愛川欽也が小説にしていた「出生の秘密」 父親のいない家庭、そして母親との別れ…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
oyogitakunaikawa_01_150418.jpg
現在絶版となっている愛川欽也の小説『泳ぎたくない川』(文藝春秋)

「おまっとさんでした」

 もうこの口上を聞くことはできない。16日、ワイドショーはこのニュース一色に染まった。「愛川欽也死去」。現役最高齢の情報番組司会者としてギネスブックにも載った、親しみやすい語り口でありながらときに硬派な人気者は80歳でこの世を去った。肺がんだった。

 20年間、一回も休むことなく続けた「出没!アド街ック天国」(テレ東系)の千回記念放送を機に番組を降板した3月、メディアでは「重病説」が囁かれた。所属事務所や妻・うつみ宮土理はこれを否定し続けた。

 だが4月上旬、自宅に介護ベッドが運び込まれたり、在宅診療専門の医療スタッフが点滴用のパックを運び込む様子が目撃されるようになる。同じ時期に自身が運営するインターネット放送局は閉鎖され、5月から撮影開始の予定だった連続テレビドラマも中止になっていた。事態は関係者たちの杞憂に終わることはなかった。15日、東京・渋谷区の自宅で息を引き取ったのである。

 本職の俳優に加え、劇団主宰、ラジオパーソナリティ、歌手、と多才ぶりを発揮した愛川だったが、多くの著作も残している。その中に、今では絶版になっている自伝的小説がある。2004年に出版された『泳ぎたくない川』(文藝春秋)。昭和9年生まれの愛川が少年時代、青年時代を過ごした戦中戦後の体験を、当時の空気そのままに再現している。空襲、疎開、貧困に差別、混乱の時代に翻弄された人々と、自らの家族が直面した困難を描いた一作だが、そこにはユーモラスで賑やかだった愛川からは想像もできない、意外な知られざる一面が明かされている。

 作中で愛川は「敏雄」として書かれている。それ以外のプロフィールは「小説」とはいえ出生地、疎開先、経歴も後に本人が語った事実に基づいている。「知られざる一面」を匂わせる一節は物語が始まってすぐに記されている。

〈敏雄は母に甘えて育った。母も歳をとってから生んだ敏雄が可愛くてしかたがなかった。敏雄のそばには、いつも母の顔があった。敏雄は父とのふれ合いが少なく、父に抱き付いたりした記憶がない。敏雄がそれをさびしいと思わなかったのは、母に充分甘えることが出来たからだ。敏雄は井口ミイと高田善三の間に生まれた子だった。〉

 昭和7年、28歳のミイはウエイトレスとして働いていた神田のミルクホールで善三と出会う。惹かれあう二人は交際を始め、ミイが一人暮らしをする巣鴨の家に善三が足繁く通うようになる。そんなある夜のこと、

〈ミイは決心して訊いた。「善さん、いつ籍を入れてくれるの?」隣に寝ていた善三が、「そうだな……ミイさんに子供ができた時かな」ミイは目を閉じて、もう一度、善三の体にしがみついていった。その夜も、夜明けの前に善三はタクシーを拾って、五反田の家に帰っていった。〉

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

愛川欽也が小説にしていた「出生の秘密」 父親のいない家庭、そして母親との別れ…のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。家族愛川欽也文学相模弘希の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 安倍首相「沖縄は我慢して受け入れろ」
2 山口敬之が補助金交付関与の新証言
3 キムタク・マツコ共演の裏で中居が…
4 安倍首相「芸能人との会食」は改憲目的!?
5 ほっしゃんの反差別にウーマン村本が
6 吉永小百合、声をあげることへの覚悟
7 葵つかさが「松潤とは終わった」と
8 安倍「杉原千畝は誇り」発言は帝国主義賛美
9 櫻井よしこは嘘つきだ!小林節が告発
10 日本の恥!リオ閉会式で安倍が政治宣伝
11 小倉智明、坂上忍がセクハラ告発を抑圧
12 欅坂平手負傷で武道館中止にメンバーが
13 孤立?ももクロ有安を精神分析
14 長渕剛が安倍政権を批判する新曲を発表
15 元旦朝生のウーマン村本は間違ってない
16 NYTの直撃に山口敬之が卑劣コメント
17 佐野元春がトランプ批判の楽曲を発表!
18 安倍がネットでヘイト女性と意気投合
19 宮台真司「ネトウヨは感情の劣化」
20 ジャニーズ事務所のSMAP消去作戦
1国有地疑惑の日本航空学園“極右教育”
2吉永小百合、声をあげることへの覚悟
3NYTの直撃に山口敬之が卑劣コメント
4安倍と会食した三橋貴明がDVで逮捕!
5安倍首相「芸能人との会食」は改憲目的!?
6安倍がネットでヘイト女性と意気投合
7西原理恵子が高須院長とヘイトデモ応援
8加計学園に国民の血税投入の新疑惑!
9安倍「杉原千畝は誇り」発言は帝国主義賛美
10山口敬之が補助金交付関与の新証言
11ほっしゃんの反差別にウーマン村本が
12「SAPIO」反日バッシングの異常
13日立原発支援政策は“お友だち優遇”
14河野太郎の「安倍の犬」化が止まらない!
15安倍首相「沖縄は我慢して受け入れろ」
16『相棒』が安倍官邸の謀略体質を批判
17安倍自民が名護市長選で卑劣な札束攻撃
18異常!安倍が慰安婦問題を理由に五輪欠席
19小倉智明、坂上忍がセクハラ告発を抑圧
20松本人志が黒塗り問題で逃げと責任転嫁

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

連載一覧へ!

アベを倒したい!

ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100

ブラック企業被害対策弁護団

連載一覧へ!

ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」