台風19号の避難所になった「朝鮮学校」インタビュー!補助金停止・無償化除外でも「役に立ちたい」

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足立区公式ホームページより


 台風19号が上陸した今月12日、東京都台東区の避難所がホームレスの受け入れを拒否した問題。人命を軽視し、基本的人権を踏みにじるこの台東区の非対応は複数の海外メディアでも報じられる事態となっている。たとえばイギリス・BBCでは、ホームレス受け入れ拒否という出来事そのものだけでなく、それに対する日本人の反応もクローズアップして報道していた。

〈この事件は日本で大きな議論を巻き起こした、つまり誰もがホームレスを思いやったわけではなかった。〉

 ネットで台東区のホームレス受け入れ拒否を批判する声やチャリティ団体山谷労働者福祉会館が受け入れたことなどを紹介したうえで、ホームレスに対する冷酷な声を報じた。

〈一方でホームレスに同情的ではない人々もいた。「『臭い』あるいは『精神障害』のホームレスの人々は、別のスペースがある場合にのみ避難所に入れられるべき」などと提案した。
「権利を主張するなら、まず最初に義務を果たせ」とあるツイッターユーザーは言い、さらに別のユーザーは 「悪臭を放つ人の隣で眠れますか?」と問いかけた。〉

 台東区のホームレス拒否じたい許されない差別だが、それ以上にこのホームレス拒否を肯定する日本人の反応は、世界的に見ても異常なものなのだ。

 実際、BBCが指摘するとおり、残念ながら日本では、この台東区のあり得ない非人道的な対応に対して批判一色ではなく、“賛否両論”状態になってしまっている。「当然」などと擁護・支持する声や「隔離すべき」などと提案する人権無視の発言は、ネットであふれているだけではない。『バイキング』(フジテレビ)ではおぎやはぎの小木博明が「(ホームレスの人が避難所に来るのは)嫌ですよ、それは」「何されるか、わからない」と発言したのをはじめ、ホームレス拒否を肯定するような発言がテレビでも平気で流れている。

 さらにこの排除を正当化しようと、差別主義者たちが叫んでいるのが「税金を払ってないから当然」なるトンデモ論理だ。

 そもそも、ホームレスの人だって何かを買うときは、かならず消費税を払っているのだが、それ以前に、こんな論理は民主主義国家ではありえない。

 生存権や基本的人権は、納税の多寡や就労の有無にかかわらずすべての人に保障されており、納税の対価ではない。国民の命と安全を守ることは近代国家の最低限の責務であって、税金を納めた者だけが享受できる特権ではないのだ。

 しかし、小泉政権から安倍政権に至る新自由主義政策にすっかり染まった日本では、こうした弱肉強食的な価値観と自己責任論が大手を振ってまかり通るようになった。

 しかも、こうして事あるごとに「税金」が持ち出される一方で、日本人と同じように税金を払っていても外国人は参政権をはじめ制度上さまざまな差別的扱いを受けていることを、問題視する人間はほとんどいない。もちろん参政権は納税の対価ではないが、これは明らかな御都合主義・ダブルスタンダードだろう。

 しかし、避難所をめぐっては、そうした日本社会と対照的な姿勢を示している場所があった。

 それは普段、日本社会や行政が差別や排除の対象としている朝鮮学校だ。東京都や神奈川県など複数の自治体で、公立学校や区民会館など数々の公共施設とならんで避難所のひとつにその朝鮮学校が指定されているのだ。

足立区の避難所となった東京朝鮮第4初中級学校にインタビュー

 周知のとおり、日本政府は朝鮮学校を無償化対象から除外するという差別政策を取っており、また東京都や大阪府をはじめ自治体から朝鮮学校への補助金停止も相次いでいる。

 つまり、日本は、朝鮮学校を税金でサポートしていないにもかかわらず、災害時には避難場所として提供させているのだ。ご都合主義にもほどがあるのではないか。

 先日の台風19号の際、実際に東京都足立区の第一次避難所として開放された東京朝鮮第4初中級学校に話をきいた。台風当日、責任者を務めた金順彦理事長が話をしてくれた。

「12日は、足立区内に住んでいる学校の在日同胞の方、父母、日本の近隣の方々が来られました。全部で43名、日本の方は12名でした。2003年6月に第一次避難所として足立区と協定を結んだので、当然、避難されてきた近隣の方々は命を守るということで、受け入れました。
 学校には災害に備えて備蓄品があるので、毛布やマットは備蓄品を使い、食事は学校の父兄がおにぎりとスープをつくって、みなさん、一緒の部屋でテーブルを囲みながら食べました。
 雨が降って蒸し蒸しするので、教室にいてもらいました。各教室にはテレビがあるので報道番組を観られるようにしていました。
 夜は責任者である私が、1時間おきに見回りし、体調が悪いかどうかうかがうなどしました。
 翌朝、みなさん『ありがとう』と言って、各ご家庭ごとに片付けをして帰っていかれました」

 区の職員とは電話で連絡を取り合ったが、当日の避難所の運営は、学校職員や生徒の保護者などの手で行われたという。場所の提供だけでなく、食事づくりなどの運営も在日の人々のボランティアによるものだ。

 台東区の避難所でホームレスが受け入れ拒否された問題について、「税金を払っていないから」という声があることに触れると、「でも人道的な立場からすると、そういうことは関係なしですよね。命を守るという面では、同じ人として」と苦笑いした。

無償化除外や補助金停止されても「避難所として役に立てた」とよろこぶ朝鮮学校

 一方で、朝鮮学校が無償化を除外されたり補助金を停止されたり、差別的扱いを受け、税金が使われていないにもかかわらず困ったときだけ避難所として利用されることについて、どう考えているかを聞いた。

「それはもう近隣の方々と、人として。今月27日にもふれあいコリアフェスタというのをやるんですけど、そういうイベントを始めたのも、区の第一次避難場所となったことで、地域の方々と親睦と交流を深めるために始めたんです。いつ何どき、何かがあったときに学校に駆け込んで来てもらえるように助けられるように、閉鎖的に思われてはいけないと。逆に、僕たちも近隣の方々にお世話になっていて助けてもらうこともあります。国家間はいろいろありますけど、ここには国境なし。人としての付き合い。温かく受け入れて、というかお互いですね、人として接することが重要だと思ってやっているわけで」

 とはいえ、無償化除外や補助金停止を受けて避難所協定を見直そうという話が出たことはなかったのだろうか。

「ないですね。かえって、もっと身近に、近隣の方々との接触、お付き合いをしています。近くの幼稚園や保育園とも、もしも荒川が決壊したらという想定で園児にうちの学校に避難してきてもらうというような訓練もしています。そうやって地域の方々と一緒になってやっています」

 東京朝鮮第4初中級学校が実際に避難所として開設されたのは、2011年東日本大震災時に続いて2回目だったが、そのときは誰も避難して来なかったので、今回がはじめての受け入れとなったという。

「今回、役に立てて本当に良かった。こういう災害は2度と起きないほうがいいですけど、近隣の方を受け入れられたこと、避難所として役に立てたことはうれしかった。もっと多くの方が来られてもよかったかなと。近くの小学校は100人以上来られて行列になっていたみたいなんです。区の防災課の方から電話があったとき、うちは受け入れられますので近くの方こっちに来られるように言ってくださいと言いました。一部で『(朝鮮学校は)避難所になっているけど水とかそういうものがないので持参してください』というデタラメというか間違った情報が流れていたのも、影響したかもしれません。学校には400名ほどの備蓄があります。毛布や炊き出しできるいろんなものが置いてあって、毎年、賞味期限切れのものは薬品も含めて交換しています」

 ちなみに「水がない」という誤情報は、差別心や悪意によるデマだったのかと尋ねると、理事長はただの間違いだと思うと答えた。

 そして、今回避難所として活用されたことについて、何度もこう繰り返した。

「役に立てて本当に良かった。こういう災害は2度と起きないほうがいいですけど、避難所として役に立てたことはうれしかった」

 苛烈な差別を受けているにもかかわらず、「国家間はいろいろあるけど、ここには国境なし」「人としての付き合い」と近隣被災者を受け入れる朝鮮学校。その姿勢を見ていると、朝鮮学校を無償化や補助金対象から除外し、ホームレスを避難所から排除するのは「当たり前」とする日本の行政や社会がいかに非人道的であるかがよくわかるはずだ。

最終更新:2019.10.20 11:14

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