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安倍政権がホルムズ海峡への自衛隊派遣で使った姑息な詐術と本当のシナリオ!米国の戦闘に巻き込まれ、なしくずし改憲へ
平成30年自衛隊記念日観閲式に出席する安倍首相(首相官邸HPより)
やはり安倍首相は“戦争”をしたいらしい。本日午後、日本政府が中東のホルムズ海峡周辺に自衛隊を派兵する方針だと、マスコミ各社が伝えた。13時台にFNNが〈ホルムズ海峡周辺に自衛隊を独自派遣へ〉と速報を打ち、他社も後追いで報じた。安倍首相は午後の国家安全保障会議(NSC)で、自衛隊派遣の具体的検討を指示した。
速報後に行われた菅義偉官房長官の会見によれば、派遣が検討しているのは中東のオマーン沖やアラビア海北部など。ホルムズ海峡という言葉はあえて避けたが、地理的につながっており、まさに目と鼻の先だ。河野太郎防衛相は“ホルムズ海峡は含まれていない”と記者団に語ったというが、はっきり言って言葉遊びにすぎない。
ホルムズ海峡をめぐっては、イランとの緊張関係が高まっている米国が、日本に「有志連合」への参加を強く要請していた。菅官房長官によれば、「有志連合」には参加せず、自衛隊派遣は「日本独自の取り組み」と位置付けるという。「中東における緊張緩和と情勢の安定化」「中東地域の平和と安定および我が国に関係する船舶の安全の確保」を理由に挙げ、さらに「情報収集体制の強化を目的」とし、「防衛省設置法に基づいた調査および研究」として実施すると表明。そのうえで「今後、様々なことを検討していく」と述べた。
周知の通り、米国とイランとの緊張の高まりを背景に6月中旬以降、「自衛隊のホルムズ海峡派遣」の問題は、米国が要請する「有志連合」参加の可否も含め、浮上していた。ところが、安倍政権は選挙の争点にならないように徹底してはぐらかしてきた。事実、7月の段階では、当時の岩屋毅防衛相が「現段階でホルムズ海峡へ自衛隊を派遣することは考えていない」とコメントしている。今回のホルムズ海峡周辺への自衛隊派遣は、事実上、それをひっくり返した形だ。
いまのところ日本政府は、表向きイランとの外交関係も踏まえたものとして、米国率いる「有志連合」へは参加しないとしているが、注意しなければならないのは、菅官房長官が「今後、様々なことを検討していく」と含みを持たせていることだろう。断言するが、その本丸が「ホルムズ海峡への自衛隊派遣と米国船防護」にあることは疑う余地がない。
どういうことか。そもそも、ホルムズ海峡への自衛隊派遣問題をめぐっては、第一に「米国の強い要請」という文脈がある。
事実、安保法制に多大な影響を与えた2012年の「第3次アーミテージ・ナイ リポート」でも〈イランがホルムズ海峡を封鎖するとほのめかしたら、自衛隊は掃海艇を派遣すべきだ〉とされている。つまり「ホルムズ海峡への自衛隊派兵による米国船防護」は、米国から長年求められていたことだ。トランプ大統領はとくに強行で、今年6月にはホルムズ海峡のタンカーについて、日本を念頭に〈なぜ、われわれアメリカがそれらの国のために航路を無償で守っているのか。そうした国々はみな、危険な旅をしている自国の船を自国で守るべきだ〉とツイート。日本政府へのプレッシャーを強めており、事実、この夏の間も日米防衛幹部らが水面下で交渉していた。
トランプ大統領に尻尾をふってやまない安倍首相は、当然、「米国の強い要請」を満たしたいに決まっている。だが、そこに法的な問題が立ちふさがった。6月の日本タンカー攻撃事件の際、岩屋防衛相は集団的自衛権を発動することはないと明言した。つまり、集団的自衛権行使の3要件のひとつである「存立危機事態」に該当しないと認めていたのだ。これに関しては、本日の菅官房長官の会見でも「現在、日本に関係する船舶の防護が直ちに必要な状況にはない」と述べられた。
自衛隊を派遣してストレートに集団的自衛権を行使することはできない。ならばと、政権は“抜け穴”を探し始めた。海賊対処法や自衛隊法が定める海上警備行動による自国船の警護を名目にすること、あるいは、安保法制の「重要影響事態」に認定すること。しかし、前者は米国の求める「米艦防護」が不可能で、後者は認定のハードルが高く、かつ、世論の強い反対も必至だった。
そこで現実的プランとして有力視されていたのが、本日の官房長官会見でも明言された防衛省設置法に基づく「調査・研究」を名目とする方法だ。同法4条には、防衛省が司る事務として「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」が明記されており、偵察・情報任務などの根拠法とされる。2001年の米国同時多発テロ直後には、テロ対策特別措置法に基づく米軍への後方支援の前段階として、海上自衛隊護衛艦のインド洋派遣の根拠にもされた。一方で、法的には日本船警護を念頭にした他船や人への武器使用は認められず、当然、集団的自衛権にもカスリもしない。
菅官房長官「今後、様々な方法を検討する」の真意、用意されている“第二・第三の矢”
しかし、騙されてはいけない。官邸や防衛省幹部はこの間、新聞記者らに「防衛省設置法を使うと比較的安全な地域に限定されるから」などと吹聴していたようだが、逆に言えば、これだけで終わるわけがないのだ。
だいたい、いくら安倍政権が隠そうとしても、ホルムズ海峡周辺で日本の自衛隊が哨戒をすれば、イランからは敵対行動に映る。自衛隊機による偵察が得た情報を米国側に差し出すことは“公然の秘密”であり、それは米軍と一体化した“軍事行動”に他ならないからだ。また、単純に周辺海域で他国間の武力衝突が発生すれば自衛隊が巻き込まれるリスクは高まる。さらに、哨戒任務中に不測の事態が起こると、それこそ世論は安保法等に基づいた武力行使に一気に傾くだろう。
菅官房長官が「今後、様々な方法を検討する」と語るように、“第二・第三の矢”が用意されている可能性は極めて濃厚だ。最終的な安倍政権の目標を「集団的自衛権を行使した米艦防護」におけば、防衛省設置法の「調査・研究」を名目とするホルムズ海峡周辺への自衛隊派遣は、その“撒き餌”となる。当然、海外で自衛隊が武力行使に出れば、日本は第二次世界大戦での敗戦後、初めて直接的に戦争へ参加することになる。
そして、この「ホルムズ海峡周辺への自衛隊派遣」から始まるシナリオは、まさに安倍首相が悲願とする改憲へとつながる。ひとつは、“軍事目的”による自衛隊海外派遣を既成事実化することで、9条改憲の「必要な自衛の措置」「そのための実力部隊」(自民党の改憲条文イメージ)を国民に飲み込みやすくさせるという狙いがあるだろう。もうひとつは、ひとたび自衛隊が任務中に何者かに攻撃されたり、海峡周辺で米軍関連の不測の事態が起これば、安倍政権が「なぜ自衛隊は反撃できないんだ」と世論を煽っていくのは火を見るより明らか。一気に改憲に雪崩れ込もうとするはずだ。
いずれにしても、任期が残り少なくなってきた安倍首相にとって、自衛隊の海外派遣は、改憲を達成するため“最後のワンピース”だ。これまで以上に無理を押し通し、めちゃくちゃな法解釈をしてくる可能性もある。自衛隊を“改憲の道具化“する政権の動きを、引き続き注視しなければならない。
(編集部)
最終更新:2019.10.18 11:44
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