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自民党の夫婦別姓を議論する組織が「ニュートラル」とは笑わせる 幹部4人全員が男性で神道政治連盟 3人は別姓反対で日本会議
夫婦別姓ワーキングチーム設置を公表した下村政調会長(公式フェイスブックより)
森喜朗氏による性差別発言を受け、あらためて選択的夫婦別姓や女性登用の問題がクローズアップされるようになったが、そんななか、自民党があ然とするような発表をおこなった。
10日、自民党の下村博文政調会長は選択的夫婦別姓制度を議論するワーキングチームを設置すると公表したのだが、座長は石原伸晃・元幹事長、事務局長に西村明宏・前内閣官房副長官が就き、関連部会長である冨岡勉衆院議員と奥野信亮衆院議員を合わせた4人で議論の論点整理をおこなうと発表。ご覧の通り、幹部は全員男性で、女性を登用しなかったのだ。
夫婦同姓制度によって名字を変えるのは96%が女性だとされているように、改姓で不利益を被っているのはほとんどが女性。夫婦同姓制度は憲法に定められた男女平等に違反する人権侵害だ。にもかかわらず、自民党は議論のたたき台をつくる幹部に女性議員を入れないというのである。
自民党といえば、森発言が問題になった際、「多様性の尊重」をアピールしようとして役員連絡会や総務会に女性議員を参加させるとしたが、それも正式な発言権が与えられないオブザーバー参加にすぎなかった。しかも、二階俊博幹事長は「(女性議員に)ご覧に入れようということだ」などと発言。「二階幹事長は何が問題になっているのかまるで理解できていない」と批判を浴びたが、今回の女性議員排除からも、これは自民党という党全体の問題だということがはっきりとしただろう。
しかも、さらに驚いたのは下村政調会長の言い分だ。下村政調会長は、女性議員を入れずに男性議員だけで論点整理をおこなうことについて、こんな主張を繰り広げたのだ。
「ニュートラル(中立)な方に幹部になってもらった」
幹部に選んだ男性議員はみな「中立」だから女性議員は必要ない──。下村政調会長は「女性は中立じゃない」と言わんばかりだが、男性だけで密室で集まり女性の意見を聞くこともなく何でも決めてしまう構造がこれだけ批判を浴びているというのに、自民党はいまだに平気でこのような性差別をまかり通らせようというのである。
この「ニュートラル」発言にはネット上でも批判が巻き起こったが、しかし、問題はまだある。
下村政調会長は「ニュートラルな方に幹部になってもらった」と胸を張ったが、実際には、幹部に選ばれた男性議員のほとんどが、選択的夫婦別姓に「中立」どころか「反対」の立場なのだ。
実際、2017年の衆院選時におこなわれた朝日新聞社と東京大学・谷口将紀研究室の共同調査では、夫婦別姓について「賛成」「どちらかと言えば賛成」「どちらとも言えない」「どちらかと言えば反対」「反対」という4つの選択肢のうち、西村氏は「反対」、奥野氏は「どちらかと言えば反対」と回答。石原氏と冨岡氏は「どちらとも言えない」という回答だったが、石原氏は2014年の同調査では「反対」と回答していた。
選択的夫婦別姓制度の導入に対して近年は賛成の割合が高まっており、こうした問題に関心が高い都市部である東京8区を選挙区とする石原氏の場合、選挙を意識して「反対」だったのを「どちらとも言えない」などとお茶を濁したのだろう。
幹部4人が男性で神道政治連盟国会議員懇談会のメンバー、3人は日本会議国会議員懇談会
つまり、少なくともこの回答を見れば、自民党の選択的夫婦別姓ワーキングチーム幹部は「ニュートラル」どころか、4人の幹部のうち3人は選択的夫婦別姓に「反対」の立場なのだ。
しかも、この4人は全員が神社本庁を母体とする政治団体「神道政治連盟」の理念に賛同する議員で構成される「神道政治連盟国会議員懇談会」のメンバーだが、「神道政治連盟」は「伝統的な家族観の崩壊に繋がりかねない」として選択的夫婦別姓制度の導入に反対。今年2月に発行した機関紙でも、反対派の急先鋒のひとりである自民党の山谷えり子参院議員や八木秀次・麗澤大学教授の寄稿文を掲載し、反対の姿勢を全面に押し出している。
また、石原氏、西村氏、奥野氏は、やはり選択的夫婦別姓に反対している「日本会議」と一心同体となっている「日本会議国会議員懇談会」のメンバー。とくに、事務局長の西村氏は日本会議が創立10周年を迎えた際に、奥野氏は20周年の際にそれぞれメッセージを送っており、〈文化・伝統・自然・歴史を大切にする国家こそが、世界に尊敬される真の独立国〉(西村氏)、〈古来より皇室を中心として続いてきた日本の伝統、文化、歴史を守り、後世への継承することは日本人としての務め〉(奥野氏)と述べている。
さらに言えば、奥野氏は安倍晋三・前首相が率いる極右議員集団「創生「日本」」のメンバー。創生「日本」は、下野時代の2010年には渋谷や新宿などで街頭演説を繰り返し、当時、民主党政権が進めようとしていた選択的夫婦別姓について「日本という国が国家解体に向かって進んでいます!」「国の骨格がいま崩されようとしています!」とがなり立て、安倍前首相自身も「夫婦別姓は家族の解体を意味します。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマ(教義)。これは日教組が教育現場で実行していることです」(「WiLL」ワック2010年7月号)などと語っていた。
そして、こうした考えはメンバーの奥野氏も共有するものだ。実際、奥野氏は自身のブログで、あるときは〈政治の左傾化(外国人参政権、夫婦別姓、など)に歯止めをかける〉と記述(2010年9月12日付)。また、あるときは「子ども手当」「夫婦別姓」「外国人参政権」を「悪法」と呼び、〈これらの「悪法」に共通しているのは選挙で票を入れてもらうために理念もなく、家族の絆を壊し、日本の子供達の未来が危うくなる法律である〉と綴っていた(2010年5月29日付)。
「姓を自分で選択」というだけで「左傾化」「家族の絆破壊者」呼ばわりする極右カルト
「姓を自分で選択したい」というだけなのに、それを「左傾化」「家族の絆を壊し、日本の達の未来が危うくなる」などと騒ぎ立てる──。こんなあからさまな反対の主張をおこなってきた人物を、自民党は「ニュートラルな方」と言い、女性議員を排除する理由にしたのだ。まったくふざけるにも程があるだろう。
しかも、このふざけた態度は自民党だけではなく、菅政権の問題でもある。夫婦同姓の強制はこの国のジェンダー平等の遅れを象徴する大きな問題のひとつだというのに、菅義偉首相は選択的夫婦別姓に反対して地方議会に圧をかけていた事実が判明しても丸川珠代氏を男女共同参画担当相に据えたままだからだ。
自民党に政権を任せているうちは、性差別の是正など夢のまた夢。むしろ、今回の「ニュートラル」問題が象徴するように、男性中心主義を肯定することで社会における性差別もさらに助長されることになる。「害悪」としか言いようがないだろう。
(編集部)
最終更新:2021.03.13 05:01
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