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横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」44
沖縄県知事選で玉城デニー候補が翁長氏の遺志を継ぐ決意表明! 一方、安倍自民党は争点隠しとフェイク攻撃を企て
翁長雄志前知事の死去で前倒しとされた沖縄県知事選(9月13日告示30日投開票)は、辺野古新基地反対の玉城デニー・自由党幹事長(衆院沖縄3区)と、建設ゴリ押しの安倍政権支援の佐喜真淳・前宜野湾市長の実質的な一騎打ちとなる構図が確定した。翁長氏の支持母体だった「オール沖縄」の出馬要請を受諾した玉城氏は8月29日、那覇市内で記者会見。駆けつけた支持者や国会議員らが見守る中、翁長前知事の遺志を引き継いで「辺野古新基地建設阻止を貫徹する」と出馬表明したのだ。
冒頭で「翁長前知事に背中を押された」と切り出して出馬の経緯を語った玉城氏は前知事と対立した安倍政権を厳しく批判した。
「県の再三の指導にも従わず、既成事実を積み上げることで県民の諦めを狙い、一方では基地と沖縄振興を敢えて絡ませて揺さぶり、県民の中に対立と分断を持ち込もうとします。法令解釈を都合良く変えて手続きを踏み倒す国のやり方は法治国家と言えるのでしょうか。故郷の海を守ろうと声を上げる人々を実力で排除するやり方は民主主義の姿なのでしょうか」
そして翁長前知事の最後の仕事といえる「埋立承認撤回」(8月31日に通知書を提出)への支持も明らかにし、こう締め括った。
「このかけがえのない島の未来を、誰でもなく自分たちの手で作り出していく。生まれてくる子供たち、明日を担う若者たちに平和で真に豊かな沖縄、誇りある沖縄、新時代沖縄を託せるよう全力疾走で頑張ります」
質疑応答では「辺野古新基地建設の是非は絶対に避けられない争点」と強調、「沖縄県民の代表たる覚悟を持って、アメリカにしっかりと沖縄の未来へのオピニオンをしっかりと伝えていきたい」とも意気込んだ。アメリカに沖縄の民意を伝えずに新基地建設を強行する安倍政権とその支援候補との対決姿勢が鮮明になった瞬間だった。
玉城氏はこの後、4年前の県知事選で選対本部長を務めた地元建設・小売大手の金秀グループの呉屋守将会長と一緒に翁長前知事の自宅を訪れた。病床で録音された音声データに名前が挙げられた二人がそろって、一人が候補者として、もう一人が支援する選対幹部として出馬の報告をした形だ。
訪問を終えた玉城氏に「翁長知事の遺志を引継ぐ政策的な弔い合戦と位置づけていいのか」と聞くと、こんな答えが返ってきた。
「はい。ただ弔い合戦ということだけでは知事には申し訳ないと思いますので、『どんな沖縄を作っていくのかを訴えていく』という明るい未来をかけた選挙戦にしていきたい。知事もきっと、それを望んでいらっしゃると思います」
普通に考えれば、「弔い合戦で玉城氏有利」という予測が有力となり、「ダブルスコアで佐喜真氏をリード」という複数の世論調査結果も流れ始めたが、地元記者は「接戦は確実」と見ていた。
「県知事選の前哨戦として与野党が激突した2月の名護市長選をはじめ、沖縄では自公系候補が重要な選挙で連戦連勝し、『ステルス戦略』による勝ちパターンを見つけています。名護市長選では、竹下亘衆院議員ら運輸族が中古車販売店をしらみつぶしに回るなど、あらゆる分野の企業や団体に水面下で働き掛けていました。それに加えて、菅官房長官が地域の有力者に片っ端から直に電話をしてもいました。この手法を今回も繰り返してくるのは間違いない」
接戦確実となる要素は他にもある。前回の県知事選では自主投票だった公明党が今回は佐喜真氏の推薦を決めた。自公推薦候補が勝利した名護市長選と同じパターンで、その再来を狙っているのだ。しかも保守分裂回避が加わる。4年前の県知事選では、下地幹郎衆院議員が出馬して約7万票を獲得、自民推薦の仲井真弘多・元知事の票が食われたが、今回は佐喜真氏支援に回った。いち早く出馬表明をしていたシンバホールディングス会長の安里繁信氏も立候補を取り止めた。公明党推薦と保守分裂回避(下地票7万票の上乗せが期待される)で、前回の10万票差はほぼ埋め合わせることになるのだ。
菅官房長官と創価学会の佐藤浩副会長が仕切る選挙戦、カジノ誘致もエサに
呉屋守将・金秀グループ会長(左)と玉城デニー・自由党幹事長(右) (写真=横田 一)
「菅官房長官と仲がいい佐喜真氏は、中央からお金(補助金)を一番引っ張ってくる官邸の“子飼い候補”と見られている。その菅官房長官と創価学会の佐藤浩副会長こそ、2月の名護市長選で新基地反対の沖縄県本部を寝返らせて自公推薦の枠組みを作り、翁長知事の盟友で新基地反対の稲嶺進前市長を落選させた立役者だ。この2人は6月の新潟県知事選でも暗躍し、自公が合同選対を作る”名護市長選方式”を持ち込んで勝利した。今回の沖縄県知事選も、このコンビが同じ手法で仕切るのは間違いない」(地元事情通)
カジノ誘致も使われる可能性も高い。4年前の県知事選でも、自民党が支援した仲井真元知事はカジノを含むIR推進を訴えていた。カジノ誘致で発生する膨大なハコモノ建設需要をちらつかせて、県内最大手の國場組をはじめとする建設業界の支援を引き出す狙いが透けて見えたが、今回も同じ“人参”をぶら下げるというわけだ。地元記者はこう話す。
「通常国会で強行採決をされたカジノ実施法案は、最初のカジノ候補地は3カ所だが、将来的に増やすことを排除していない。内々に『佐喜真氏当選ならカジノ第一次候補地に入れなくても二次候補地になることができるぞ』という甘い言葉が囁かれても不思議ではない。県民の多くは反発するので表では言っていませんが、沖縄の経済界を中心にカジノ誘致への期待感が今でもあり、実現に向けた動きも活発になりつつあります」
弔い合戦の不利な状況を打開するために安倍自民党が、名護市長選や新潟県知事選で駆使した争点隠し選挙・フェイク演説・怪文書配布・恫喝的期日前投票要請など、形振り構わぬ選挙を仕掛けてくるのは間違いない。翁長氏の意思を引き継ぐ知事が誕生するのか。それとも新基地建設容認の“安倍政権傀儡知事”が誕生をするのか。壮絶な選挙戦となる沖縄県知事選から目が離せない。
(横田 一)
最終更新:2018.09.03 11:34
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