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城田優が大坂なおみフィーバーの裏に潜むハーフ差別に苦言! 「いいときだけ“日本人”、都合が悪くなると“外人”」
大坂なおみ公式HPより
WTAツアーの年間成績上位8人によるシーズン最終戦・WTAファイナルでは惜しくも敗退したが、今シーズン目覚ましい活躍をしたテニスの大坂なおみ選手。
大坂選手といえば、9月8日に女子テニス全米オープン決勝でセリーナ・ウィリアムズ選手を破り優勝を果たしたことは記憶に新しい、そのときの偉業は「日本人初優勝」と多くのメディアで取り上げられ、「大坂なおみフィーバー」に沸いた。
しかし一方で、そういった世間の喧噪を複雑な思いで見る人がいた。俳優の城田優は2018年10月18日付「AERA dot.」のインタビューで、大坂選手に対する日本社会の反応を「ズルいなと思う」と語っている。
「ああいうのを見ていると、どこに言ってもここだという居場所がない我々からするとズルいなと思う。良いときだけ「日本人初」って持ち上げるくせに、都合が悪くなったら『やっぱり外人だから』って言うんですよ」
全米オープン優勝以降はあまり大っぴらに言われることもなくなっていたが、大坂選手に対しては、ついこの間まで、ネットで「日本選手っぽくない」「この人を日本選手と呼ぶことに違和感がある」という差別的な攻撃がやたら見られた。
ハイチ出身のアフリカ系アメリカ人を父にもつハーフの外見や、3歳のときにアメリカに移住して以降は向こうで育ってきたため日本語が堪能ではない、といったことなどがあげつらわれていた。
しかし、全米オープン優勝を期に、そんな差別的な言及は急速に鳴りを潜め、今度は「日本スゴイ」のネタとして消費される方向に180度転換した。
台風21号の被害と北海道地震で混乱がつづくさなかに〈大坂なおみ選手、全米オープンの優勝、おめでとうございます。四大大会で日本選手初のチャンピオン〉との祝辞を送った安倍首相をはじめ、普段は陰に日向に排外主義を垂れ流す右派政治家たちが「日本スゴイ」の道具としてもち上げ始めたのだ。
さらに、唖然としたのが二重国籍を利用しようという動きまでが出てきたことだ。大坂選手は現在20歳。日本の法律上、22歳までに日本国籍かアメリカの国籍かを選ぶ必要がある。これに対し、日本維新の会の足立康史衆議院議員が、大坂選手の優勝を受けてこのようにツイートした。
〈ノーベル賞、オリンピック等で快挙を成し遂げた日本国民には、二重国籍の特例を認めたらどうかな。
こういうこと言うと、またツイッターのフォロアー激減しそうだけど、日本国民の皆さんはどう考えますか〉
足立議員といえば、立憲民主党の蓮舫参議院議員(当時は民進党)の二重国籍問題をあげつらって“蓮舫代表の言動は中国の回し者”と投稿し、こんな一言まで添えていた。
〈国籍のことを言うのはポリコレに反するので本当は控えたいのですが、ストレスたまると午後の地元活動に影響するので書いてしまいます〉
デマ情報やヘイトスピーチによって個人攻撃を行い、挙げ句の果てにはヘイトスピーチを「ストレス発散」だと自ら認めていたような人間が、今度は「快挙を成し遂げた日本国民には、二重国籍の特例を認めろ」と言い出したのだ。これを機に二重国籍を認めようと言うのならわかるが、あくまで「特例」というのが、御都合主義もいいところ。
9月10日放送『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)のなかで荻上チキ氏は政治家たちの一連の言動についてこのように語っている。
「日本のツイッターとかニュースとかを見たら、日本の政治家とかが『日本の誇り』みたいなことを言っていたりとか、あとは一部議員とかが『例外的な二重国籍を認めていいんじゃないか』みたいなことを、蓮舫さんのときは叩いていた人が、コロッと掌を返して、『名誉的な人には与えていい』みたいなことを言っていてですね、もう頭がパンクしそうな、そんな状況になっていて」
荻上氏の言う通り、彼らの変わり身の早さには唖然とするほかない。
城田優が直面した日常のなかの差別「彼はスペイン人だから」
インタビューのなかで城田が「ズルい」とまで言うほど怒りをあらわにするのは、なんらかの分野で功績を成した人に対しては「日本の誇り」と褒めそやす一方で、ハーフの人々は明確な差別を受けているからだ。城田は以前にも、アイデンティティの問題について語っていたことがある。
「みなさんは日本という国で生まれ育ち、『ほかの人たちと違う』という感覚に襲われたことはないですよね。顔がかわいいとかブスだとか、濃い薄いっていう話じゃなく、根本的に『他人と違う』。僕はスペインと日本のハーフだからこそ、それを経験してきているんです。(母の母国)スペインにいた小さいときは『チノ』という中国人を指す差別用語を浴びせられ、日本に帰ってきてからは『ガイジンだ、ガイジン』って言われてきた。いまでは僕も自分の容姿を受け入れられていますが、20歳くらいまではひどくコンプレックスだったんです」(2014年9月16日付ウェブサイト『映画.com』)
前掲「AERA dot.」のなかで城田は、昔ほど露骨な差別を受けることはなくなったと言いつつも、日常生活のなかで「あの子は外国の血が入ってるからこういうマインドなのよ」や「彼はスペイン人だから」といった言い方を無自覚に用いられることも「僕にとっては差別なんですよ」と語る。
なぜなら、その人の感性や考え方と、その人自身の国籍や民族といったルーツは、必ずしもイコールでつながるものではないからだ。前掲「AERA dot.」のなかで城田は「その人の個性とアイデンティティーである国とが、必ずしも一致するわけじゃない」と、「その人本人」を見ようとせずに「○○人はだいたいこんな性格」といった出自に関する偏見で判断することは、それがネガティブなことかポジティブなことかにかかわらず、差別であると憤っている。
大坂選手も全米オープン後の会見でアイデンティティについて問われた際、「私は私」と答えていた。
作家のサンドラ・ヘフェリン氏は、著書『ハーフが美人なんて妄想ですから!! 困った「純ジャパ」との闘いの日々』(中公新書ラクレ)のなかで、 どこまでいっても違いを探し出し、異物として扱われ続けることの辛さをこう綴っている。
〈片方の親が日本人で、日本語も話せ、和食や浴衣が好きで、国籍が日本、というふうに『血』『日本語能力』『国籍』『心』の面で、『日本人であること』をクリアしていても、顔が欧米人のようだと、『容姿』の壁が立ちはだかり、いつまで経っても『日本人』だと認められない〉
〈『日本人に見られたい』『自分は日本人』と思っているハーフにとっては、言葉、心や国籍の問題をクリアしていても、『アナタはココが『普通の日本人』とは違う』と指摘されてしまうことはつらい〉
城田も指摘している通り、普段はハーフの人々に対して明らかに線引きをし異物として扱っているくせに、いざ「使える人間」だとわかった瞬間、「“特別に”自分たちの“仲間”に入れてやってもいい」と言わんばかりの「大坂なおみフィーバー」は、逆に日本に根強いグロテスクな差別意識を浮き彫りにした。そのことをあらためて認識しておくべきだろう。
(編集部)
最終更新:2018.10.28 09:59
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