたことについて、「社会的に問題とされる思想」「これを有すると摘示された人物の社会的評価を低下させる」などと主張しており、あれだけ日本スゴイ本を出しておいて何を言っているのかと思っていたら、判決文でも『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』、『日本の民主主義はなぜ世界一長く続いているのか』、『日本人はいつから日本が好きになったのか』といった竹田氏の日本スゴイ本のタイトルを挙げ、また〈日本の文化や政治体制について外国からの評価の観点も含めて肯定的に捉えて称賛し、日本国民の愛国心を強調する趣旨の記述をした事実が認められる〉などとした。
もちろん、判決では、「自国優越思想」と表裏一体となっている、他国、他民族への「差別」についても、竹田氏の著書やネット動画、ツイートでの発言を例示するかたちで、厳しく指摘している。
たとえば、竹田氏は著書『面白いけど笑えない中国の話』のなかで中国人について「同じ人間であることすら疑わしく思えます」などと記述したり、あるいは『笑えるほどたちが悪い韓国の話』のなかで韓国人について「理性が働かない民族」、「民族まるごとモンスター・クレイマー」、「韓国の人たちは、ゆすり・たかりの材料があると、後先考えずに利用してしまいます。」、「民度が低い」などと、ヘイトスピーチとしか言いようがない記述を連発しているが、判決でもこうした言説の差別性と悪質性について、明確に指摘した。
竹田氏は自身のこうした言説について、「国家・政府や政策・外交への批判で、差別ではない」などと主張しているのだが、判決では〈国の政治体制又はその指導者等に対する批判にとどまらず、中国人及び韓国人全体を対象として、その国籍又は民族に伴う属性を指摘し、その「民度」の低さを主張したものというほかない〉と批判。さらにタイトルなどに「笑えない」「笑える」といったワードを使用していることを指摘し、〈自国を優越的に捉えた上で、他国民・他民族を劣位に置き、「笑い」の対象とする意識が看取されるものというほかない〉と断じた。
判決文では、竹田の元慰安婦や在日コリアンへのツイートも“差別助長”と認定
判決は、竹田氏がツイッターやネット番組で元慰安婦の女性をツイッターやネット番組で度々攻撃してきた問題についても、踏み込んでいた。竹田氏はこうした言説について〈元従軍慰安婦一般のことを指すわけではなく、元従軍慰安婦ではないのにそのように述べる特定の人物を指すにすぎない〉と言い逃れしているが、判決文は竹田氏の「ゆすりたかり」、「韓国はゆすりたかりの名人であり、暴力団よりたちが悪い国」、「そもそも韓国に、毀損されるような名誉があるのか」、「韓国が世界に誇れる偉人は、テロリストと売春婦だけ」といった表現をあげ、こう指摘したのだ。
〈韓国につきあえて攻撃的で侮蔑的ともとれる表現を多数、少なくない頻度で用い〉〈単に韓国の国家体制や政治に関する報道を受け、これらを批判するのみに止まらず、読者に対し、韓国や韓国人を劣位に置く意識を与えるもの〉
判決文には、竹田氏の在日コリアン差別を認定するくだりもあった。2016年、東京・小金井市で起きた殺人事件未遂の容疑者の名前が「自称」と報道されたことについて、竹田氏が〈なぜ本名で報道しない?ここが日本のメディアのおかしいところ。臆する必要はない。本名で報道すべき。これは私の憶測だが、容疑者は日本国籍ではないと思われる〉(2016年5月22日)とツイートし、無根拠に“容疑者は日本人ではなく在日外国人”と示唆したことや、ネット動画で「おかしい人は帰ってもらいたいですけども、真面目な人はちゃんと日本人として働いて、納税してもらう」「反日反日っていうのは、お前らふざけんなよと、私は思う。だったら、帰れよと。日本が嫌いなら、とっとと出て行けと。私は思っておりますよ」などと発言していることを取り上げ、〈日本社会への同化を迫るとともに、これに応じない「反日」的な人々の排除を主張するもの〉〈偏見や差別を助長するものというほかない〉と批判したのである。
竹田恒泰の「これは差別ではない」という弁明の欺瞞にまで踏み込んだ判決文
さらに、判決文は、竹田氏の「これは差別ではない」という主張の問題点、欺瞞性についても言及していた。
竹田氏は「国家・政府、政策について批判しているだけ」と繰り返し主張。これに対して、山崎氏は陳述書などで、その手法を〈ある国民や民族全体に対する「差別的見解」を、正当な「批判的見解」でいわばサンドイッチにすることで、差別的見解が「差別ではない」かのように見せかけ、あるいはそう強弁することで責任の回避を図っています。〉と分析していた
判決文は同様に、竹田氏の韓国や中国批判が「他民族を劣位に置く意識を与える」ことを認めだけでなく、「これは差別ではない」という竹田氏の弁明じたいの問題点まで踏み込んでいる。
竹田氏が、韓国の民度が低いことを韓国の歴史に起因するものである旨を主張する一方、〈「人」については、「誰でも白紙で生まれてきます。」などとして、国家や民族の歴史から切り離された個人の存在を仮定〉し、さらに〈人種差別の定義についても、「その生まれ持った条件」(肌の色や出生地)に基づく差別として、歴史や文化を捨象した限定的な解釈を主張している〉ことについて、以下のように指摘したのだ。
〈むしろ、歴史を理由として文化や「民度」を劣等視することを正当化するものともいい得るものであって、まさに「差別主義的」との評価を受ける余地があるものというほかない〉
つまり、裁判所は竹田氏の「これは差別ではない」という主張じたいが、差別を正当化し、差別主義的であると断じたのである。
この指摘は、竹田氏に限らず、多くのネトウヨ論客らが口にする「これは差別ではない」というエクスキューズの欺瞞性を司法の場であらためて明らかにしたといえる。
山崎雅弘は「民族差別に反論できるアクションに」内田樹は「スラップ訴訟に一定の歯止め」
竹田氏の自国優越思想や中国・韓国ヘイトを認めたばかりか、慰安婦攻撃と韓国差別が絡み合っている構造、そして「差別ではなく批判」というエクスキューズの欺瞞にまで踏み込む判決──。山崎氏は判決直後の会見で、「社会にはびこる民族差別に反論できるアクションになった」と語っていたが、ほんとうに意義深い判決だったといっていいだろう。
しかし、一方で忘れてはいけないのは、この訴訟じたいが、本来、あってならない批判封じ込めのためのスラップ訴訟だったということだ。
そもそも、この裁判は、問題の講演会の中止が発表された後、竹田氏が山崎氏に対して〈【訴訟予告】山崎雅弘殿 本日24時までに、私の名誉を毀損する記事を投稿したことにつきTwitterで謝罪し、該当する箇所を全て削除してください。これが実行されない場合は名誉毀損の訴訟を提起します。〉(2019年11月17日)と訴訟をちらつかせることで、山崎氏の批判を封じようとしたことから始まっている。
さらに山崎氏のみならず、山崎氏の当該ツイートをリツイートした内田樹氏や東京新聞の望月衣塑子記者に対しても、同様にリツイート解除や謝罪をしなければ訴訟を提起するとちらつかせて恫喝していた。
山崎氏は「竹田氏に関する私の言論は、客観的事実に基づく正当なもの」として、竹田氏の恫喝に屈することなく裁判で見事勝訴を勝ち取ったが、誰にでもできることではないだろう。
実際、竹田氏が差別的発言、自国優越思想をもっていることは、その著書やツイート、発言からわかる客観的事実だが、こんな当たり前のことを立証するために、山崎氏側は膨大なコストをかけさせられた。判決では裁判費用は竹田氏が負担することになったが、仕事に当てられたはずの膨大な時間を、証拠集めや陳述書に費やさなければならなかった。
金を持っていれば勝敗度外視でいくらでも裁判を起こすことができ、裁判をちらつかせるだけで、金を持たない者の口をつぐませることができる。山崎氏の裁判を支援してきた内田樹氏は判決後の会見で「今回の判決によってスラップ訴訟に一定の歯止めがかかるのではないか」と語っていたように、金の力で批判を封じるようなスラップ訴訟をこれ以上許してはならない。
しかも、今回の裁判の当事者である竹田氏は結局、あんな判決文をもらいながら、控訴という手段に出たため、裁判はまだ続くことになる
山崎氏は、もし控訴審で判決が覆るようなことがあったら「「日本は差別的言動をする者を『差別主義者』と呼んで根拠と共に批判する人間が罰せられる国」「社会から差別をなくす努力を放棄した国」ということになってしまう」とコメントしているが、その通りだ。ひき続き、裁判の行方に注視したい。
(編集部)
最終更新:2021.03.14 09:56
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