入管法改正であのケント・ギルバートが安倍政権を真っ向批判!「非人道的な使い捨て政策」「恥ずかしく思う」

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ケント・ギルバート『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』(PHP研究所)

 外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が8日未明の参院本会議で強行採決され、成立した。

 本サイトでも何度も伝えてきたとおり、この入管法改正案は「新しい在留資格をつくる」ということ以外はほぼ何も決まっておらず、受け入れ数や報酬の水準、日本語習得の支援や相談といった支援計画の中身さえ定まっていない。

 また、新しい制度のベースになる外国人技能実習制度をめぐっては、最低賃金以下の奴隷労働や長時間労働、賃金未払い、差別や暴力、セクハラ、いじめなどの問題が噴出しているにもかかわらず、法務省と安倍政権はその実態を隠蔽するために、データをねつ造。さらには3年で69人もの死亡者が出ていることも明らかになった。しかし、こうした技能実習制度の見直しも実態把握もおざなりにしたまま、衆院で約17時間(野党欠席の審議空回し時間も含む)、参院で約21時間の審議で強引に法案を強行成立させた。

 まさに労働者の人権と民主主義を破壊する暴挙というほかはないが、そんななか、あのケント・ギルバート氏が安倍政権の入管法改正を真っ向から批判して、話題になっている。

 ケント氏といえば、周知の通り、80年代後半に“第一次外国人タレントブーム”を牽引した米国人。2000年代ごろにめっきりとテレビから姿を消したが、近年になって「保守論客」としてカムバックし、安倍政権擁護や中韓ヘイトなどのネトウヨ言説を垂れ流している御仁だ。

 そんなケント氏が、11月23日、自身のFacebookに「移民法案の問題についてひとこと言わせてください」から始まる文章を投稿。その問題点を徹底的に指摘した。

 しかも、ケント氏は一部の右派や安倍応援団のように、「日本の国柄が失われる」という排外主義的立場で、この入管法改正の反対したわけではない。まさに「人権を守る」という立場で実にまともな指摘をしているのだ。

 ケント氏はまず、〈日本はすでに移民国家です。現在いくつかの「業種」では、外国人の日本国内の就労が期限付きで認められています。私もその一人です〉と切り出し、拡大する外国人受け入れ業種の労働者について〈日本人と同じ雇用条件にすることが必要〉とする。そして、こう政府案に疑義を呈するのだ。

〈しかし、現在の法案では、必ず5年以内に帰ってもらうこと、彼らは永住許可を取れないことなどの条件が盛り込まれています。これらはただ単に、「移民アレルギー」の人たちに忖度した、場当たり的な条件にしか見えません。〉
〈このような「使い捨て」政策は非人道的であると同時に、長期的な解決策になりません。むしろ、新たな下層階級が日本にできて、差別など、重大な人権問題に発展することになりかねません。〉

 念のため補足しておくと、今回の法案では、最長5年の在留期間である技能実習制度から、「特定技能」という新たな在留資格に移行することで、「特定技能1号」の場合最長5年(合わせて10年)の在留を可能にする。より技能が熟練した外国人を対象とする「特定技能2号」はさらなる長期滞在が可能になり、永住資格にも道が開けるとされている。

 しかし、実際には満期で帰国を迫られる1号の取得者の何割が2号に移行できるのかという見通しについて、政府は具体的な説明をしていない。結局は「事実上の移民政策」という批判をかわすため、永住資格に関係する2号のハードルを審議中にどんどん高くしていった。現実には、外国人を「安い労働力」として酷使した挙句、本人たちが望んでも永住させないというのが政府案の目するところだ。

 ケント氏が問題にしているのは、まさにこうした点だろう。「日本人と同じ条件」などと口では言いながら、右派のヒステリックな「外国人・移民嫌悪」に媚びる政府。こうしたなか運用されることで、新たな制度が「非人道的な外国人使い捨て政策」の要素をどんどん強めていくのは間違いなく、それこそ外国人労働者への差別、深刻な人権問題に発展していく。

“ビジネス右翼”ケント氏も非人道的な入管法改正には黙っていられず

〈こんな場当たり的で身勝手な計画が、日本の国会でまじめに審議されていることを、私は恥ずかしく思います。〉

 ケント氏はこう文章を締めくくっているが、本サイトとしても同意せざるをえない。

 しかし、一方で、あのケント氏がここまで常識的な言説を述べたことを、少なからぬ読者が意外に思ったのではないか。

 実は、そもそもケント氏は以前からゴリゴリの右派というわけではなかった。外タレブームの際に出した著書などを読むと、たとえば外国人に対する指紋押捺に反対を表明し、在日コリアンを念頭に〈自分たちにはちゃんと祖国があるのに、祖国でないこの国になぜいるのか、そのことを日本国政府は無視している〉(『ボクが見た日本国憲法』PHP研究所/1988年)などと記していた。また、コメンテーターを務めていた『関口宏のサンデーモーニング』(TBS)でもバランスのとれた発言をする印象だった。

 だが、朝日新聞の慰安婦報道訂正問題があった2014年の前後に、ケント氏はリベラル色を完全に払拭。「中国や韓国、リベラル派を批判し、日本を褒める外国人」というキャラクターに変節して、現在に至る。その「転向」の背景には、本サイトでも指摘してきた(https://lite-ra.com/2015/12/post-1761.html)ように、日本の保守論客のバックアップがあった。

 実際、その一人である保守系の外交評論家・加瀬英明氏は、ノンフィクションライター・安田峰俊氏の取材に対して「バテレン(筆者注・戦国時代のキリシタン)を改宗させたようなものだ。最初はヘンリー・ストークスを10年かけて『調教』したのだが、ケントはその次だった」などと述べている(「Newsweek日本版」CCCメディアハウス、10月30日号)。

 言い方を変えれば、ケント氏は日本の右派・保守派に「調教」されるかたちで、まさに日本の右派の“腹話術人形”的な、現在のポジションを掴んだわけである。

 しかし、そんなケント氏も、今回の入管法改正案はさすがに「日本で働く外国人」のひとりとして我慢ならなかったのだろう。ケント氏も当事者の立場になって、安倍政権のヒドさがよくわかったはずだ。これを機会に、「ビジネス右翼」から足を洗って、安倍政権を批判するまともな論客になるべきではないか。

最終更新:2018.12.08 08:59

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