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安倍首相のコロナ対策はなぜこんなに遅い? 28日会見でも具体的支援策提示なし、イベント自粛の補償も「難しい」…海外とは雲泥の差
首相官邸HPより
これで国民が納得したり安心したりできると、ほんとうにこの男は思っているのだろうか。本日18時から安倍首相が新型コロナ対策にかんして3回目となる記者会見を2週間ぶりにおこなったが、その中身はスカスカどころか、具体的な話はまるでゼロだったからだ。
その最たるものが、国民の不安が募りに募っている生活補償についてだ。
「仕事が減るなどにより収入が減少し、生活に困難を来す恐れがあるご家庭には、返済免除も可能な小口資金支援、税や公共料金の支払いの猶予などをすでに進めてきましたが、これに加え、思い切った生活のための給付を実施してまいります」
2週間ぶりの会見だというのに、生活補償にかんして自ら言及したのは「思い切った生活のための給付を実施する」、たったこれだけ。一体どれくらいのレベルの給付金になるのかといった具体的な数字は、最後まで挙げなかったのだ。
自民党からは生活補償策そっちのけで「お肉券」だの「お魚券」だのといった虚構新聞かと見紛うような噴飯ものの経済対策案が飛び出す有様だが、それを受けて不安を募らせる国民に対し、不安を払拭する具体的な補償案を具体的に提示するはず。会見前はそう思っていた。ところがどうだ。2週間前の会見で「一気呵成に、これまでにない発想で思い切った措置を講じていく」と言っていたのに、今回も「思い切ったことをやる」と言うだけだったのだ。
なかには「国会での今年度補正予算案の審議がこれからだから安倍首相は言及できないだけ」と擁護する者もいるかもしれないが、これまで審議前でも安倍首相は勝手な構想をぶち上げてきた。しかも、海外に目を向ければ、議会で承認される前から各国の政府は国民に安心をもたらすための大規模な対策を早急かつ次々に打ち出している。
たとえばアメリカでは、17日にムニューシン財務長官が50兆円規模の国民への現金給付を2週間以内に実施したいという考えを公表し、実際に27日には年収7万5000ドル(約825万円)以下の大人1人あたり最大1200ドル(約13万円)、子どもに500ドルを支給する家計支援策を含む経済支援策が連邦議会下院で可決、成立した。「一気呵成に」とは、こういうことを言うのではないか。
しかも、これだけ経済・生活補償策を打ち出すのに時間をかけまくっているというのに、安倍首相はこんなことまで言い出した。イベント自粛にともなう補償策をおこなう気はない、と言及したのだ。
安倍首相は「人びとの心を癒やす文化や芸術、スポーツの力が必要です。困難にあっても文化の灯は絶対に絶やしてはなりません」などと美辞麗句を並べていたのだが、質疑応答で「イベントの自粛要請に応えているところには必ず補償すべきでは」と問われると、「損失を税金で補填することはなかなか難しい」「そうではない補償の仕方がないかということをいま考えているところ。給付金も考えていきたい」と発言したのである。
政府が本当にイベントで感染の危険があると感じているならば、「自粛」などと言って主催者の自己責任に委ねるのではなく、政府が責任をもって補償するべきだ。こんなことは2月の基本方針のころからずっと指摘されてきたことだが、政府は一切対策を取らず、放置してきた。さらに、24日には政府はイベント業界の関係者からヒアリングをおこない、そこでも参加者から「イベントの自粛要請によって生じた損失を補償してほしい」という声があがっていた。だが、そうした生の声を無視し、「税金での補填は難しい」と言う……。結局、いまおこなわれている業界ヒアリングというのは「声も一応聞きました」という既成事実づくりでしかないのではないか。
会見を打ち切るために、19時から対策本部の会合を入れた安倍首相
いや、この2週間おきの実施がデフォルトのようになってきた総理会見自体が、「やってる感」演出のセレモニーでしかないのだ。
実際、これまでの会見では、記者の質問に最後まで答えないまま強引に打ち切ってきたくせに、会見が終わると安倍首相が自宅に帰宅していたことに非難が殺到。それを受けて、なんときょうの会見のあと、19時からは対策本部会合の日程を入れてきたのだ。
普通、対策本部をおこなってから総理会見を開催するのが順序というものだが、ようするに、「また質問を打ち切って私邸に帰った」と批判されるのを封じ込めるためだけに、対策本部の日程をセットしたのだ。姑息にも程があるだろう。
しかも今回、記者からの質疑応答では、2月29日の総理会見で「まだ質問があります!」と声をあげていたのに無視したフリージャーナリストの江川紹子氏や、これまで安倍首相の会見で一度も指名を受けてこなかった「ビデオニュース・ドットコム」の神保哲生氏を指名。江川氏や神保氏の鋭い質問に安倍首相が答えざるを得ない状況になったこと自体は進展と言うべきだが(前述したイベント業者への補償の質問も江川氏によるものだった)、江川氏や神保氏を指名したのはじつのところ、会見打ち切りの際に「まだ質問がある」「最後まで答えるべき」という批判の声が両氏からあがるのを抑え込むためだったのではないか。
現に、質疑応答に移る際には、会見の進行役である長谷川栄一・内閣広報官が露骨にも「現下の状況をご賢察いただきまして、ご質問希望の意思表示は声ではなくて挙手でお願いしたい」などとアナウンス。会見場での感染を用心するなら安倍首相もマスクを着用するとか記者にマスクを配布するとか対策もとるべきだが、それもせずに「声をあげるな」と釘を刺したのだ。
会見直後にこれみよがしに予定を入れ、感染防止を盾にして「意思表示は声ではなく挙手しろ」と要求する官邸に、まともに記者の質問に答えようという意志はまったく見られない。事実、会見が打ち切られたとき、挙手していた記者はいたのに、会見は強制終了されてしまった。
結局、安倍首相の「やってる感」アピールの場だという本質は変わらないままの総理会見──。だが、こんな独断を許していていいわけがない。実際、総理会見をめぐって、ついには国民の生命にもかかわる問題を生んでしまったからだ。
自殺した赤木さんのことを質問されたくなくて、学校再開に伴う会見を拒否した安倍首相
先週19日、政府の専門家会議が、感染が確認されていない地域での学校での活動をおこなってよいとする新たな見解を打ち出したことにより解禁ムードを生み出し、その後の3連休は花見をはじめとして人出が多くなってしまった。本来なら、根拠もないまま場当たり的に一斉休校を打ち出した張本人である安倍首相が専門家会議の方針を受けて会見をおこない、なぜ感染が拡大するいまのタイミングで学校再開を決めたのかをしっかり納得のゆく説明をし(そんな説明ができるのかは甚だ疑問だし、解除方針の打ち出し自体拙速だと思うが)、その上であらためて気の引き締めを訴えておくべきだったのは言うまでもない。
しかも、内閣記者会はこの19日に新型コロナ対策の新たな方針を打ち出す場合は総理会見を開くよう求めていた。だが、安倍首相は結局、20日の対策本部での表明にとどめたのだった。
なぜ安倍首相は重大局面で会見を開かなかったのか。それは驚くべき「自己保身」が原因だった。
21日付の東京新聞によると、当初は政府高官も、19日の専門家会議の見解を受けて〈「首相が会見することになると思う」との見通しを示していた〉という。しかし、18日に大きな問題が起こる。そう、「週刊文春」(文藝春秋)に森友公文書改ざん問題で自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さんの遺書と手記が発表され、これに世間が大きく反応したからだ。実際、政権幹部は東京新聞の取材に「記者会見だと、コロナと関係ないことも聞かれる。対策本部会合で語ればいい」と、総理会見を見送った要因が赤木さんの存在があることを匂わせている。
つまり、本来ならば会見をおこなうべきタイミングであることを承知しながら、森友問題の質問を受けることを避けるために、安倍首相は会見をおこなわなかった、というのである。
安倍首相はきょうの会見で「私たちが毎日見ている感染者の数は、潜伏期間などを踏まえれば2週間ほど前の新規感染の状況を捉えたものに過ぎない」などとしたり顔で語ったが、先週、自分が会見をおこなわなかったことの弊害は、過剰な検査の抑え込みなどがおこなわれないかぎり、来週には数字になってあらわれる。その数字がどんなものになるのか、そしてそれは、安倍首相が総理大臣としての責任を自己保身で放棄したことの結果であることを忘れてはならない。
(編集部)
最終更新:2020.03.28 11:19
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