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れいわ議員の介助費用「参院負担」にネットや松井一郎が「税金遣うな」攻撃! 一方『とくダネ!』は2人を生出演させ意義を評価
山本氏と木村議員が生出演した『とくダネ!』
明日、国会初登院を控えるれいわ新選組の舩後靖彦、木村英子両参院議員。だが、ふたりの通勤や議員活動中における介助費用を当面の間、参議院が負担するとの決定に、ネット上ではまたぞろ批判の声があがった。たとえば、Yahoo!ニュースではこんなコメントがつけられている。
〈介助費用はこの人達を選出した政党が負担するのが筋〉
〈無駄に国家予算を使って、自発呼吸も難しいのでしょ? ボタンくらいしか押せないのでしょ?〉
〈この2人だけのために、国が負担するのは間違っていると思うが。国会議員になられたのであれば、自費でやらせなきゃいけないのでは?〉
〈同じような障害を抱えている方は多いと思うけど、議員になっただけで介助費を負担してもらえるのは不公平かなと〉
ようするに「障害者が就労時の介助費用を公的に賄うのは税金の無駄遣い」であり「国会議員だけに適用するのは不公平」だというのだ。ネットだけではない。日本維新の会代表の松井一郎大阪市長は、報道人を前にこんなコメントを発し、自己負担で賄うべきとの考えを示した。
「どなたにも適用できるよう制度全体を変えるならいいが、国会議員だからといって特別扱いするのは違う」
「国会議員は高額所得でスタッフも付く。政治家は個人事業主だから、事業主の責任で(費用支出に)対応すべきだ」(共同通信より)
障害者がどのような状況に置かれているか理解しているとは到底思えない。そもそも、この問題は、重度介護制度自体の欠陥にある。厚生労働省が告示で〈通勤、営業活動等の経済活動に係る外出〉を制度の対象外としているため、現制度で就労中に介助を受けるには要介助者か雇用者がヘルパーを雇わねばならない。これが利用者に大きな負担となるとともに、障害者の「働きたい」という希望を大きく阻む壁となっている。
だからこそ、舩後・木村両議員は選挙期間中から、「障害者は働くなということでしょうか? この部分は、絶対に変えなくてはなりません」(舩後氏)などと制度改善を強く訴えてきた。そのふたりが議員として国民に選ばれたのだから、制度改善までの間、勤務時の介助費用を公的に負担するのは当たり前の話だろう。
しかも、どうも松井代表やネットの声は明らかにれいわや両議員の主張を歪曲している。彼らは「自分たちを特別扱いしろ」と言っているのではなく、前述したような重度介護制度の欠陥をただして「あらゆる障害者が就労中に公的介助を受けられるようにしろ」と言っているのだ。ところが今回は、「国」ではなく、参議院が舩後議員と木村議員の「職場」として負担するという現状の枠内での暫定的対応をしたにすぎない。しかも根本匠厚労相は会見で「厚労省が重度訪問介護サービスなどを見直すかどうかということとは別問題」「参議院事務局が対応を考えるということ」と制度見直しに消極的な姿勢を見せている。これでは、国が企業に障害者の介助を押し付けるという現状の制度の延長線上に過ぎず、これでは資金が潤沢で意識の高い企業しか障害者を雇用できない。
繰り返すが、ふたりが国会議員として求めているのは、「障害者は働くな」と言わんばかりの制度そのものを変えることだ。つまり、現状では登院もままならないという喫緊の課題だけでなく、近い将来、「障害者が労働しやすい環境」をつくるという制度設計こそが本丸なのである。
そして、舩後議員と木村議員は早速、国会のバリアフリー化も含め、現状を大きく動かし始めた。その意味において、ふたりは同期当選組の国会議員として最も早く、政策を実現させる第一歩を踏み出したと評価するべきだろう。
これを「税金の無駄遣い」とか「特別扱い」などと批判するのは、明らかに差別的ミスリードであり、障害者が置かれている状況を固定化させる「障害者排除」以外の何ものでもない。
今更ながら、政治家から一般の庶民までが自己責任論に侵されてしまったこの国の状況には、暗澹とするしかない。
重度の障害を持つ木村議員の主張に小倉智昭や古市憲寿までが賛意
だが、こうしたグロテスクなネットや政治の状況の一方で、意外なメディアがれいわの議員の活動に真正面から向き合い、その意義を正当に評価した。
それは、30日放送の『とくダネ!』(フジテレビ)だ。同番組には、れいわ代表の山本太郎氏とともに木村議員がスタジオ生出演。さらに、舩後議員も、生中継でスタジオからのインタビューを受けた。
このなかで、初登院を控えた今の気持ちを聞かれた木村議員は「重度訪問介護を使って、日頃介護を受けながら生活をしているんですけれども、それがその就労が認められないということで、本当に国会に8月1日に入れるのかというのが、今とても不安です」と率直な心境を吐露。また、MCの小倉智昭が「要は国会に突貫工事でスロープだけ作ってもしょうがないってことですよね」と話すと、「そうですね。介護者がいないとお水も飲めないので、そういう意味では介護者は私のパートナーですから、ぜひ介護者とともに、国会に入りたいと思っています」と述べた。
重度の障害をもつ木村議員が、自分の感じていることを、フィルターを通さずに理路整然とメディアで表現する。あえて言うが、その姿は、これまでテレビマスコミが、視聴者の涙と同情を誘うため、紋切り型の「かわいそうな人」として演出してきた“重度障害者のイメージ”とは、確実に異なるものだ。
実際、その姿は、明らかにスタジオの共演者たちを動かしていた。たとえば、小倉から「何で経済活動には介護の人がついてはいけないのか。古市くん、そのへんってわかる?」とふられたコメンテーターの古市憲寿氏も、「これ国会だけじゃなくて、働きたい、働く障害者に関わることだと思うんですよ。だから、それで、今回はすごい意味あるなぁと思ったんですけども」とまっとうなコメントをしていた。古市といえば、今年1月に落合陽一との対談での“高齢者の終末期医療打ち切れ”発言が大炎上したが、まるでそのことを感じさせないような発言ではないか。
ほかにも小倉と古市は、木村議員が街の声を受けて「税金を多く使っているなんていうイメージがあると思うんですけど、ただ私たちはやっぱり障害があって、介護者がいれば、働きたいという気持ちは皆さん持っていると思うんですね。健常者の方だって働いて生活してますから」と話したのを受けて、感慨深げにこう述べていた。
小倉「弱者に国の予算を多くさける国ほど、僕は民主国家だっていう風に思うのね。なんか最近の若い人って、民主国家、民主主義を勘違いして多数決だからとか言うじゃないですか、でも少数意見を重要視して弱者を救っていかないと、古市くん、僕は本当に民主国家じゃないと思うんですよ」
古市「そうですよね。どんな状況に生まれても、どんな親元に生まれても、本当に好きなことができた方が、たぶんいいと思うんですよ。障害を持っていたからといって、自分から障害者になりたいといってなったわけじゃなくて。たまたまそういう状況に、今、あるだけであって。だからどんな状況である人もやりたいと思ったことだった方がいいし。逆にみんなが働ける、働きたい方が働ける社会の方が、社会でとっても、税収の面からいってもいいことはたくさんあると思うんですよね」
小倉や古市からこうしたコメントが出てきたのは、まさに木村議員の存在があってこそだが、さらに『とくダネ!』で特筆すべきは、舩後議員がコミュニケーションをはかる様子をしっかりと生放送したことだろう。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)により、舌や喉も含め全身の筋肉を動かすことのできない舩後議員は、介助者が示す文字盤に目の動きで合図を送ることで言葉にする。
スタジオのアナウンサーが「舩後さん、改めてなんですが、一番国会で訴えたいことはどんなことでしょうか?」と尋ねたときのこと。介助者が文字盤の文字をひとつひとつ指で示しながら、舩後議員の言葉を確認しようとするのだが、「じ・ゆ・う」まで読み取ったところで目の動きがわかなくなったのか、言葉が止まる。介助者は「最初からやり直します」と数回繰り返し、舩後議員に声をかけて確認しながら、時間をかけて「重度訪問」という言葉にたどり着いた。
ALSの舩後議員が文字盤を使い質問に答えた『とくダネ!』の画期的な放送
ネット上では「放送事故レベル」などと揶揄する声も出たが、これこそが、舩後氏が国会議員になったからこそ広く伝えることができる“メッセージ”だろう。言っておくが、インタビューでは事前にすべての質問を伝え、回答をフリップなどに起こしておいて、介助者が読み上げるなりすることもできたはずだ(実際、別の質問については、事前に用意した回答が読み上げられた)。しかし、舩後議員への最初の質問については、あえて生放送で直接質問を聞き、直接言葉にして回答したのである。
この行動の裏には、重度訪問介護の制度が障害者の労働を奪うという問題を、舩後氏が最も重点的に訴えてきたということもあるだろう。だが、それ以上に、ALS患者に何ができて、何ができないのか。コミュニケーションにどれくらいの時間がかかるのか。それを隠さずに広く知ってもらいたいと考えたのではないだろうか。
れいわから当選したふたりの国会議員は、「障害者も健常者もない社会」(木村氏)、「障害があっても当たり前に地域で生きられる社会」(舩後氏)の実現を繰り返し力説してきた。そのためにはまず、本当の意味で「障害者」を「隔離」せず、全員が向き合う「開かれた社会」にしていく必要がある。ふたりの議員の生出演には、そんな意味が込められていたように思えてならない。
そして、今回、ふたりは実際に『とくダネ!』という保守的な番組を動かした。障害者というマイノリティが社会でどのような状況に置かれているか、スポットライトを当てさせた。
いわば、これまでどれだけ「税金」を注ぎ込んでもできなかったことを、ふたりは早くも実現しようとしている。権力に阿諛追従するだけの与党の新人議員に、はたしてこれだけのことができるだろうかと尋ねてみたくなる。「発信力」を活かして「社会を動かすこと」が“力のある政治家”の条件だとすれば、舩後議員と木村議員は相当のポテンシャルを有していると言っていいだろう。
しかも、二人の議員生活は始まったばかりだ。舩後氏と木村氏には、国会議員として、人々が直面する「生づらさ」をどんどん可視化していってほしいし、わたしたちもまた、そのメッセージを正面から受け止めたい。それは、安倍一強政治で進む“排除の社会”を変えられる、大きな希望だ。
(編集部)
最終更新:2019.08.01 03:26
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